こころ
2012年12月12日
「できた!」「うまくなった!」達成感と自信を持てば、子どもはどんどん成長する
以前、「ありたい自分」に近づくためのメンタルトレーニングについて教えてくれた、プロフェッショナルコーチの守屋麻樹さん。今回は、サカイクに寄せられたアンケートを元に、より具体的なサッカーとメンタルのお話しをお聞きしました。主にサッカーをやっている子どもを持つ親御さんたちが、子どもたちにどう接したらいいのか? を中心に質問をぶつけてきました。具体的になればなるほどはっきりに見えてくる「メンタルから見た子どもたちへの接し方」。改めて子どもたちとの接し方を見つめ直すヒントになるはずです。
■普段の生活が大事! メンタルトレーニングはすでに始まっている
前回のお話しをお聞きしても、サッカーをはじめとするスポーツをするお子さんへの接し方、親御さんの眼差しが、プレーに大きな影響を与えるものだと思います。サカイクにも子どもたちへの接し方に悩んでいるお父さん、お母さんは多いようです。子どもへの声がけ、態度など、メンタルトレーニングから見てどういうことに気をつけたらいいのでしょう?
「メンタルトレーニングと一言で言っても、色々な切り口があります。ひとつは本番で実力を発揮するためのメンタルを鍛えること。これも大切ですが、そのためには普段の練習を積み重ねるためのメンタルの強さが必要です。練習をくじけずにやり続ける力。トップアスリートの親御さんのお話を聞くと、みなさん普段の生活から継続性や自主性を大切にしているんです。いかに規則正しく生活をするのか、がみがみ厳しくは言わないけれど、決めたことは必ず自分でやる。そういう習慣作りをされていますね」
守屋さんがまず第一に挙げたのは普段の生活から課題を持って、自分で決めたことは必ずやり通すこと。これができないと、練習も長続きしないし、自分で考えて何かをする力が身につきません。
「親が何でも揃えてあげる。これが一番よくありませんね。熱心な親御さんのなかには、ユニフォームからスパイクやくつ下、全部揃えてあげてしまう人もいます。サポートのつもりでしょうが、こういうお子さんは、いざ忘れ物があったとき、自分でどうしたらいいかがわからずパニックになってしまいます。テニスプレイヤーの杉山愛さんのお母様がおっしゃっていたのですが、まずはできそうなことを子どもに選ばせて、目標を立て、それをしっかり見守っていく。杉山家の場合は表を作って、できたら順に印をつけて、達成感を視覚化していたそうです」
自分で責任を持ってやるからこそ自分で判断できる子どもに育つ。決めたことを継続していくことがメンタルトレーニングの第一歩になるようです。
■やる気を引き出すコミュニケーション
Q.なかなかやる気になってくれない我が子。自発的に練習するように仕向けるにはどうしたらいいでしょう?練習を観ていてもいまいちやる気が見えません。やる気向上法のようなものってあるんでしょうか?
「子どもたちにも練習が嫌になることもありますよね。そんなときは『何のためにサッカーをやっているのか?』というところをつなげ直してあげるような声をかけてあげてください。目標が明確な子どもにはそれを再確認できるようなコミュニケーションをしてあげてください。プロ選手になるから、優勝したいからなどの理由ではなく、『みんなとサッカーするのが楽しいから』とサッカーをしているお子さんもいるでしょう。この場合は『サッカーが楽しい』ということを再認識させてあげるだけで充分です。大切なのは子どもの個性や、どんな瞬間に生き生きしているのかを注意深く見守ることです。『どんな風に楽しいの?』と、楽しさを深めてあげる質問を具体的にするのもいいですね。自分でも気づいていないけど、体感していることを言語化する。パスが通ったとか。シュートが決まったとか、サッカーをやっていて楽しい! というポイントを拾ってあげると、自然ともっと頑張りたくなるものです」
■「自信」は自己肯定感を持たせることから
Q.練習もたくさんしていますし、上達してきているように思うのですが、本人は自分に自信が持てない様子。子どもに自信をつけさせるためにはどのようにしたらいいですか?
「いいメンタルをキープするために大前提となるのが、前向きであることです。自信を持つためには「これだけできた」「うまくなった」という自己肯定感を得ることが大切です。先ほどの杉山家の話ではないですが、自分で考えた比較的、達成が容易な目標をはっきりわかる形でやり遂げることで、この自己肯定感が得られるようにしてあげる。たとえできないことがあっても、『なんでできないの?』ではなく、『どうしたらできるようになるんだろう?』と一緒に考えてあげることで、失敗からも学びがある状態が作れます。サッカーの目標ばかりでなく、生活面で、自分で考えて決めたことをひとつずつやることで、プレー面での自信がつくこともあるので、まずは家庭の中で自己肯定感を持たせてあげるのもいいかもしれませんね」
具体的な質問に入るときりがありませんが、こういう悩みを持った親御さん、多いんだろうなぁ、という質問をピックアップしてみました。やはり大切なのは親子のコミュニケーション。対話と提案、自己肯定感を与える声がけ・・・・・・。サッカーの知識や技術がない親御さんでもすぐにはじめられそうなことですよね。食事の一家団欒で、なるべく声をかけてあげること、自分の考えを押しつけるのではなく、子どもたちの声に耳を傾けること。簡単なようでいて、なかなか難しいことかもしれません。次回は少し実戦よりのお悩みにお答えしようと思います。
守屋麻樹//
もりや・まき
早稲田大学政治経済学部政治学科卒。ローレルゲート株式会社の代表取締役として法人向け人材育成コンサルティングを手掛けるとともに、研修講師、セミナー講師、大学講師、プロコーチとして活動中。プライベートでは、2004年より早稲田大学アーチェリー部ヘッドコーチ、2010年より監督を務める。「若者を元気にすること」と「スポーツを通じて日本の社会をもっと活気あるものにすること」を自分が与えられた使命と考え活動している。
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