こころ
2013年5月13日
その応援は逆効果!子どもを育てるのは、保護者のこんな言葉
チームは大事だけど、我が子が活躍する姿も見たいという気持ちは誰にもあります。だから「点を取らないと駄目」と怒ったり、「うちの子ならもっと上手」とアピールしたり。「残念ながらそれは逆効果です。お子さんが萎縮し、のびのびとプレーできません」と、メンタルトレーニングの専門家である高妻先生は注意を促します。ではどんな言葉や応援が子どもを育てるのでしょうか?家庭で一緒に行うプラス思考トレーニングも交え、アドバイスしていただきました。
■プラス思考で子どもとチームを応援する
成長してほしい、実力を発揮してほしい……最初はそんな願いから始まったのでしょう。やがて期待感が悪口や陰口に代わり、「それは駄目」とネガティブな声かけになることも。逆に周囲と比べて「あの子よりうちの子がうまい」というアピールなど、子どもに対する思いは複雑です。
『サカイク』に寄せられたアンケートでも、同じような声が聞かれました。
【こんな「困った」があります】
・自分の子に罵声を浴びせる。「ヤル気あんのかよ?」「夕飯抜きだよ?」「ふざけんな」など。
・他のお母さんや子供の悪口を陰で言うお母さん。コーチにも言っています。
・前チームにコーチの子供がひいきされていると周りには言ったり、チーム分けについて文句を言ったりするお母さんたちがいた。そういう子供に限ってやる気がなく周りに迷惑をかけていた。
「自分の子どもの活躍を望まない保護者はいません。しかし期待が大きすぎて、応援しているつもりが悪口や陰口、ヤジになるのはマイナス思考の典型。しかもこのマイナス思考はお子さんにも伝染するという、面倒な問題も抱えています。」
試合中の応援はポジティブな気持ちで、「よかった」イメージが定着するよう、ほめる、励ますことが大切。そして周囲の子どもと協力し、また競争することで、自分の子どもが成長する楽しみを見いだしてください。
「これができないと罰を与えるなど、叱って行動を促すやり方は、確かに手っ取り早く効果が出ることがあります。しかしやがてその子は『怒られないと動けない』『怒られなければ何をしてもいい』という人間に成長する可能性も考えられます。」
子どもの自立を考え、豊かな人間性を育むサッカーを目指すなら、これは注意したい点。ではネガティブな接し方、マイナス思考を避けるにはどうするのでしょうか?
「結局は保護者自身の行動を変えること。それができないと子どものマイナス思考も変わりません。ですから私は家庭で一緒できるメンタルトレーニングを勧めています」。
例えばお互いネガティブなことを言ったら、手を十字に構えてポーズをとり「プラス思考ビーム」と叫んで、相手に気づいてもらう。そんな約束から、ゲーム感覚でメンタルトレーニングにトライしてみましょう。
【解決へのポイント】
子どもに「こうしなさい」というより、保護者自身の行動を変えること。一緒に楽しくプラス思考のメンタルトレーニングを。
■子どもの心に火をつける保護者の言葉
子どもに対して厳しい言葉を使うだけでなく、練習内容や試合中の監督やコーチの指示などにも不満や疑問を持ち、ネガティブな発言をする人も多いようです。もしも自分がそうなっていたら要チェック。
【こんな「困った」があります】
・うちのチームにはいませんが、よく聞くのはチームの批判。やめればいいのに。子供の前で言わないで欲しい。
・チームメイトが増えるとポジション争いも起き、試合に出られる子と出られない子が出てきます。そんな時、平等性を訴える人。
・試合を全然見に来ないで、子供たちが頑張っている姿を見ずに結果だけを聞いて「また負けた」と平気でいうお母さん。
子どもの上達が遅いのはコーチのせい。下手な審判に当たって運が悪かった。子どものへ慰めのようにも聞こえますが、これもマイナス思考の一種です。
「お子さんが上達しないこと、試合に負けたことなどを、他人のせいにするマイナス思考から離れて、本人の努力不足と素直に認めましょう。そして改善点を一緒に考えてほしいですね。ミスをしたときこそプラス思考。『試合はとてもよかった。途中のミスを直せばもっとよくなる』と、前向きに話してほしいと思います」。
練習しなさいと言うだけでなく、「じゃあ一緒にやってみよう」と保護者が先に立って行動を促すのも大切なこと。
「例えばお子さんに自分の夢を聞いたときと、3億円で何を買うか聞いたとき、どちらの答えを生き生きと楽しそうに話してくれましたか?スポーツは内発的モチベーションの高い子の方が継続できる、成功するという結果が出ています。もちろん勉強も同じでしょう。お金がもうかるなどの外発的モチベーションより、子どもの内部から心に火をつけるような、ポジティブな励ましの言葉を大切にしてください」
【解決へのポイント】
試合中、試合後はよかったイメージが定着するよう、ほめる、励ますことを優先。内発的モチベーションを高める言葉を意識する。
高妻容一(こうづまよういち)//
1955年生まれ。東海大学体育学部教授。国際メンタルトレーニング学会、国際応用スポーツ心理学会など多数の学会に所属。1994年にはスポーツ心理学を背景としたメンタルトレーニングの組織「メンタルトレーニング・応用スポーツ心理学研究会」を設立し、日本でのメンタルトレーニングの正しい理解と情報交換を目的に活動を続けている。近著に『子どもの本番力を120%引き出す方法』(PHP研究所)など。
【メンタルトレーニング・応用スポーツ心理学研究会のご案内】
●会員/メンタルトレーニングに興味のある人ならどなたでも
●会費/入会金、年会費、なし 参加費は各支部会で徴収するところもあります。
●参加/ 開催日に直接参加してください。予約はいりません。
◎東海大学(本部)
毎週月曜日 19:30~21:30 開催(担当 高妻 容一)
東海大学15号館4階第1会議室(小田急線東海大学前下車徒歩15分)
参加費:無料
ただし、大学の休暇期間中は、お休みになります。
◎関東支部
毎月第4金曜日(不定期) 18:00~21:00 開催(担当 高妻 容一)
青山学院大学 (開催日程と教室は下記よりご確認ください) JR山手線渋谷駅下車徒歩15分
参加費:一般500円 学生200円
◎静岡県支部
毎月第2金曜日(不定期) 18:00ー20:30 開催(担当 高妻 容一)
東海大学付属翔洋高等学校 (開催日程と教室は下記よりご確認ください)
参加費:一般1000円 学生・高校生300円 中学生以下200円
※詳しい日程や開催教室はコチラよりご確認ください
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