こころ

2013年11月 1日

病気?成長ホルモン不足? 背が伸びなかった幼少期のメッシも治療した低身長症とは? 気になる身長について②

引き続き「たなか成長クリニック」の田中敏章先生に身長にまつわるお話をお聞きしています。今日はあのメッシも治療していたという「低身長症」を中心に話を進めていきます。
 
<<寝る子は育つ? 牛乳効果ある? 気になる身長について①
 
 

■心配な低身長症

「低身長症」という言葉を聞いたことがあるでしょうか? サッカー界では母国アルゼンチンで天才少年と騒がれていた9歳のメッシが「成長ホルモン分泌不全性低身長症」と診断され、その後バルセロナの援助を得て治療を受けたことでも知られています。
 
 成長ホルモン分泌不全性低身長症は、本来は体内で生成、分泌される成長ホルモンの分泌量が少なく、成長率が低く低身長になる病気です。治療方法としては、不足した成長ホルモンを注射で補います。「低身長症」は成長ホルモン分泌不全性低身長症のようなホルモン異常だけでなく、そのほかの重大な病気や心的ストレスなどが原因の場合もあり、誰にでも起きる可能性があるものです。それだけに「背が低いだけ」と言ってもいられず、注意深く見守っていく必要があります。
 
 

■成長を見守るための成長曲線をつけよう

「日本は世界で一番身長を測る国。どんな子どもでも1年に一回は身長を測り記録しています。それなのに、肝心の"一人ひとりの成長曲線"という考え方が伝わっていません」
 
 低身長症の発見に役立つのが「成長曲線」を記入する方法です。
「成長曲線」とは、全国の子どもたちの身長や体重データを10年ごとに集計し、年齢と月ごとの平均値と標準偏差をグラフ化したものです。標準成長曲線のデータとして、日本成長学会と日本小児内分泌学会で平成12年のデータを用いることに取り決めがされています。
 
※クリックすると拡大されます。
 
 
 このグラフに子どもの身長と体重を記録していくことで、日本人の子どもの平均値と比較ができ、わが子の成長度合いが標準とどれくらい違っているかを確認できるのです。
 
「低身長症の発見はもちろん、成長曲線をつけていることでわが子の心身の状態を知ることができます。成長曲線をつけることを勧める理由はそこにあります。継続してつけていると、思春期や精神的なストレス、さまざまな変化がグラフに現れてくるのです」
 
 子育てをしている親御さんたちは、ついつい身長の絶対値ばかりに目が行きがちです。
「○○君は大きいのにうちの子は~㎝しかない」
 
身近にいる子と比べて背が低いと嘆くのではなく、標準値と比べてどうか? 偏差値と
比べて異常と言えるほど低いのかを客観的に知ることは、子どもの成長を見守る上でとても大切なことです。また急に背が伸びたからと言って喜んでばかりもいられません。思春期早発症という病気があり、この病気にかかると成人時の最終的な身長が極端に低くなってしまうのです。基本的には、標準成長曲線に沿って平行に伸びていれば、その子にとっては健全な成長ということができます。
 
 
以下のサイトで、成長障害に関する情報や成長曲線を描くソフトが利用できます。みなさんもぜひ記録してみてください。
 
成長ホルモン治療情報サイト| 子どもの成長ホルモン治療
お子様の成長障害、低身長、成長ホルモンでお悩みの方の相談室
子どもの低身長と成長障害について考える成長相談室
Growing Club
成長障害情報サイト おおきくなぁれ
 
 低身長症は、同性の同年齢の標準身長に対し「マイナス2標準偏差(SD)」以下のことを指します。100人いれば、背が低い方から2~3番目までが低身長ということになります。先ほど紹介したサイトには現在の身長と体重を打ち込むと自動で判定してくれる低身長チェックページもあるので参考にしてみてください。身長SDスコアがー2SD以下だからといって即異常、というわけではありませんが、重大な疾患が潜んでいる場合もあるので、小児内分泌の専門医に相談した方がいいようです。(日本小児内分泌学会ホームページの評議員成長科学協会のホームページの地区委員参照)
 
 

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