こころ

2014年11月24日

「10本決めたら終わり」はNG!?ゴールキーパー指導3ポイント

※COACH UNITED転載記事(2014年10月30日掲載)※

GKがチームに与える影響は大きいと言えるでしょう。GKの活躍で勝つこともあれば、ひとつのミスが失点につながり、敗れてしまうこともあります。試合の結果に大きな影響を及ぼすポジションでありながら、その重要性はそれほど広くは知られていません。またGKを専門的な視点から教えることのできるGKコーチの数は少なく、適切な指導を受けることが難しいポジションでもあります。そこで今回は、GK大国ドイツでGKの指導について勉強し、現在は松本山雅のアカデミーでGK指導をされている川原元樹氏に『GK指導についての疑問』をぶつけてみました。GK指導について興味をお持ちの監督、コーチはぜひ参考にしていただきたいと思います。(取材・文/鈴木智之 写真提供/松本山雅FC 写真/田川秀之)

<<ジュニア年代のGKにこれだけは伝えたい!7つの原則

 

■GKのビルドアップとポジショニング

――ジュニア年代のGKを指導する際、抑えておくべきポイントは、どのようなことでしょうか。
 
川原:GKに求める役割はたくさんありますが、ジュニア年代の選手に一度に多くのことを伝えても理解しきれないので、ポイントを絞って指導をすることが大切だと思います。
 
私がジュニア年代のGKを指導する際は、基本技術、ビルドアップとポジショニング、そして『チームコンセプトの中でのGKの役割』にフォーカスしてコーチングをしています。ビルドアップについては、『攻撃の優先順位の中で、どの味方にパスを出すのか』という判断と、正確にパスを届けるためのキックの技術が必要になります。私はU-12向けのGK講習会を行っているのですが、練習の最初に必ずパス&コントロールを行います。そこではボールをしっかり蹴る、しっかり止める、運ぶとはどういうことかを理解してもらいます。
 
試合中、GKが足でボールを扱う際には、正確なキックとボールコントロール、ボールを受ける際の身体の向きが重要です。サイドキックとインサイドのトラップの練習を通じて、「どこにボールを置けば、キックしやすいか」を意識させています。ただGKのポジションに必要なレベルというのは、トップレベルの成人のGKのプレーを含めても、判断や経験の差はあるものの、それほど難しいプレーではありません。極端に言えば、インサイドキックでのボールコントロールとパス、インステップキックのロングとミドルボールのみです。こういったことからも、ビルドアップやディストリビューションの技術は、ジュニア年代で身につけておくべきものだと思います。
 

■あれこれ言わないことが大事

ジュニア年代のGKを指導する上で注意していただきたいことは、『トップチーム(大人)のGKと比較して、あれこれ言わないこと』です。例えば、成長過程にあるジュニア年代の選手にとって、相手のプレッシャーを受けながら大人と同じようなロングキックを蹴るのは難しいプレーです。また、クロスボールの処理やDFラインの背後のカバーといったプレーも、トライ&エラーの経験が必要になり、難易度が高いでしょう。そのため、あまり高度なことを求め過ぎず、ミスをしたことよりも、前に出る姿勢や出るタイミングを見てあげるようにしていただきたいです。
 
「U-12年代でGKを固定したほうがいいのですか?」と聞かれることがありますが、それはチームの状況や選手の個性によると思うので、どちらがいい、悪いとは言えないと考えています。本人がGKをやりたいと言うのであれば、やらせない理由はないと思います。GKは経験が重要なポジションです。早いうちから始めることで、経験面のアドバンテージを得ることができます。一方で、フィールドプレイヤーとしてプレーすることは、サッカーの理解を深めることにもつながります。
 
「キャッチしたボールを、どこに出せばチャンスになるのか」などの戦術的な部分は、フィールドプレイヤーとしてプレーすることで、より理解が深まります。先に述べたように、GKに必要なフィールドプレイヤーの技術は、それほど難しいものではないので、GK一筋でも、ビルドアップやディストリビューションの技術は十分に身につけることができます。また、普段はフィールドプレイヤーとしてプレーしている選手が、紅白戦などでGKをするのも良いと思います。どういうプレーをする選手が、GKにとって嫌なのかが分かりますし、GKの気持ちを理解する一助になるからです。
 

1  2

関連する連載記事

関連記事一覧へ

関連記事

関連記事一覧へ