こころ
2015年1月 7日
セレクションに受かる秘訣は勇気!ACミランの選考基準とは!?
来年1月にジュニアユースチームが新設されるACミラン佐倉校。前回、子どもたちの指導に当たるルカ・モネーゼコーチにU12世代の守備戦術ついて話を聞きましたが、今回は開催されるセレクションの選考基準をテーマにお話を伺いました。(取材・文/杜乃伍真 写真/田川秀之)
■セレクションに挑むうえでもっとも大切なこと
――ミランスクールに入ってくる日本人のU12世代の子どもたちは、ここで日頃から指導しているイタリア流の戦術指導についての知識を持たずに加入して来ると思うのですが、問題はないのでしょうか。
まず大切なことは、子どものレベルを判断して、その子どものレベルに合った正しいトレーニングを実践してもらうことです。たとえば、サッカーが上手な4人の子どもがいるとしましょう。その場合は、指導者はその4人の子どもに対して色々な注意を払う必要があります。それは、守備時における仲間へのサポートの距離感だったり、ボールへアプローチに行くときの身体の止め方だったり、ボールホルダーへのアタックの仕方だったりなどです。しかし、あまりサッカーが上手なレベルにあるとは言えない子どもに対しては、何かひとつにポイントを絞って指導する必要があります。たとえば、“相手に抜かれないこと”“単純に相手からボールを奪えること”というようなはっきりとした目的を決めて、そのレベルに応じた結果を導くようにするのです。
――ACミラン佐倉校のジュニアユースのセレクションが来年1月に開催されますが、テストを受ける子どもたちは、ACミランスクールで教えているような戦術を押さえていなくても問題ないのでしょうか?
セレクションのときにまず見るのは、その子はどんな光るポイントを持っているのか、ということです。採用になったら、その子のレベルに応じてさまざまなトレーニングを考えながら到達してほしいレベルに導いていくので、セレクションの段階ではスクールで教えている戦術などを押さえていなくても問題はありません。たとえば、ベーシックな2対2のメニューも、言ってみればひとつのメニューに過ぎません。最終的な目的は、試合のなかで何ができるのか。我々にはどんな選手が必要なのかを考えると、それは、練習のなかで光る選手ではなく、ゲームのなかで光る選手です。
たとえば、30メートル走の速さを測るとします。AとBのふたりの子どもがいて、30メートル走ではAのほうが速いとしましょう。ただ、ゲームではBのほうが速く見えることがたまに起こります。これはBの子どもにしっかりと状況を読める力があったり、次の展開を予想できたり、頭で素早い判断ができているからそうなるのです。この場合、評価するのはBの選手となります。イタリアではゲームをするなかで「このなかで足が速いのは誰?」と聞いたときに、たとえば、チームのなかからふたりの名前が挙がったとしましょう。このとき実際に徒競走をやってみるとそのふたりは半分よりも下位だったという話もあります。
――つまり、セレクションでの判断基準というのは、“状況を読める力”が大きなポイントなのでしょうか。ほかにもありますか?
まず重要視しているのはパーソナリティ、つまり心です。やはり、強い心をもった選手を最大限に評価したいと思います。たとえば、シュートをするにしてもチャレンジする心を持っていることがすごく大事で、目の前に相手がいる、厳しい状況のときに自分のパーソナリティを発揮するためには強い心がないと発揮できません。だからセレクションでもいかに力を発揮できるか、チャレンジできるかを見たいと思っています。かつてインザーギ(現ACミラン監督)はフォワードとして失敗を恐れずに何度もアタックを繰り返していました。彼は、走り方が綺麗でなければ、足が速いわけでもありませんでしたが、ボールの状況や、味方の状況に対して抜群の身体の使い方を駆使してゴールを決め続けました。
――セレクションでは強い心の部分が見えれば、戦術などのロジックを持っていなくても評価はするということですか?
もちろんです。すべての人間が同じ道を歩んできたわけではないし、教えられてきたことも違います。それに選手がフォワードが好きなのか、ディフェンスが好きなのかでも違います。ですから、まずはパーソナリティとして強い心を持っていることが大事なのです。それがあって初めてプラスアルファのことを付け加えることができるからです。