こころ

2015年1月21日

錦織、本田に学ぶ!最高のプレーを引き出すメンタルのつくり方

※COACH UNITED転載記事(2014年11月25日掲載)※

 

『心技体』という言葉がある。サッカーを含む多くのスポーツは、技術、コンディションの良さ、そしてメンタルの充実があって、最高のパフォーマンスを出すことができる。ここでは、いま、同じオーストラリアの地で活躍する2人の選手、サッカーの本田圭佑とテニスの錦織圭の好調の秘密に迫る。(文/一色伸裕 写真/Mutsu Kawamori)

 

 

■コートの中では『お前は邪魔な存在だ』ぐらいのつもりでいろ

テニスの錦織圭は全米オープンで準優勝、そして11月に行われたATPツアー・ファイナルでも好パフォーマンスを披露し、世界のベスト8しか出場できないハイレベルな大会で準決勝まで駒を進めた。2014年、目覚しい活躍を見せた同選手。その大躍進の陰に、マイケル・チャンというコーチの存在があった。 
昨年の5月にマドリードオープンを取材した際、錦織はこのようなことを言っていた。「最高の勝利の一つ。とても満足している。フェデラーは憧れの存在であり、そのような選手とプレーでき勝ててうれしい」と。シングルス3回戦で第2シードのロジャー・フェデラー(スイス・当時世界ランク2位)を破った直後のコメントだ。結果として準々決勝では世界ランク113位のパブロ・アンドゥハール(スペイン)に敗れ、8強入りはしたものの、憧れのフェデラーへの勝利に満足した表情を見せていた。
 
そこから約1年後の、同じマドリードオープン。錦織は準決勝で第10シードの世界ランク5位ダビド・フェレール(スペイン)を下し、ファイナルへ。決勝は負傷により途中棄権したが、迎えた9月の全米オープンでは快進撃を見せ、日本人初となる四大大会決勝の舞台へと上り詰めた。最後のところでマリン・チリッチ(クロアチア)に敗れたが、その奮闘にはテニスファンのみならず、日本の多くの人が拍手を送った。
 
この1年で何が変わったのか。その理由としてマイケル・チャン氏の指導が大きいと言われている。同氏は昨年末に錦織のコーチに就任すると、彼のメンタルの弱さを叩き直した。錦織の「フェデラーと当たるのはワクワクします」という過去のコメントに触れ、「コート外で尊敬するのはいい、だが、コートの中では『お前は邪魔な存在だ』ぐらいのつもりでいろ」と試合に臨む甘えた姿勢を叱咤し、練習への取り組み方についても「なんで1時間前に練習場にくるんだ。2時間前にきて、ストレッチの時間を倍にしろ」と強く諫言した。もちろん技術的な指導の賜物もあったわけだが、その後は練習や試合に臨む姿勢も様変わりし、全米オープンでは「この大会では負ける気がしない」と、それまでの錦織からは想像もつかないような強気な言葉も出るようになっていた。
 
技術やフィジカルトレーニング、コンディションの調整法などをチャンコーチに教わった錦織だが、もとより技術の高さには定評があっただけに、感情をコントロールする術を学んだことも結果へとつながったと言えるのだろう。錦織自身も「休むときは休んで体調管理はできている。練習で自分を追い込むことで、試合を楽に戦えている。いまは勇気を持って戦うことができている」と自信をつけた様子だった。
 
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