こころ
2015年7月28日
ハリルホジッチ日本代表監督が、サッカー少年を育てるあなたに伝えたいこと
先日、スイスの高級時計ブランドのウブロは、陸前高田市のサッカー少年を招いて『ウブロ チャリティーサッカーイベント with ヴァイッド・ハリルホジッチ』を開催しました。会場となった日本サッカーミュージアム内ヴァーチャルスタジアムでは、被災した陸前高田市で活動する高田FCの子どもたちとハリルホジッチ日本代表監督が対面。ハリルホジッチ監督によるサッカースクールや子どもたちから監督に向けての質問タイムが実施されました。
サカイク編集部として、ハリルホジッチ監督から日本のサッカー少年のお父さんお母さんに向けてのアドバイスをもらってきましたので、ぜひご一読ください。(取材・文 出川啓太[サカイク編集部])
■子どもたちが将来過ごす社会を想像して、育てよう
「フランスでは子育てにおいて、家族が一番のベースとなります。サッカー少年を育てることについて、コーチと家族は違う役割を担っています。社会ではいろいろなことを要求されると思います。家族は、子どもたちの世代にどのようなことが起こるかを予測してあげなければいけません。明日というのは昨日までの人生とはまた大きく変わる可能性がありますし、生活というのはものすごく早く進んでいきます」
30年前、サカイク読者やその親世代の中には通信手段としてポケベルを使っていた人もいると思います。今ではスマートフォンで電話はもちろんインターネットも快適に使うことができます。現代社会の発展は早く、いま常識とされていることが、10年後、20年後は常識ではなくなっているかもしれません。私たちの親やそのまた親の世代には戦争を経験している人もいます。ハリルホジッチ監督も1991年~2001年まで続いたユーゴスラビア戦争を体験しています。そういった経験を持つからこそ、昨日とは違う明日でも生きていける能力の必要性を感じているのかもしれません。
「社会がどのように発展し、そのなかで子どもがどのような生活を送るのかを予想してあげて、小学生のうちからいろいろな要求をしてあげることが大事ですね。ところが残念なことに、それを忍耐づよく我慢して受け入れて上げられる人はなかなか少ないんです」
子どもが、自分の思い描くような成長過程を進まないかもしれない。それでも忍耐強く我慢して受け入れることが親の役目だとハリルホジッチ監督は語ります。
「子どもが成長する経過を見ているうちに、いろいろな失望もあると思います。子どもたちはコーチと親だけではなく、いろいろな方向からさまざまな要求をされます。人間はだれもが失敗を受け入れたくないものです。だからこそ、どのような教育、どのようなしつけをするのか。やってはいけないことを教えるのではなく、“どうして”それをやってはいけないのか、子どもたちにしっかりとメッセージとして伝えなければいけないと思います」
■家庭の役割とコーチの役割
ハリルホジッチ監督は家庭とコーチの役割の違いをこう話してくれました。
「繰り返しますが、家庭での教育がすべてのベースになります。日常生活からすべてを踏まえなければいけないのが家庭です。そして、コーチはスポーツとしてのしつけを子どもたちに伝える存在です。ただ、その過程では子どもたちの心のケアも必要ですので、しっかりとディスカッションしていくべきです。スポーツを通して、生活のなかでどういった心持ちで過ごしていかなかければいけないかということを伝える、すこし逸脱してしまったなら矯正してあげることも大事です」
家庭では日常生活におけるすべてを踏まえた上での教育やしつけを、コーチはスポーツを通して社会で生きていくための精神を伝えたり、すこし脱線してしまいそうなときに矯正してあげる役割があると言います。
「ただ、大人たちはそういったことを無視してしまいがちなこともあります。そのせいもあって若い世代というのは人生に対してすこし否定的な子たちもいると思います。そうなってしまうと人生をやり直すというのはさらに難しくなってしまうので、そうならないように修正してあげていくということが重要だと思います」
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