こころ

2015年10月30日

「なんでできないの?」ではなく「おー、そう来るか」年間2万人の子どもをみる子育てのプロの思考

京都サンガF.C.の普及活動のひとつ『サンガつながり隊』として、京都府下の小学校、幼稚園、保育園を訪れ、年間2万人の子どもたちを指導する福中善久さん。今回は、子育てのプロが実践する子どもの力の伸ばし方を教えてもらいました。(取材・文 中野里美 写真提供 京都サンガF.C.)

■自分で決められない子どもが急増!その原因は親にある

現在J2に所属する京都サンガF.C.。その普及活動のひとつに『サンガつながり隊』があります。その活動をおこなう育成・普及部の部長を務めているのが、『サッカーで子どもをぐんぐん伸ばす11の魔法』をはじめ、数々の著書でも有名な池上正さんです。2012年から池上さんを中心に『サンガつながり隊』の活動がスタートし、今年から池上さんが現場を離れ、福中さんが中心となって活動しているとのこと。
 
京都府の小学校、幼稚園、保育園を日々巡り、年間2万人もの子どもたちを見続ける福中さんは、こう言います。
 
「今の子どもたちの課題はいろいろあると思うんですけど、それってすべてスポーツを通して、あるいはサッカーを通して変えられる、解決できると信じてるんです」
 
福中さんは「最近の子どもは、自分で決められない子が多い」と言います。なにをするにも、「どうしたらいい?」と聞いて来る子が多いそうです。
 
「ほんとにいろいろ聞いてきます。コートはどこでやったらいい? 使うボールはどれを使ったらいい? コーチ、どうしたらいい? って。自分たちで決められないんです」
 
それを聞いて、小学生の我が娘のことがよぎりました。「なんて言ったらいい?」「これ、どうしたらいい?」と、「そんなことくらい自分で考えたらわかるよね?」「それくらい自分で決めたら?」と言い返したくなるシーンが、わが家でもしばしば見受けられるからです。福中さんはこう続けます。
 
「ぼくら大人の役目は、できないことをさせること。人はできない時に考えますよね。できない時に工夫したり、考えたり、仲間と一緒にトライして成功するからおもしろいんです。始めから成功するようなことはしない。成功するかしないかも大事ですが、その過程がもっと大事です。ところが、子どもの失敗を我慢できない大人が多い。
 
先生方につながり隊の活動を見学してください、見守ってくださいと勧めると、みなさん熱心なので見てくれます。そこで、コートに入ってこられる先生が多いです。できないことが気になるのでしょう。今日も最初のほうに、ぼくが手を叩いた数に合わせて、グループを作るゲームをやったでしょ。あのゲームのとき、『はい、○○ちゃんと○○ちゃんはこっち来て』と言って、先生がグループを作っちゃう(笑)」。
 
3回手を叩けば3人組。4回手を叩けば4人組。自分が誰かに声をかけ誘うて勇気、そして誘いを受け入れる思いやり、さらにはだれと組むか決断する力。ちょっとしたゲームではあるものの、これだけの要素が含まれ、それらを養うことができるわけです。
 
最近聞いた話だと、学校では仲間はずれやそれによる不登校を防ぐために、2人組や3人組などのグループ分けや、遠足などのバスの席決めなどもすべて先生が出席番号順などで決めることが多いそう。『つながり隊』はまさにそれとは逆。自ら体験させることで、勇気、思いやり、決断力を育てています。
 
福中さんの話を聞いて自分の行動を客観的に振り返ってみると、ついつい子どもに手をかけてしまっているケースが多くないですか?
 
「なんでそんなこともわからないの? できないの?」と、仕事や家事で時間に追われるのを言い訳に、答えを先に言ってしまっているせんか。
 
子どもが自ら考え、決断する機会を奪っているのは、親であるわたしでした。わが子が自分で考え決められないのは、わたしのせいなのかもしれません。
 
次ページ:期待は親の勝手な願い!すべては子どもが決めること
 

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