こころ
2016年3月 9日
言うことをきく子よりも、言いたいことを言える子を育てよう
38歳でドイツに渡り、指導者として活動を始めた坂本健二さん。ブンデスリーガの名門、SVヴェルダー・ブレーメンを始め、バイエルン州のクラブの監督やコーディネーションコーチ、アカデミーダイレクターなど、幅広く活動されてきました。ドイツで16年間指導した坂本さんが感じる、日本の子どもたちとドイツの子どもたちの違いとは、どのようなことでしょうか?(取材・文 鈴木智之 写真提供:坂本健二)
■コミュニケーションをとりながら正解に気づける子どもに
坂本さんは「ドイツの子どもたちの特徴として、日本の子どもたちと比べて、とにかくよく喋ります」と印象を語ります。
「たとえば、日本の子どもたちを指導するとき、“いまのプレーは良かった? 悪かった?”と聞いても、誰も良かったとも、悪かったとも言わないんですね。そもそも、どう考えているか、意見をあまり言わず、他の人が答えるのを待っていることが多い印象があります。私がドイツで指導をしていた子どもたちの場合、質問をされた人がまずすぐに答えますし、仮に答えられなかったら、周りの人が“いまのプレーは良かったと思うよ”という感じで、自然と誰かが答えていました」
日本の場合、子どもにかぎらず大人であっても、人前で発言をするのは得意ではありません。見当違いのことを言ったり、間違えたらどうしようという気持ちが働くのか、控えめな態度をとる人が多いもの。坂本さんも、自分が子どもの頃を振り返って、こう言います。
「自分の小学生時代を振り返ってみても、クラスで意見を言うのは3人ほどで、私も含めてほかの人はみんな黙っていました。いま思うと、授業を受けていて楽しいわけがないですよね。発表して、正解でも間違っていてもいいから発言してみて、先生やクラスのみんなとコミュニケーションをとりながら、これが正しいとか、こうすればいいんだと気がつく。それが『考える力』につながっていくのかなと思います」
■間違っていてもいいから、発言することが大切
坂本さんはドイツで指導をしているとき、子ども自身に考えさせて、発言させるために「間違っていてもいいから、まずは言ってみよう」と声をかけていたそうです。そこで、子どもたちが正解に近い答えを言うと「そのとおりだね」と言って、自信をつけさせるようにしていたそうです。そのようにして選手とコミュニケーションをとり、発言しやすい雰囲気を作っておいて、練習中には問いかけるコーチングで、選手自身が「どんなプレーをすべきか」を考えるように導いていきます。
「練習中、パスをミスした選手のところに行って、いまのパスはつながらなかったけど、良かった? 悪かった? と聞くと大抵「悪かった」と言います。そこで「何が悪かったの?」と聞くと「トラップがずれて、コントロールしきれていない状態でパスをしてしまった」といったように、答えが返ってきます。この会話だけで、選手自身が何が悪かったかを自ら見極めただけでなく、次は同じミスをしないように自然と意識します。その場面でコーチが「ちゃんとパスを出せ!」と外から怒鳴っても、まったく意味がないし、選手が上達するわけはありませんよね。指導者がすべきことは、ミスに対して技術的、戦術的なアドバイスを与えて、うまく行かなかったときと同じ状況を練習で設定して、繰り返しトレーニングをしてあげることだと思います」
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