こころ
2016年7月25日
「考えてプレーすると、最初と最後で結果は変わる」元日本代表DF秋田豊が被災地の子どもたちに伝えたかったこと
あなたは、なぜお子さんにサッカーをする環境を与えているのでしょう?
サッカーというスポーツには、プレーすることでつらいことを忘れさせてくれる力があります。また、子どもたちに、逆境をはねのける力、コミュニケーションをとる力、目標にむかって取り組む力などを授けてくれます。
東日本大震災から5年。復興に向けて、サッカー界も多くの支援を行っています。そのひとつが『JFA・キリンスマイルフィールド』です。
これは、子どもの笑顔づくりを通じて地域コミュニティを元気にすることを目的に、2011年9月から岩手・宮城・福島の全小学校を対象に「復興応援キリン絆プロジェクト」として行われているもので、日本代表のオフィシャルパートナーでもあるキリン株式会社が、日本サッカー協会(JFA)、各県教育委員会と連携して展開しています。今回は、この活動のメインコーチのひとりとして参加する元日本代表DF秋田豊さんが、サッカーを通して被災地の子どもたちに伝えたかったことを紹介します。(取材・文・写真 鈴木智之)
■子どもたちから「アッキー!」と慕われる元日本代表DF
2016年7月15日、じつに671校目となる『JFA・キリンスマイルフィールド』が、宮城県名取市立愛島(めでしま)小学校にて行われました。この日のメインコーチは元日本代表の秋田豊さん。4名のアシスタントコーチを含め、100人を越える子どもたちを前に、自己紹介からスタートします。
「ぼくの名前は秋田豊です。サッカー選手として、鹿島アントラーズと名古屋グランパスと京都サンガでプレーしました。みんな、サッカーのワールドカップって知ってる?」
秋田さんの問いかけに、子どもたちは元気よく「知ってるー!」と答えます。
「ぼくは日本が初めてワールドカップに出たときに、選手としてピッチに立ちました。そして自国開催の2002年ワールドカップでもメンバーに選ばれました。今日はみなさんとボールを使って、たくさん遊びたいと思います。ぼくのことは“アッキー”と呼んでください!」
子どもたちは口々に「アッキー!」と呼び、瞬時に秋田さんとの距離が近くなったようでした。秋田さんはこれまで『JFA・キリンスマイルフィールド』を通じて、60校以上の小学校を回っており、その経験に裏打ちされた雰囲気づくりが、この日あったばかりの子どもたちとの距離を縮めます。
■ユニフォームやビブスを着ると参加している気持ちが高まる
体育の授業の一環として行われる『JFA・キリンスマイルフィールド』には、サッカー経験のある子や、ボールを蹴るのが初めての子など、さまざまなレベルの子が参加。そのため、最初は鬼ごっこやボールをつかったレクリエーションから始まります。
子どもたちはボールを持って校庭に散らばり、思い思いに楽しんでいます。その様子を見ていた、愛島小学校の鈴木英典校長は目を細めて言います。
「普段、子どもたちはビブスを着る機会があまりないんです。だからうれしそうですよね。大人でもそうですが、ユニフォームやビブスを着ると、参加している気持ちが高まり、やってやるぞと思いますよね。それに、ボールを一人にひとつ与えられるので、練習をするにしても待たなくていい。これは子どもたちがうれしいですよね」
■"こうしなさい"よりも"どうすればいいかな?"と問いかける
ウォーミングアップが終わったところで、子どもたちはドリブルにチャレンジ。男の子と女の子が一緒になって、楽しそうにボールを追いかけていきます。
秋田さんからは「他の人とぶつからないように周りを見よう」とアドバイスが飛びます。秋田さんのコーチングは問いかける形になっており、子どもたちに「どうすれば、他の人とぶつからないようにできましたか?」「ボールをうまくコントロールするためには、どこに置けばいいですか?」といったように、子どもたち自身が考えるように導いていきます。
そうすることで子どもたちは「(ぶつからないために)誰もいないところを見つける!」「(ボールは)足の近くに置く!」と、返事をします。秋田さんは、問いかける指導方法について、次のように説明します。
「アドバイスをするときも“こうしなさい”と押し付けるのではなくて、子どもたち自身が“どうすればいいかな?”と考えるようにしています。そうすることで、自分で考えて判断して、何が良くて、そのためにどうすればいいのかを考えるようになると思うんです。子どものうちから、少しでもいいので考える習慣をつける。頭を動かす力をつけることが大切だと思います」
「JFA・キリン スマイルフィールド」<スペシャルゲスト香川真司選手> ~サッカーを通じて東北の子供たちに笑顔を届ける復興応援プロジェクト~
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