こころ

2018年7月23日

サッカー上達へ導くメンタリティー 子どもの「負けず嫌い」は意図的に作り出せる?

■親ができる「ライフスキル」を養うサポート

(写真はサカイクキャンプ)

「負けず嫌い」という言葉を、それこそ言葉で捉えてしまうと「負けたくない」、「勝ちたい」という単純な「勝利主義」で終わってしまいます。「それは結果によってブレやすいものです。でも大事なのはそこを目指すプロセスの中にある『勝ってもっと成長したい』とか、『もっと上のステージでうまくなりたい』というような思いです。それこそが内発的なやる気、つまり負けず嫌いの本当の意味なんです」

では周囲の大人、特に保護者としては、子どものやる気を引き出すために、どんなサポートができるのでしょうか。その手段の一つは、子どもへの「質問」もしくは「声かけ」にあります。

子どもに「これをやろう」と言うのではなく、「これとこれをやったら、どうなると思う?」という選択式の問い掛けをして、そのすべてを実際に試してみるという方法も効果的です。

「子どもにとって、やる気の元であるエキサイティングは、退屈しないことだとお話ししましたよね。自分の能力よりも低いことを続けたら、それこそ退屈で三日坊主になります。でも逆に、自分の能力よりはるかに高い目標を設定してしまうと、今度は不安になってしまいます。だからこそ、退屈も不安もない、ちょうどいい短期目標を作るサポートをすることで、子どもが自己選択、自己決定できるようになっていきます」

こうした子どものやる気が高まる目標は「限界のプラス10パーセントくらいがいい」とされます。「例えば、リフティングが100回できるのであれば、次は150回ではなく110回。50回なら55回でいいんです。もし、5回しかできないのであれば、10回と言わず、6回か7回でいい。もしくは『じゃあ、いつも4回〜7回くらいできるようにやってみよう』と伝えてあげるのもいいですね」。大儀見さんはこのように、自分にはどれくらいの力があるのかを、自分自身で探っていくことも大切な時間だと言います。

自分で気付いて、発見して、行動に移していく。その過程でうまくいかなかったとしても、またそれを分析して、次の行動につなげていく。そういうことの繰り返しが「次はもっとこうしよう」という意欲に結び付いていきます。大儀見さんの話から気付くのは、この「次への意欲」こそ「負けず嫌い」ということです。

「『もう少しだったな』という気持ちを大事にしてあげてください」

これは決して、サッカーに限った話ではありません。むしろ大儀見さんは、「家の中では、社会的スキルを身に付けさせる時間を増やしてほしい」と続けます。例えば部屋を片付けることや時間を守るといったライフスキルは、サッカーでも、それ以外の日常生活、社会人としても大切なことです。

もし、皆さんの子どもが、負けず嫌いではない、負けても悔しがらない、闘争心がない、もしくは、やる気があるのかないのかも分からないと感じているのであれば、子どもの「心」に寄り添ってあげてみてはどうでしょうか。それはすなわち、子どもの「今」に注目してあげる、ということでもあります。

子どもが自らの頭で「自分は今、何をどのようにすべきなのか」という「今」に集中できるようになるために、親や周囲の大人は、質問や声かけを通したサポートができるはずです。

大儀見さんの話を通して「負けず嫌い」の本当の意味での重要性が見えてきました。このメンタリティーは、サッカーはもちろん、子どもが社会に出ていくためにも培っていくべき大事なスキルではないでしょうか。

<<前編:「負けず嫌い」って何? 改めて考えるサッカーにおけるメンタルの重要性

大儀見浩介(おおぎみ・こうすけ)

株式会社メンタリスタ代表取締役。静岡県清水市生まれ。東海大学第一中学校(現・東海大学付属翔洋高等学校中等部)サッカー部時代に、全国優勝を経験。東海大一高ではサッカー部主将としてプレーした。東海大学進学後、高妻容一研究室にて応用スポーツ心理学(メンタルトレーニング)を学び、現在はスポーツだけでなく、教育、受験対策、ビジネス、社員研修など、様々な分野でメンタルトレーニングを指導している。一橋大学サッカー部、京都大学サッカー部等、小学生からプロまでのメンタルトレーニングをサポート。NPO法人清水サッカー協会メンタルトレーニングアドバイザー。

前へ 1  2

関連する連載記事

関連記事一覧へ

関連記事

関連記事一覧へ