こころ
2021年1月 7日
子どものサッカーで親が燃え尽き症候群に? 毎週末のサッカーが無くなって「喪失感」を抱かないための3つの準備
毎週のように、子どもの習い事の練習や試合に帯同し続け、小学校6年生でそれが卒業を迎えると、親御様も、必死に頑張り続けてきたことが無くなり、喪失感を味わったり、無気力になったり、強い疲労を感じることもあるでしょう。「子どものサッカーがなくなって、これからどうしたらいいの」と感じる方もいるようです。これは一種のバーンアウト(燃え尽き症候群)と考えられます。
中学以降になると保護者の「観戦」はあっても「帯同」はなくなることでしょう。いつかは来ることですが、事前に心の準備ができていたら少しは気がラクですよね。
それでは、バーンアウトにならないための3つのポイントをご紹介します。
(文:筒井香)
1.スポーツを通じて学んで欲しいことを多視点で考える
子どもを想うからこそ感情が先立ってしまい、親が子ども以上に、そしてご自身のこと以上に勝敗へのこだわりを強めてしまう可能性があります。それが選手で言えばオーバートレーニングにあたるような、過度な応援になり、疲労を強めてしまうことに繋がると考えられます。
改めて、スポーツを通じてわが子に何を学んでもらいたいかを考えてみると何があるでしょうか。チャレンジする心や、忍耐力、思いやりなど、きっと勝敗だけに限らないことと思います。
また、過度の応援や期待が、子どもへの必要以上のプレッシャーになることが懸念されていることからも、勝敗以外にも目を向ける姿勢は大切になると思います。
2.自分で自分を褒める
毎週のようにわが子の練習や試合に帯同し続けることは、子どもの成長を見守れる嬉しい機会であると同時に、心身ともに疲労することも考えられます。
しかし、このように帯同することは、「親としての当然果たすべき責任である」とご自身も考えておられますし、周囲それをも当然のことと考えているでしょう。卒業までスポーツを継続した子どもを褒めることはあっても、帯同した親を褒めることは少ないのではないかと思います。
自分自身や周囲が当然であると思っていても、実は頑張っていることもたくさんあるはずです。
「当然」というワードは、無意識に思い込んでしまっていることをお知らせしてくれているかもしれません。改めて、親御さんが自分で自分を褒めることも大切にしていただければと思います。
3.多様なアイデンティティや自己像を持つ
子どもに帯同することだけに情熱を注ぐことをあまりに重視すると、疲労感や、それが終わってしまった時の喪失感が強くなってしまうでしょう。「子どものために帯同する自分」だけが自己像になり、それをしているのが自分であるというアイデンティティを持つことになるためです。
そこで、多様なアイデンティティや自己像を大切にするために、趣味の時間やご友人と過ごす時間を持つことが重要になると考えられます。
もちろん、子育て中の親御さんにとって簡単なことではないと思います。
しかし、出産前と同じ状態を求めれば難しいことも、ご友人と電話をしたり、テレビドラマを観るなど一週間に数時間だけ自分の時間を持つことであれば、実現できるかもしれません。疲れを感じた時こそオススメです。
3つのポイントを抑えていただき、有限である子どものスポーツとの素敵な時間をお過ごしいただければと思います。
入団から卒業まで、それこそ小学校6年間ずっと子どものスポーツに関わってきた方も多いでしょう。
一生懸命だからこそ、バーンアウトのような状態になることもあるかもしれません。そんな時には、無理に元気を出そうとせずに、「そりゃ頑張ったから疲れたよね」と、今の自分の状態を素直に受け入れることで心を休ませ、少しでも趣味の時間やご友人と過ごす時間を持つことで栄養補給をするなど、「心の体力回復」に努めることが大切ですね。
筒井香(つつい・かおり)
株式会社BorderLeSS代表取締役 博士(学術)日本スポーツ心理学会認定スポーツメンタルトレーニング指導士
大学・大学院時代に人間行動学、臨床発達心理学、スポーツ心理学などの心理学から「人間の特性」を広範に学び、また、博士論文では、「個別性を重んじたポジティブシンキングの多様性」に関する理論を構築。現在はオリンピック、パラリンピック選手のメンタルトレーニングのほか、スポーツを頑張る親の学び舎「スポスタ」の講師として、スポーツを(アスリートとして)頑張っている子どもの保護者に向けて、人としてのキャリアのなかにアスリートとしてのキャリアも含めた、包括的な人生設計に重要な理論と実践方法を伝え、子どもの「キャリア=人生育て」を心理学の視点からサポートしている。
株式会社BorderLeSS
https://www.borderless-japan2020.com/