勉強と進路
2012年5月14日
プロを目指すなら知っておきたい!Jアカデミー(下部組織)の"今"
U-15世代の頂点を争う「JFAプレミアカップ2012 supported by NIKE(※1)」。16回目を迎えた今年の大会はガンバ大阪ジュニアユースが3年ぶり3度目の優勝を果たしました。Jリーグのアカデミー(下部組織)がこの大会を制したのはこれで14度目。
全国の予選を勝ち抜いた出場12チームのうち10チームがアカデミーという点を見ても、年々、アカデミーの勢力が強まっていることが分かります。プロ入り選手の数で見ても、ここ3年で高卒でプロへと進んだ選手は147名。そのうちユース出身者は6割超、ジュニアユースから高校へと進んだ選手を含むとアカデミーの経験者は更に増加しています。この大会を通じ、プロへのスタンダードな道となっているアカデミーの“今”を探ってみました。
■優勝のG大阪、準優勝の大宮の共通点“明確なコンセプト”
クラブ発足時から一貫指導を行い、多くのプロ選手を輩出してきたガンバ大阪ではジュニアを普及活動の一環と捉え、サッカーを好きになってもらうことをモットーに活動を行っています。ジュニアユースからは小学六年生の段階である程度わかるという選手の長所をみて選手を選抜し、ボールを止める・蹴るといったテクニックはもちろん、トップまで一貫して “判断力の高さ”にこだわり繰り返し“個”の指導を実践。「型にハマってプレーをするんじゃなく、個々の判断が繋がってチームのプレーになっていく。それがサッカーの楽しみだとも思う」鴨川幸司監督がこう話すように“高い判断力”というガンバのコンセプトは優勝の原動力となっただけでなく、3月に行ったスペイン遠征でも現地の指導者から“お墨付き“を受けたそうです。
準優勝となった大宮アルディージャも“クラブのコンセプト”を前面に出したチーム。10年ほど前から育成に力を入れてきましたが、これまでは思うような結果が付いてきませんでした。変化が生まれたのは今からおよそ3年前。“ボールを繋ぐ”というコンセプトを各年代で統一。少しずつ浸透してきた結果、大宮のアカデミー初の決勝進出という快挙に繋がりました。
「全国大会は今回が初めてという選手ばかり」と伊藤彰監督が話したように、決して小学校時代、有名だった選手を多く集めたわけではありません。中にはジュニア年代では市大会までしか出たことのない選手もいます。しかし、 “ボールを繋ぐというコンセプトに合う選手たちを選び育てた結果、準優勝という結果を掴んだのです。
「育成の方では少しずつ結果が出ているので親御さんたちが少しずつ、良いんじゃないかと思ってくれている。レッズさんなどとの選手の取り合いはあるけど、こちらに向いてきてくれているのかなと。ユースはまだまだだと思いますが、彼らが上がって活躍してくれると思いますね」(伊藤監督)とジュニアユース年代での結果が、プロの道に繋がることに手応えを感じています。
この2チームだけでなく、明確なコンセプトを掲げジュニアユースに力を入れるアカデミーが増加。
そのコンセプトを表現するために重要な“止める・蹴る”などの基本技術はセレクションされるジュニア年代で出来ていて当たり前のものとなっています。
※1:JFAプレミアカップ2012 supported by NIKE9地域協会よりそれぞれ選出された9チーム。普及枠として北海道地域・東北地域よりそれぞれ1チーム。前年度優勝地域から1チームの計12チームによって争われるU-15年代の大会。大会優勝チームには、中国で行われる世界大会「マンチェスター・ユナイテッド・プレミアカップ・ワールド・ファイナルズ2012」の出場権が与えられる。
■ジュニアユースだけでなくユースで必要とされる選手とは?
前年、前々年度でこの大会を制し、今大会でもベスト4に進出した京都サンガFCも育成に力を入れるクラブの一つ。立命館宇治高校と提携したスカラーアスリートプロジェクト(※2)に注目が集まりますが、今から7年前、トップで活躍するFW宮吉拓実らの世代からジュニアユース年代でのスカウティングに力を入れてきました。
「ガンバさんや関西には他の良いクラブもあるので、年度によって入ってくる選手に格差はありますけど、中学で3年やって、ある程度の選手やチームにできるようになってきた」(川勝博康監督)と手応えを感じるだけでなく、中高一貫での指導についても「サンガのスタイルというのが確立されてきている。ジュニアユースから上がった今の高1がユースに上がってすぐにレギュラーを獲っているように、スムーズに順応できる点は大きい。うちの今のジュニアユースの子らもすぐ上にあがっても通用できるでしょう」と話します。
ジュニアユースが力をつけるにつれ、一つステップが上がったユース年代でも変化は生まれています。現在、サンガのユースに所属する選手は29名。そのうち20名がサンガのジュニアユース出身で、外部チームからユースに進むことは非常に狭き門となっています。これはサンガだけでなくアカデミー全体にいえる傾向です。
クラブのコンセプトに合う選手を中学年代から集め、ジュニアユース、ユースで一貫指導することが主流となりつつある今、“あえて”外部の選手を獲るポイントについて、京都サンガFC U-18の本田将也監督はこんなことを話していました。「外部の選手に関しては、ジュニアユースでやっている選手たちにないものを持つ選手を獲っている。例えば大人しい選手ばかりだったら、引っ張れるような精神力を持った選手であったり、その選手にしかない強いパーソナリティー(個性)を持った選手ですね」。
足が速い、当たりに強い、高く跳べるといった身体的な特長だけでなく、頑張れる、献身的なプレーが出来るといった後から伸ばせるものまで“パーソナリティー(個性)”はいろいろ。Jのアカデミーを目指す選手だけでなく、 “パーソナリティー(個性)”というのはジュニア年代から大人になるまでどの年代でも必要とされるポイントです。
“うちの子どもにはどんな個性があるのか?そして、その個性を伸ばせるクラブ、合うクラブはどこなのか?”それはJのアカデミーだけではありません。しっかりとしたコンセプトの基、育成を行なっているクラブはアカデミー以外にもたくさんあります。重要な進路選びのためには、このような現状を理解しておくこと、そして本人がどうしたいか含めお子さんを知ることが重要なのです。
※2:スカラーアスリートプロジェクトとは?京都サンガFCが2006年から立命館大学、京セラと三位一体で行うプロ・トッププレーヤー育成プロジェクト。U-18の選手は寮生活を行いながら立命宇治高等学校へ通い、サッカーを行う。経済的負担が少ないだけでなく、衣食住に教育が全て近場に揃っているので夕方に練習が行え、成長のために必要なカロリー計算された食事を練習後30分以内に取れるというメリットがある。開始から6年で11人のプロ選手を輩出している。
森田将義(もりた・まさよし)//
関西を拠点に全国津々浦々、大学、U-18、U-15など育成年代を追いかけるフリーのサッカーライター。主にELGOLAZO、ゲキサカ、スポーツナビなどへ寄稿。ライター業のスタートはテレビの放送作家という異色の経歴も持つ。
●E-mail:jnfpr1234@yahoo.co.jp
【大会公式サイト】
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