勉強と進路

2014年11月11日

子どもの心に火をつけるのは、子ども自身!

東京ヴェルディの中村一昭スクールコーチは、かつてジェフ千葉に所属し、現在は京都サンガの『つながり隊』としてホームタウンの学校巡回事業を展開する池上正さん(現京都サンガ普及部部長)とともに『サッカーお届け隊』の一員として活動していたひとりです。現在は、東京ヴェルディでスポーツお届け隊『ヴェルレンジャー』を結成し、ホームタウンを中心とする学校などの巡回事業を展開しています。
 
中村コーチはいわば、60分や90分といった限られた時間のなかで、初めて出会う子どもたちの心に火をつけて、サッカーの魅力を存分に伝えることができるプロフェッショナル。今回、エデュスポ・サッカースクールを取材したあとに、中村コーチに『子どもの心に火をつける方法』をテーマにしたインタビューを敢行しました。(取材・文・写真/杜乃伍真)
 
 
<<我慢できずに怒ったり強制してしまう!それは大人の指導力不足
 
 

■教育(指導)とは忍耐

――今日はコミュニケーションをテーマに進めていたわけですけれど、途中から子どもたちが積極的に手を挙げて発言するようになりました。
 
そうですね。みんなの前で話ができたり、友達になにか困ったことがあったときに手助けできたり、というのが大事だと思っています。最初はなかなか発言できないものですが、こちらが発言しやすい環境をつくってあげれば徐々に発言できるようになります。それが重要なんです。
 
――中村コーチの「だれか発言できますか?」という声から始まったわけですが、子どもたちをどう引き出していこうと考えていたのでしょう。
 
こちらのスタンスとしては、人前で発言しなければいけない、というような子どもたちにとっての壁をたくさんつくってあげて、それを乗り越えるようにうながしてあげるんです。それをみんなで乗り越えるうちにだんだんと友達と慣れていく。最後は、みんなが発言できるようになるという感じですね。
 
――対面して間もない段階では、子どもたちも周りに順応できていないので、まずはひとりで発言できる子どもが出てきてほしいところですよね。
 
そうですね。そういう思いはもちろんありますが、ぼくは“指導は忍耐”だと思っているので、こっちが一方的に強制したり、怒ってしまったりしたら負けだと思っています。そうなってしまうのは自分に指導力がないからです。
 
 

■子どもが自らの心に火をつけるようになる指導方法とは?

――子どもの気持ちを乗せる方法などはあるのでしょうか。
 
ぼくは子どもたちの心に火をつける、という段階ではコーチとしてまだまだだと思っているんです。子どもたちが自分たちで心に火をつけていく、そんな指導をできるコーチが優秀だと言えるのではないでしょうか。たとえば、コーチが身振り手振りで大げさにして騒いでいて、それに対して子どもたちがわーっと騒いでいるようなイメージがあると思うんですけど、そうではなくて、コーチが自然な感じで粛々とトレーニングを進めて、一つひとつ的確に子どもたちに声がけをしていく、そのアクションに子どもたちが反応してだんだんと盛り上がっていく、そんな指導が優秀な指導だと思うんです。
 
――なるほど。そういう指導をするためのテクニックはあるのでしょうか。子どもが自ら心に火をつけるようになる方法です。
 
そうですね。たとえば、よく褒めてあげるとか、できない部分をうまくくすぐってあげるとか。今日でいえば、ひとりの子どもの手が挙がったときにすかさず褒めました。そこでさらにみんなで拍手をして盛り上げていきました。そうすることでほかの子どもたちは、やってみたいな、と思うようになります。最初に手を挙げる子どもにとっては大きなチャレンジだと思いますが、そこでうまく褒めてあげて周りに相乗効果を生みだしていく。ぼくらの学校巡回は5分前に初めて会った子どもたちとすぐに活動をすることになるので、まず、どんな子どもたちなのかは必ず最初のほうで見ながら判断するようにしていますね。
 
――それは最初のウォーミングアップの様子などですか?
 
そうですね。ウォーミングアップもそうだし、コーチが話すときに前に来ているような子どもたちはだいたい発言ができて、好奇心が旺盛な子どもが多いので、その子たちをうまくくすぐってあげるのがポイントですね。

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