テクニック

2012年4月30日

ディフェンスが楽しくなる!『チャレンジ&カバー』を学ぼう

 
前回のコラムで解説した1対1に引き続き、今回は2対2のディフェンスを学びましょう。集団のディフェンスにおいて、最も大切なのは『チャレンジ&カバー』という考え方です。サッカーはオフェンス、ディフェンスに限らず、11人のそれぞれが局面に対してチャレンジを行い、ピッチ上に変化を起こし、それを繰り返すことで得点を挙げる、あるいは失点を防ぐスポーツです。
 
<<1対1に自信がつく! ディフェンスで大事な3つの姿勢
 
オフェンスならばシュート、ドリブル突破、縦パス、スルーパス、ディフェンスならばプレス、インターセプト、競り合いなどさまざまなチャレンジの手段を駆使します。しかし、チャレンジはいつも必ず成功するものではありません。
 
果敢にチャレンジした結果、ミスをしてボールを奪われ、チーム全体を危機に陥れてしまった経験。チームスポーツをプレーしたことがあれば、誰でも一度は直面したことがあるのではないでしょうか。苦い思い出です。
 
そこで大切になるのが『チャレンジ&カバー』。チャレンジした味方をみんなでカバーしよう、サポートしようという考え方です。味方全員にカバーの意識があるからこそ、それぞれが思い切ってチャレンジすることができる。これをきちんと実行できるチームは、例外なく強いものです。
 
サッカーをチームスポーツとしてプレーするためには、この考え方がすべての土台になります。
 
 

■セカンドDFのポジショニングを学ぼう!

サッカーの2対2において、下記のようなディフェンス対応をする人を多く見かけます。
 
出典:『サッカー守備 ディフェンス&ゴールキーパー練習メニュー100』
 
上図のような状況で、ボールを持っているZに対応するディフェンス選手Aのことを『ファーストDF』、Aの近くに立ってカバーリングの役割を果たすディフェンス選手Bのこと
を『セカンドDF』と呼びます。
 
ボールを持っているZに対してAが対応し、YをBがマークしている形です。もしもAが1対1からZの突破を許した場合、ゴールへの最短ルートが空いているのでそのままシュートに持ち込まれる可能性が非常に高い状況です。
 
上図のBには、セカンドDFとしてカバーリングする意識が薄く、自分がマークするYだけに気を取られています。ボールを奪おうとチャレンジするAをカバーする選手がいないので、これでは『チャレンジ&カバー』がきいたディフェンスとは言えません。
 
次に、下の図を見てください。
 
 
セカンドDF(B)のポジショニングが変わっているのがわかるでしょうか?
 
セカンドDFはこのように『ファーストDF(A)の斜め後方』に立つことが基本です。この図を見ると、Bは自分がマークするべきYに注意を払いつつ、Aの背後をカバーできるポジションに着いているのがわかると思います。これが『チャレンジ&カバー』のきいた状況です。
 
ディフェンスの原則は、相手が持っているボールを自分たちのゴール方向へ進ませないこと。上図のBのようなポジションを取っていれば、たとえAが抜かれても、簡単にシュートを打たれることはないでしょう。
 
また、AとBのチャレンジ&カバーの役割は、ボールの位置に合わせて頻繁に入れ替えなければいけません。
 
例えばZがYへ横パスを出してきたら、BはYへ素早く寄せてファーストDFに変わり、そしてAはBの斜め後ろへ下がってカバーを行うセカンドDFに、お互いに役割が入れ替わります。相手のボールの位置に合わせて、このようなチャレンジ&カバーの交換をスムーズに行うことが大切です。
 
 

■チャレンジ&カバーとディフェンス姿勢を合わせて考える

次は、前回のコラムで解説した『ディフェンス姿勢』と、『チャレンジ&カバー』を組み合わせたやり方を学びましょう。
 
下記の写真を見てください。
 
 
ファーストDFであるAは、矢印の方向へ体を向けており、背中側が『弱いサイド』になります。そのため相手選手が写真の右側へボールを動かしてくると、対応が遅れてしまいます。そこでセカンドDFのBは、写真のようにAの『弱いサイド』に対して体を向けておき……
 
 
相手選手のドリブル突破に対して、Bは素早く前へ出てボールを奪えるように、あらかじめ姿勢を整えておきます。
 
Aの『弱いサイド』を、Bの『強いサイド』でカバーする。このような体の向きや姿勢を整えることで、ボールへの寄せが少し速くなり、サッカーではそのわずかな1歩2歩の差が、ボールを奪えるか失うかの重要な分かれ目になるのです。
 
 

■ディフェンスの楽しさがわかるようになる!

前回と今回で紹介した、『ディフェンスの姿勢』と『チャレンジ&カバー』はすべてのディフェンスの基本と言っても過言ではありません。サッカーにはラインコントロール、リトリート、プレッシングなどのディフェンス用語がありますが、それらはあくまで1対1や2対2の土台がきちんと整った上に成り立つものです。
 
『サッカー守備 ディフェンス&ゴールキーパー練習メニュー100』の監修者、河村優氏はこのように語ります。
 
「日本人は基礎をササッと済ませて、すぐに応用へ進みたがるクセがありますが、基礎をおろそかにして将来的に困るのは他でもない選手たち自身です」
 
毎日のトレーニングの中で意識して実行し、考えなくても実行できる習慣になるまで体にじっくり染み込ませる。そこまで達成してはじめて、「基礎を習得した」と胸を張って言うことができるでしょう。ディフェンス力が上達すると、徐々にボールを奪う楽しさを理解できるようになると思います。ぜひ、その快感を味わってみてください。
 
 
<<1対1に自信がつく! ディフェンスで大事な3つの姿勢
 
 
清水英斗(しみず・ひでと)//
フリーのサッカークリエイター。ドイツやオランダ、スペインなどでの取材活動豊富でライターのほか、ラジオパーソナリティー、サッカー指導、イベントプロデュース・運営も手がける。プレーヤー目線で試合を切り取ることを得意とし、著書は、『サッカー観戦力が高まる~試合が100倍面白くなる100の視点』『サッカー守備DF&GK練習メニュー100』『サイドアタッカー』 『セットプレー戦術120』など多数。
●twitterID:@kaizokuhide
 
 

 

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