テクニック
2014年1月16日
原口元気のドリブルに詰まっている、相手DFとの駆け引きに迫る
2013年Jリーグ、33試合出場11得点。浦和レッズの原口元気選手は、自身初となる2桁ゴールを達成し、さらにACLでも4試合2得点を記録しました。新シーズンの背番号はそれまでの「24」から浦和レッズのエースナンバー「9」に変わり、より一層、ゴールへの期待が高まっています。
■原口元気のゴール数はなぜ増えたのでしょう
その最も大きな要因は、本人も「自信がついてきた」と語る左足のシュート。もともと、左サイドからカットインして右足でシュートを打つパターンを得意としていましたが、それだけでは相手DFやGKに読まれます。ザックジャパンにも何度か招集されていた原口選手は、本田圭佑選手が得意の左足でボールを持つとき、相手DFがシュートコースを防ぐために懸命に食いついてくるのを見て、自分のプレーにも逆足でシュートを打つことが大切であることを改めて感じたそうです。
FC東京戦では左サイドからカットインし、右足で打つと見せかけて切り返し。滑り込んだ相手をかわして左足でミドルシュートをたたき込みました。また、柏戦でもゴール右側からカットインして左足でファーサイドへ流し込んでいます。今シーズン11得点のうち、6得点を左足で決めたことが、原口選手の成長の何よりの証と言えるでしょう。
■原口元気といえばもちろん、ドリブルのテクニック
ザッケローニ監督も評価しているように、原口選手のドリブルは、トップスピードの中でも技術の精度が落ちないことが大きな特長です。それが最もよく表れたのが、セレッソ大阪戦でした。セットプレーの守備でボールをキャッチしたGK加藤順大選手からパスを受けると、ロングドリブルへ。
ここで注目すべきは、ドリブルコースの取り方です。追いかけてくる相手ディフェンスから逃げるように、外側へドリブルする選手も多いですが、原口選手の場合、その相手の前方に割って入ろうとします。そうすれば、相手は背中側からファールで止めるしかありません。追いかけてくる相手を無効にし、1対2の状況を、1対1にするようなドリブルコースの取り方。これは大きなポイントです。
そして原口選手はグングン加速しながらも、ボールが体から離れすぎないように、トップスピードのまま細かくボールタッチを刻みます。ハーフウェイラインを越え、相手のペナルティーエリア手前にたどり着くと、DF茂庭照幸選手と対峙。原口選手は少しスピードを落とすと、軽くスキップするように右足のアウトサイドで触って相手を誘い、すぐに同じ右足のアウトで中央側へ。タン・タン・タン…と1拍子で刻んでいたリズムから、タ・タンッ!とリズムを急変させ、中央へ持ち出します。これは原口選手が小学生時代から得意としていたドリブルテクニック。速攻を仕掛けたい場面では、大きなフェイントを仕掛けていると相手のディフェンスが整ってしまうため、このような緩急など、小さなフェイントで抜くテクニックが有効になります。
そして、そのまま右足でシュートかというところですが、しかし、原口選手は相手ボランチの山口螢選手がカバーに戻ってきたのを見て、もう一度、右インサイドで切り返し。縦へ抜いて、最後は左足でファーサイドへシュート。ここでも左足の精度が武器になりました。右足しか無ければ、たとえ茂庭選手を抜けても、2人目の山口選手に捕まっていたでしょう。
このとき、右へ、左へと、トップスピードでジグザグにドリブルコースを変えた原口選手。ボディーバランスを全く乱していません。原口選手は違う方向へ切り返すとき、スキーのスラロームのように、ボールだけでなく体も進みたい方向へ倒れています。そのためボールと体が離れる時間が短くなり、素早く次のタッチに移ることができます。これが下手な選手の場合は、後ろに重心が残り、ボールと体が大きく離れ、カットされやすくなります。
さまざまな駆け引きが詰まっている原口選手のドリブル。ここでは戦術的な視点から、原口選手の非凡なテクニックを解説してみました。
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原口元気選手インタビュー(2013年2月掲載)
清水英斗(しみず・ひでと)//
フリーのサッカークリエイター。ドイツやオランダ、スペインなどでの取材活動豊富でライターのほか、ラジオパーソナリティー、サッカー指導、イベントプロデュース・運営も手がける。プレーヤー目線で試合を切り取ることを得意とし、著書は、『あなたのサッカー「観戦力」がグンと高まる本』『イタリアに学ぶ ストライカー練習メニュー100 』『サッカー観戦力が高まる~試合が100倍面白くなる100の視点』『サッカー守備DF&GK練習メニュー100』『サイドアタッカー』 『セットプレー戦術120』など多数。
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