テクニック

2014年11月 5日

柴崎岳がアギーレジャパンでレギュラーを確保できた理由とは

日本代表のニューフェイスとして注目を集める、鹿島アントラーズの柴崎岳選手。代表デビューとなったベネズエラ戦では、早速、初ゴールをマーク。その後もスタメンでピッチに立ち、アギーレ監督からは「柴崎はワールドクラス。高いレベルまで行き着くことのできる選手」と高い評価を受けています。そんな柴崎選手のプレーを、スペイン・バルセロナに拠点を置く、世界的指導者集団サッカーサービス社のポール・デウロンデール氏に分析してもらいました。柴崎選手が高く評価される、その理由に迫ります。(取材・構成/鈴木智之)
 
 

■代表の中でも突出するインテリジェンス

柴崎選手の特徴は『サッカーを理解する力』に長けていることです。ピッチの中で何が起きていて、どのような状況にあるかを分析する力があり、試合の流れを読むことのできるセンスを持っています。日本人選手の多くはサッカーを理解し分析する能力は、それほど高くありません。柴崎選手は22歳という若さながら、ベテラン選手のようにピッチの中でなにが起きているか、どのようにプレーすれば良いかを瞬時に察知することができます。そして、つねに相手チームに生じるギャップやディフェンスラインの背後のスペースを狙っています。スルーパスを通して決定機を演出したり、自らゴール前に飛び込みシュートを決めることもあります。ベネズエラ戦のゴールがまさにその形でした。
 
アギーレ監督は日本代表の選手に対して「試合の流れを理解した上で、質の高い状況判断」を求めています。柴崎選手はアギーレ監督が選手に求める要素を高いレベルで備えているので、毎試合のようにスタメンで起用されているのでしょう。柴崎選手について大きな可能性を感じているので、彼が覚醒するためのきっかけをつくってくれる監督になるのではないでしょうか。
 
わたしは数多くの日本人選手のプレーを見てきましたが、彼らは自分で判断し、プレーを決断することを苦手としている印象を受けます。たとえば、アギーレ監督は初戦から4-3-3のシステムを使っています。日本にはあまり馴染みのないシステムのため、選手たちは自分のポジションに留まってプレーする場面が多く、チームとしての流動性が生まれませんでした。しかし、柴崎選手は状況に応じて、自分はいまどの位置に立たなければいけないか、どこにスペースができて、どう使えばいいか。あるいは味方にどう使わせるかを瞬時に判断し、状況に応じてアグレッシブにゴールを目指すことができていました。サッカーに対する理解力、インテリジェンスは日本人選手の中では群を抜いています。
 
柴崎選手はサッカーの理解力のほかに、タレント性も備えています。タレント性は選手によって違いますが、一言で言うと『素質』です。柴崎選手は、『サポート』というプレーのコンセプトに対する考え方や理解の仕方、プレーをイメージして実行に移す能力の高さが高いレベルにあります。周りを見る力も群を抜いているので、相手に大きなダメージを与える動きができます。また、スペースの使い方についても、ほかの選手と違います。自分で使うためのスペースだけでなく、味方が使うスペースをつくるための動きができるのです。これはサッカーに対する理解力がないとできないプレーです。プレスに行くスピード、攻守の切り替えのスピードが速いのも特徴で、ダッシュを繰り返し激しいフィジカルコンタクトを繰り出す能力も備えています。

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