テクニック

2014年11月20日

ジュニア年代のGKにこれだけは伝えたい!7つの原則

※COACH UNITED転載記事(2014年9月17日掲載)※
 
ゴールを守る最後の砦。それがGKだ。ブラジルW杯ではノイアーを始め、多くのGKが活躍し、改めてこのポジションの重要性が浮き彫りになった。しかし日本の現状を見ると、GKを教えられる専門的な知識を持った指導者は少なく、まだまだ伸びしろがあるポジションでもある。そこで今回は、GK大国ドイツ・ブンデスリーガのアカデミーでGKの指導を学び、現在は松本山雅のアカデミーでGKコーチを務める川原元樹氏に『ジュニア年代のGKをする際のポイント』を訊いた。(取材・文/鈴木智之 Photo by MSC Academy U12 Green/田川秀之)
 
 

■GKに絶対的に重要な身体の使い方

――今回はジュニア年代のGK指導について、伺いたいと思います。川原さんは、何歳からGKのトレーニングを始めたほうがいいと考えていますか?
 
現在、世界でプロとして活躍しているGKを見ると、8歳の頃からGKとしてプレーしている選手もいれば、14歳まではフィールドプレイヤーで、15歳からGKを始めた選手もいます。そのため一概にこの年齢で始めれば、プロとして活躍できるというのはありません。私がGKの勉強をしていたドイツの現状を見ると、ブンデスリーガのアカデミーに所属する多くの選手が、ジュニア年代からGKとしてプレーしています。そう考えると、年代に合ったトレーニングを受けることができれば、8歳などの低年齢から始めても良いと思います。ジュニア年代にGKトレーニングを受けることがプラスに働く点としては、プレゴールデンエイジやゴールデンエイジの時期に、GKの専門的な動作を習得することが出来る点です。この時期を逃すと、後での習得は少しずつ難しくなってきます。また、この年代でGKのメンタリティーを学ぶことも重要だと思います。
 
――GKの動作は、走る、蹴る、跳ぶ、手を使うなど、多岐に渡ります。GKを始めた頃の選手にとって、大切なのはどのようなことでしょうか?
 
まず絶対的に重要なのは、身体の使い方です。自分でイメージした動作を、実際に行動に移す能力。これが、技術を発揮するときのベースになります。この能力が欠けていると、将来的にはどこかに欠点を持つGKになってしまいます。GKのプレーは、ポジションをとる→準備をする→バランスをとる→構える→初動(アクション)という流れになります。私が指導をするときに注意しているのは「デモンストレーションに頼り過ぎないこと」です。GKコーチがデモンストレーションをすると、イメージはつかみやすいかもしれませんが、その選手の身体的な感覚に訴えることは難しいと思います。身体感覚の良い子は、デモンストレーションを見てすぐに真似をすることができるのですが、大多数の子はできない現状があります。選手にプレーをわかりやすく伝えるためには、動作の説明を細かく言語化することが必要だと思います。
 
――具体的に、どのように言語化するのでしょうか?
 
基礎技術のひとつである『オーバーハンドキャッチ』を例にあげると、足の運び方や手の出し方、足のどこに体重をかけるのか、上半身の力の入れ方など、細かく言葉で伝えます。そして、うまく身体を動かせたときに、「いまのいいね!」「それだよ!」とほめます。そうすると、選手は「こうやって体を動かせばいいんだ」と、頭と身体で理解することができます。細かく言い過ぎると混乱してしまうので、ポイントを絞って伝えます。私が意識しているのが、選手自身が「この動きをすればいいんだ」と感じる瞬間を、練習の中でつかませることです。
 
――川原さんはドイツや日本において、GKの育成、指導の現場で様々な経験を積まれていますが、GKのプレーをどのように定義していますか?
 
松本山雅のアカデミーの選手には『山雅スタイル』という年代別の指導指針を作り、この年齢までに、この技術を習得したいという目標を設定します。そこではGKのプレーの原則を7つにわけて、選手たちに伝えています。これは私がドイツにいた時に知り合い、影響を受けた、レッドブル・ザルツブルグのGK部門の統括をしているHans Leitert(ハンス・ライタート)が記した『die kunst des torwartspiels oder die sieben prinzipien der meister (GKの芸術、熟練者の7つの原則)』の内容が基になっています。

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