テクニック

2015年10月 6日

GKとのかけ引きは"肩"で制す!元J2得点王が教えるゴールの奪い方【動画あり】

3月からストライカーに特化したスクールを開校した元J2得点王の長谷川太郎さん。3~6年生を教え、2030年のワールドカップで得点王に輝ける選手を育てることを目標に、自身が得たゴールを決めるコツを惜しみなく伝えています。今回は長谷川太郎さんに、得点をとるために重要なことを教えてもらいました。(取材・文=木之下 潤)

■元Jリーガーとして、元プロのFWとして子どもたちに還元できること

――得点をとるために、スクールで大切に指導されていることは何でしょうか?
 
長谷川 『つねにゴールを意識してプレーすること』です。すべてではありませんが、日本ではMFが中心のサッカーをしていることが多いです。簡単に言えば、パスの出し手のタイミングに受け手が合わせるサッカーです。日本代表でいえば、本田圭佑選手のパスに岡崎慎司選手が合わせるパターン。しかし、現代サッカーはフリーでシュートを打てるスペースが狭く、短い時間の中でゴールを奪わなければなりません。パスの出し手が中心の攻撃では、当然シュートを打つチャンスが少なくなります。サッカーが得点を奪い合うスポーツである以上は、攻撃面においてはFWが主体であるべきだと私は感じています。つまり、受け手が中心のサッカーです。岡崎選手の動き出しに合わせて本田選手がパスを出すサッカーです。
 
――確かに攻撃で、パスの出し手のタイミングでスルーパスを出しても相手に読まれてしまうし、後手に回ってしまいます。
 
長谷川 私の経験上、パスの出し手がスペースを見つけてパスを供給してもタイミングとしては遅いのです。FWの動き出しに合わせてパスが出てくれば、DFよりも早くシュートスペースを発見しているわけですからシュートが打てる。そんなFWが育てば、必然的にそれに対応するGKもDFも、そしてパスを供給するMFも今よりも違うタイプの選手が育つはずです。しかし、そこには日本人の気質も関わっています。それは『気を使う文化』の中で生活を送っているから、海外の選手たちほどFWが強い主張ができないということです。
 
――その文化については変えられませんよね。
 
長谷川 そうなんです。だから、日本人らしいFW像を作っていけばいいと思っています。インドでプレーしたときに感じたことがあります。彼らはシュートを放つとき、一切の迷いがない。味方にそれが伝わるから周囲の選手たちはセカンドボールを狙います。日本人選手であれば、『シュートを打たないかもしれない』という選択肢を持ちながらセカンドボールを狙うでしょう。すると、一歩遅れるからシュートチャンスがなくなる。インド人のFWは絶対にシュートを打つからセカンドボールに集中できます。それも得点パターンの一つになるのです。
 

■自分なりのシュートのコツは反復練習によって見つける

――では、スクールでは具体的にどんな指導をしているのですか?
 
長谷川 例えば、シュート時の蹴り方です。日本人の選手たちは足だけでシュートを打っている人が多いですが、海外の選手たちは全身を使って体のひねりでシュートを打っています。この違いはとても大きいんです。そして、踏み込みです。シュート直前の踏み込みの一歩はそれまでよりも歩幅が1~1.5mほどと広くなります。そうすると、その前に歩幅を合わせる調整力、つまりステップが重要になります。私はそれを養うのに『タニラダー』を取り入れています。
 
【タニラダーをつかったシュートモーションのトレーニング】
 
【別アングル】
 
――なるほど、『ひねり』と『踏み込み』が大事なんですね。
 
長谷川 もう一つは、『GKとの駆け引き』です。足だけで蹴ると、GKのポジションや動きによってコースを変えようとしても読まれてしまいます。それは骨格の動きを変えて蹴らなければならないから動作が大きくなりバレてしまうからです。しかし、ひねりの力を利用して蹴れば、足先の角度やボールに対するインパクトの場所を変えるだけでコースが変更でき、動きも一定だから読まれにくいのです。こんな駆け引きをできる選手を育てたい。
 
【確実に得点力がアップする!シュート時の肩の使い方】
 
――プロのストライカーならではのシュート技術と戦術ですよね。
 
長谷川 そのために重要視しているのが『自分で決断してシュートを打っているのか』という点です。DFが奪ってMFがつないでくれたボールをゴールに決めるという責任感を持つこと。そうすると、シュートを打つという決断、つまり『覚悟』が必要になります。日本人は判断するための選択肢を持つのは得意かもしれませんが、決断力に欠けると私は感じています。それはFWでいえば、ゴールを意識できていないからシュートのイメージがないのではないでしょうか。
 
――日本人選手はよくシュートイメージがないとも言われます。
 
長谷川 先ほど体をひねる蹴り方をお伝えしたのは、シュートを打つコツをつかんでほしいからです。それを反復練習によって自分の形にできれば、同時に決断力も早まります。それにペナルティエリア内では『ゴールを確認してコースを決め、ボールに目を向けてシュートを打つ』というような基本的なことをやっている時間はありません。だから、「無意識に体が反応して勝手にシュートを打ってしまった」ぐらいでなければ、世界では得点なんて奪えません。
 
――試合後のインタビューで「感覚で打ったら入った」なんてコメントをよく耳にします。
 
長谷川 ジュニア年代ではもちろん、考えて打つことは必要なことですが、ゴール前でそうしていたら遅いのです。だからこそ、反復練習で自分なりのシュートのコツをつかむことが大事です。間接視野でゴールを見るとか、瞬間的にシュートがゴールに入るイメージが湧くとか、得点は練習に裏付けされた感覚的な引き出しが重要です。それを身につけるには、たくさんの失敗を重ねなければなりません。だから、成功してゴールをとったときにそのイメージが鮮明に頭の中で引き出しとして残るのです。それが大きな自信につながります。
 
次ページ:ゴールが子どもに心の貯金を持たせる
 

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