テクニック
2018年3月19日
無名の街クラブを準優勝に導いた「動き創り」のためのドリブルトレーニングとは?
1.身体の仕組みを理解する
三木さん流のコーンドリブルは、足元のテクニックを身に付けるものではなく、身体を思い通りに動かすための「動き創り」のトレーニングです。そのためには、身体の仕組みを理解した上で、トレーニングを行うことが大切です。
「人間の身体は『足首』『膝』『股関節』の3か所が動き、これらにはそれぞれ内側にひねる『内旋』と、外側にひねる『外旋』という動作があります。これらの6つを滑らかに動かせるようにするのがコーンドリブルの狙いです。身体が滑らかに動くようになれば、色んなボールタッチができるようになり、サッカーがうまくなります」と三木さんは語ります。
例えば、ダブルタッチは足首を外側から内側に動かす動き。シザースは、膝を内側から外側に動かす動きというように、ドリブルの技を身体の箇所を動かすためのトレーニングと考えているのです。
2.経験したことがない動きや、日常にない動き取り入れる
三木さん流のコーンドリブルでは、ただ前向きで進むだけでなく、後ろ向きや横向きなど、日常では行わない動きを多用するのも特徴です。
「例えば、幼少の頃は上手く持てなかったお箸も、日常生活で常に使っているうちに自然と使い方が上手くなりますよね。サッカーも同じで、前方へのダッシュなど日常で行う慣れた動きは、自然とできるようになります。しかし、バック走やターンなどのサッカー特有の動きは、日常生活ではなかなか起きない動きなので、上手くできない選手が多く見られます。前向きでできたことでも、後ろ向きになれば感覚は変わります。」と三木さんはその意図を説明します。
そうした問題を解決するため、ドリブルの技の組み合わせも、選手が技に慣れてくれば新たな組み合わせや動きを加え、選手たちに新たな非日常の動きを提示することで脳に刺激を与えています。そうすることで、できる動きを増やしているのです。
3.正確さよりも、速さを意識する
ドリブルを意識するチームには、正確なボールタッチを身に付けるためにゆっくりしたドリブルを心掛けるチームもありますが、三木さんの場合は、ボールタッチの正確さよりも身体を素早く動かすためのリズムやスピードを重視しています。
「失敗してもいいので、素早くコーンの間を抜けるように指導しています。子どもたちは身体を素早く動かそうとするうちに、『踵がつけば、ブレーキがかかる』、『軸足がスムーズに動かないと走りにくい』などと自分たちで気付いていきます。そうしたタイミングで、指導者が『ステップしながら、ドリブルをしてみよう』などと、選手の気付きに応じたメニューを提示してあげると、だんだんと素早く動ける身体になっていきます」と速さを求める理由を明かします。三木さんのトレーニングでは、ボールタッチが上手くても、身体をちゃんと動かせていないと意味がないのです。
また、複数の技を組み合わせたメニューでは、1つ目の技から2つ目の技に移る際のジャンプや横移動など、ボールを持っていない時の動きの素早さを求められるのも特徴と言えるでしょう。
例えば、インロールとアウトロールの連続技では、軸足を飛ばすこと、そして、肩とひざを連動して素早く重心移動することが求められます。
メニューの組み合わせによっては、難易度が高くなり、三木さんが定期的にトレーニングを行う興國高校でも、悪戦苦闘する選手が珍しくありません。こうした様々な仕組みが詰まったコーンドリブルをこなすうちに、選手は素早く身体が動くようになるのです。
■ケガの予防にもつながる「動き創り」
身体が素早く動くようになれば、ドリブルで優位に立てますし、相手よりも先にセカンドボールに反応できます。「自由自在に足を動かすことができるから、トラップなどのボールコントロールが上手くなり、サッカーが上手くなるというのが僕の考え方です。また、思い通りに身体を動かせれば、怪我も減ると思います」と三木さんは話します。
短い練習時間の中でも「動き創り」を徹底してトレーニングし、「個」の技術力を磨くことでサッカーのプレーの質を上げていく三木さん流のコーンドリブルは、同じような悩みを持つ街クラブのチームにも有効なのではないでしょうか。
次回はドリブル上達に効果的な練習についてお聞きします。
2回目:ドリブル上達の秘訣は馬跳び?サッカー選手にも必要な全身を動かすトレーニング3回目:選手に何を学んでほしいのか?指導者が陥りがちなコーンドリブルの落とし穴
三木利章(みき・としあき)
プロサッカーコーチ。主に少年サッカーチームやジュニアユースチームの指導、スクール主催などの精力的に活動。
育成年代で一番大切な『個』の技術・戦術の向上を目指し、実践で生かせる個人スキルを身につける指導を行っている。