テクニック
2018年3月23日
選手に何を学んでほしいのか?指導者が陥りがちなコーンドリブルの落とし穴
■"何のためにやるのか"を明確にしたトレーニングを
三木さんの場合、コーンドリブルの主眼は「動き創り」。
そのため、他のチームでよく見られる「顔を上げよう」という指示をすることはありません。フィジカルトレーニングの一環という考えなので、顔を上げて周囲を見ることよりも、より速くドリブルをするために足元のコーンを見ることのほうが優先されるからです。しかし、2対2のトレーニングをする場合は、相手や周囲の状況を見る必要があるため、選手には顔を上げてドリブルすることを求めます。
「このトレーニングは何のためにするのか?」ということを、常に頭に置いて取り組んでいるのです。
「コーンドリブルは、そうした目的を見落としがちになる」と三木さんは指摘します。
「定型のコーンドリブルをただこなすだけだと、選手も指導者も型ばかりを意識してしまい、全員に同じボールの持ち方を求めるようになってしまいます。しかし、選手の利き足や体格によって、一番動きやすいボールの持ち方は変わってきますし、実際の試合では、常に同じ状況や理想とするシチュエーションが起きるとは限りません。何のためのコーンドリブルなのかを、しっかり意識してトレーニングすることが重要です。」
■指導者が考えるべきドリルトレーニングの組み立て
三木さん流のコーンドリブルでは、目的に応じて、コーンの広さや置き方、距離などの細部まで狙いが込められています。例えば、トップスピードのドリブルを練習させたいのであれば、スタートからゴールまでのコーンの距離を短めに設定したり、インターバルをおいたりします。距離を長くとると、疲れてスピードが落ちてしまい、本来のトレーニングの目的である「トップスピードでのドリブル」が実行できないからです。コーンドリブルのようなドリル形式のトレーニングでも、このように目的や意識を明確にすることによって、選手の成長度合いは大きく変わるはずです。
コーンドリブルという"クローズドスキル(外的要因によって左右されない自分のペースで行える技能)"を、いかにサッカーのプレーに活きる"オープンスキル(外的要因によって左右され変化する状況で使える技能)"へと繋げる事が出来るか、それを指導者が明確にしてトレーニングを組み立てることが大切だと、三木さんは語ります。
サッカーの指導にはチームによってさまざまな方法があり、三木さんのように「動き創り」のためにドリブルトレーニングを行う方もいれば、技やボールタッチを身に付けるために行う方もいるでしょう。どちらが正解ということはありません。この機会に、いま行っているトレーニングを通じて、選手に何を学んでほしいのか、その答えをあらためて考えてみてはいかがでしょうか。
1回目:無名の街クラブを準優勝に導いた「動き創り」のためのドリブルトレーニングとは?2回目:ドリブル上達の秘訣は馬跳び?サッカー選手にも必要な全身を動かすトレーニング
三木利章(みき・としあき)
プロサッカーコーチ。主に少年サッカーチームやジュニアユースチームの指導、スクール主催などの精力的に活動。
育成年代で一番大切な『個』の技術・戦術の向上を目指し、実践で生かせる個人スキルを身につける指導を行っている。