テクニック

2021年4月14日

相手が守りを固めるスペースで素早く攻める方法/ソレッソ熊本のバイタルエリアで攻撃を前進させる練習法

サッカー指導者のためのオンラインセミナー『COACH UNITED ACADEMY』では近年、「全日本U-12サッカー選手権大会」で目覚ましい成績を残し、多数の注目選手を輩出するソレッソ熊本のトレーニングを公開中。

前編では、ひし形のパス&コントロールなどを用いた「ファーストタッチと立ち位置を身に付けるトレーニング」を紹介したが、後編では攻撃方向を意識し、より実戦に近いメニューを行っていく。(文・森田将義)

(※COACH UNITED 2021年3月15日掲載記事より転載)

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攻撃を前進させるためには受け手が幅と高さを意識する

後編の初めに行うのは2つのエリアを用いた「3vs3+3サーバー」だ。攻撃の選手は3枚のDFを最終ラインに見立てて、縦に並んだ3人のサーバーを使いながら2つ目のエリアへと侵入していく。侵入する方法は単独でのドリブルでも、前編でイメージづけた3人目の動きや、スルーパスからの飛び出しでもOK。ただし、受け手が最初から2つ目のボックス内でパスを待ち構えるのは禁止だ。

攻撃の3人が意識したいのはDFとの距離感だ。最後尾のサーバーがボールを持った際に、DFとの距離が近いとDFと同数になるため、パスが受けづらい。スムーズに2つ目のエリアへと進むには、まずはDFから離れた位置にポジションをとらなければいけない。

効果的なのは、DFの背後を突く縦パスで、最後尾のサーバーからDFの背後に立つ中央のサーバーに縦パスを通し、3人目の動きとして攻撃の選手が関われば、前向きの状態で2つ目のエリアへと侵入できる。

ただし、DFも縦パスを警戒し、中央のスペースを消してくるため、攻撃の3人はそうしたDFのアクションを見て、ポジションを変化させなければいけない。中央に絞った位置や、低い位置でパスを受けてしまうとDFに身体を寄せられ、2つ目のエリアへと侵入できないので、幅と高さを意識し、なるべくサイドの高い位置にポジションをとり、スルーパスを待つのが正解といえるだろう。

相手の状況を見て、2つ目のエリアへと侵入しやすいポジションをとるのが理想だが、上手く行く場面ばかりとは言えない。幅と高さを意識してサイドでボールを待っていても、相手の守備が良ければサーバーが孤立して、パスを出す位置がなくなる場面も出てくる。状況に応じては、ボールを失わないよう味方のサポートを優先すべき場合もある。敵と味方の状況を常に把握し、適した立ち位置を意識し続けたい。

もう一つ注意したいのは、ボールを受ける際の意識だ。メニューを進めていくとボールを失いたくない意識が強くなり、足元でボールを受けがちになる。ただ、足元へのボールを要求するとDFとしてはスペースへの警戒をせずに済み、足元のボールを狙うだけで良くなるため、対応が楽になる。そうした問題点を提示した上で、スペースへ走り込むフリをしてからボールを持つ選手に近寄るなどワンアクションを入れるよう指導したい。

シュートに持ち込むためには、数的優位を作る位置が重要

最後の仕上げとして行うのはGKを交えた「3vs3+3vs3」だ。自陣と相手エリアに分かれ、それぞれのエリアで3vs3の状況を作るのがメニューのルール。攻撃側はGKを交えた+1の状況でビルドアップを行い、2つ目のエリアへと侵入する。2つ目のエリアに入ると、1つ目のエリアから1人が加わり、4vs3の状況からシュートまで持ち込むのがテーマだ。

意識したいポイントは、これまでのメニューと大きく変わらない。攻撃を前進するために、幅と高さを考えたポジションを常に取り続けて欲しい。これまでとは違う点は、どの位置でプラスワンの数的な優位な状況を作るかだ。

2つ目のエリアに侵入できるからといって、1つ目のエリアからスペースがない位置へと飛び出しても、味方と被ってしまい、効果的に数的優位な状況が作れているとは言えない。2つ目のエリアのサイドでパスを待つ選手が中央に絞り、空いたサイドのスペースへ1つ目のエリアから選手が飛び出すなどスペースを作る動きと活かす動きを意識したい。そのためには敵と味方だけでなく、常にスペースを探す習慣を身につけて欲しい。

チャンスは攻撃時だけとは限らない。相手が2つ目のエリアに侵入した際は、プラスワンの状況を作るため、守備の人数は2人になっている。

ボールを奪ってから、素早く攻撃に移行すれば数的優位な状況からシュートまで持ち込めるチャンスが生まれる。ただボールを奪っても、攻撃が良いポジションをとれていなければ良い形でボールが入らない。

入ったとしても、そこから先の展開が詰まってしまい、シュートまで持ち込めないケースも出てくるだろう。カウンターからシュートまで持ち込むためには、攻撃の選手は相手が攻撃している時も常にゴールを意識したポジションを取り続けなければいけない。そうした意識を高めるためにも、前編と後編で紹介した4つのメニューでポジショニングの重要性を認識して欲しい。

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【講師】三角将行/
1981年6月27日生まれ。筑波大学時代に少年サッカーの指導をスタート。卒業後は熊本県の高校で3年間教員を務め、2007年からソレッソ熊本のコーチに就任した。昨年度はU-12の監督に就任し、全日本U-12サッカー選手権大会出場に貢献。ソレッソでの活動に加え、世界で活躍できる選手の育成を行う「熊本から世界へプロジェクト」や「東京プルミエサッカーアカデミー」での指導も行う。

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