テクニック
2021年4月19日
味方と連動できない時は無理にプレスをかけない/バディーSCのビルドアップを打破する守備のトレーニング
2019年度の「全日本U-12サッカー選手権大会」で、9年ぶり2回目の優勝を果たしたバディーSC。選手個々の高いスキルと戦術眼をもとに、クオリティの高いサッカーを標榜している。
今回、COACH UNITED ACADEMYに登場してもらったのが、バディージュニアユース横浜 統括コーチの髙橋伸忠氏だ。テーマは「前線からのプレスで相手のビルドアップを打破する守備のトレーニング」。全国制覇を成し遂げた選手が実演した前編では「守備に置ける個人スキルの習得とセカンドディフェンスの理解」を紹介したい。(文・鈴木智之)
(※COACH UNITED 2021年2月8日掲載記事より転載)
トランジションで大切なのは複数人で連動し、相手からボール奪うこと
バディーSCでは、Jリーグクラブといった強豪相手でも引いて守るのではなく、積極的にプレスをかけてボールを奪いにいくことを大切にしている」と髙橋コーチは話す。
現代サッカーにおいて、鋭い出足でボールを奪い、攻撃に転じる「トランジション(攻守の切り替え)」は欠かすことのできない要素だ。個人でのボール奪取技術に加え、複数人で連動して、相手からボール奪うことがポイントだ。
それらを高めるためのトレーニング。まずはウォーミングアップとして「3対2のハンドパス」から。攻撃側3人、守備側2人の設定でスタートし、攻撃側は手を使ってボールを投げ、守備側に奪われないようにする。守備側は両手で攻撃側にタッチするか、ボールをインターセプトする、もしくはボールが地面に着いたら交代となる。(頭上を越えるパスは禁止)
ポイントは、守備側が積極的にアプローチし、ボールがどこに移動するかを予測しながらプレーすること。髙橋コーチは「ボールを奪う意識を持ってやってほしい」と話し、1人目がボール保持者にアプローチしてパスコースを限定し、2人目でインターセプトする動きを意識させていた。
守備側が狙いたい動きとしては、ボール保持者がボールを持ち出した瞬間に、素早くプレスをかけ、プレーの選択肢を狭めること。そして2人目の守備者がボールを奪う。早く動きすぎると、守備側2人の間にパスを通されてしまうので、アクションを起こすタイミングも重要になる。
ハンドパスの次は足でのパスを実施。引き続き、ハンドパス時に行ったボール保持者への寄せ、インターセプトを狙っていく。
さらには「ルーズボールになったら、攻撃側と守備側の1対1に移行」とルールを追加。そうすることで、攻守の切り替えを素早く行う意識を植え付けていた。
相手がボールを保持している時に味方のポジショニングを確認する
続いてのトレーニングは「4対2のボールポゼッション」。2人1組で3チーム作り、4対2のボールポゼッションを行う。ルールは「同色同士のパス交換は禁止」「守備側はボールを奪い、攻撃側にパスを通せば攻守交代」。途中から「グリッド外にボールが出たら1対1を行う」というルールを追加する。
ここでも積極的なアプローチ、ボール移動の予測、選手間のコミュニケーションがポイントになる。髙橋コーチは攻撃側の選手たちに「守備側を困らせるためにはどうする?」と問いかける。
「『相手の逆を取る』という選択肢を持ってプレーしているかな? それをしないと守備の練習にならないよ」と、駆け引きの重要性を説いていく。
守備側には「味方の位置を見て、ポジショニングが整っていなければ、無理にボール保持者にプレスをかけにいかない」とアドバイス。常に周囲を見て、適切な状況判断をするとともに、味方と連携してボールを奪うことを意識付けしていた。
そうすることで、守備側は1人目と2人目が連動して奪う場面が出始めていた。そのあたりは、ぜひ動画で確認してほしい。
前編、最後のトレーニングは「4対4(4ゴール)」。ゴールをつけ、これまでやってきたことを再確認していく。ここでは、守備側に対して「攻撃側の選手の立ち位置に対して、どの角度でボールにアプローチするとインターセプトできるか」をコーチが実演。「相手を泳がせておいて、奪いに行く」といったキーワードで指導していた。
ほかにも「ボール保持者が周囲を見えていない状況を作り出し、連動して奪いに行く」「奪えるチャンスを逃さない」「周囲の守備の選手は、ボール保持者にアプローチした選手がかわされたとしても、パスを通させないような、カバーできるポジションをとる」といったキーファクターが収録されているので、動画を参考にしていただければと思う。
さらに、途中から中央にゴールを2つ設置。これによりサイドだけでなく、中央のコースも考えながらプレーすることが求められるようになる。攻撃側に対しては「ボールを奪ったら、スペースに出て行ってパスを受ける」プレーを強調。守備から攻撃へと素早く転じる部分にフォーカスしていった。
前編はここまで。後編はさらに実戦に近い形でのトレーニングに入っていく。
【講師】髙橋伸忠/
1996年からバディーサッカークラブで指導者を始める。
現在はバディージュニアユース統括として指導する傍ら、バディーサッカークラブのスクール、横浜市トレセンU-11、U-12でも指導者を務めている。