テクニック

2021年7月20日

サッカーのサイド攻撃から得点の確率を高めるトレーニングメニューを紹介!サイドにおける攻守の原理原則とは

東京都の主要大会で上位に進出し、Jクラブのアカデミーにも多くの選手を輩出するJACPA東京FC 。「サッカー指導者のためのオンラインセミナー『COACH UNITED ACADEMY』」では、U-12の鈴木宏輝氏に「中央を突破する攻撃方法」をテーマに出演してもらったことがある。二度目となる今回は「サイド攻撃」にフォーカスしたトレーニングを紹介したい。

わかりやすくてすぐ使えるトレーニング、コーチング内容は必見だ。サイド攻撃のトレーニングメニューを考えている人はぜひ参考にしてもらいたい。(文・鈴木智之)

(※COACH UNITED 2021年5月10日掲載記事より転載)

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「クロスからフィニッシュ」を意識した4種類のウォーミングアップ

前編のテーマは「サイド攻撃の質を高める練習法」。鈴木氏は「クロスボールの質、ゴール前への入り方、場所、タイミング、サイド攻撃が有効な理由を理解することが大切」と話し、トレーニングがスタートした。

ウォーミングアップメニューは「4人組の基礎×4種類」。エリア内の選手は自由に動き回りながら、サーバーからのボールをインサイド、インステップ、ボレー、ヘディングなどで返球するというシンプルなトレーニングだ。

「最初はゆっくりでいいよ。しっかりボールをミートすることを心がけよう」(鈴木氏)

今回のトレーニングはクロスからの攻撃・フィニッシュにつなげることを目的に行うため、そのためのウォーミングアップになっている。

鈴木氏は受け手の選手に対し、「どこにボールがほしいのか。目や手、声、名前を使ってコミュニケーションをとろう。ボディランゲージで、どこにボールをほしいかを示そう」と声をかけていった。

続いては、パスを受けるときにスピードや方向を素早く変えることにトライ。試合中、サイドからのクロスに対して、相手のマークを外してボールを受ける動きである。さらにはキックの質にも言及し「ボールを蹴り返すのではなく、ミート(捕まえる)するイメージで蹴ろう」とアドバイスを送っていく。

選手たちはヘディングに取り組むのだが、タイミングが合わない、ミートができない場面が頻出した。

そこで鈴木氏は「ヘディングはしっかり当てて、相手の胸に向かって、強いボールを返そう。体の前方でヘディングするのではなく、ボールを引きつけて、強いインパクトでヘディングをしよう。出し手のボールの質も重要になるよ」と指導。地面に叩きつけるヘディングも実施することで、シュートへの意識を持たせていった。

ゴール前の局面で得点が入りやすい場所は3ヶ所

ここからはクロスのトレーニングに入っていく。
2名の選手がゴール前に走り込み、クロスに反応し、シュートを打つ。鈴木氏は「ゴール前のどこでシュートを打つと、点が入りやすいかを理解してほしい。3ヶ所あるけど、どこだっけ?」と質問。選手たちは「ニア、ファー、ペナルティスポット」と答え、クロスの攻撃でのポジショニング、コース取りに意識を向けることを強調していた。

トレーニングでは選手のプレーを見ながら、コーチングをしていく。

「3ヶ所のうち、第一優先にニアをとろう。そうすると、GKがニアサイドの選手に対して反応する。試合中はDFもそこに対応するので、ニアサイドに一人が勢いよく入ってくると、ペナルティスポット、ファーサイドが空く。相手にとって嫌なところに入ろう」

走り込む味方に対してクロスを入れる選手には「中の選手に合わせるのではなく、インステップで打ち込むぐらい、強くて速いボールを入れよう」とアイデアを提示する。

鈴木氏のアドバイスによって、クロスボールの質やゴール前に入る選手の動きがトレーニングの中でも徐々に変わっていく。これはぜひ動画で確認してほしい部分だ。

ゴール前はスペースを空けておくなど、有利な状況を作り出す

トレーニングは「2対1のサイド攻撃」「2対2のサイド攻撃」と、より試合に近づいていく。ここでは「出し手と受け手のコミュニケーション」「入りすぎない」「止まる」「シュートを打つために前のスペースを空ける」「ゴールの幅でシュートを打つ」などのキーワードが出るとともに、鈴木氏が動き方を実演している。

サッカーコーチによっては、サッカーの経験がなく動き方がいまいち理解できていない人もいるかもしれないが、そう言った人には特に参考にしてもらいたい。

「2対2のサイド攻撃」は、最初は「選手の入れ替わり(プレーする位置の変更)はなし」というルールなので、攻撃側は自分に対応する選手を外し、シュートを打つ時間、スペースを確保することがトレーニングのポイントになる。

鈴木氏は攻撃の選手に対し、「どうやってボールを受ける?」と問いかけると、選手からは「動きの緩急」と答えが返ってくる。さらには「サイド攻撃はなぜ点が入りやすい?」「DFにとって嫌なところは?」と投げかけ「守備の選手の背後を突く」「守備側の視野から消えることが大事」など、駆け引きをしながらプレーすることに働きかけていく。

「守備側の視野の中で動いても、簡単に守られてしまう。そこで相手の背後をとることや、先に動いて相手を食いつかせて、本来行きたい方向に進むといった動きで、有利な状況を作り出そう。最終的に行きたい場所を空けておくことも大事。シュートを打つスペースに早く入りすぎると、相手に対応されるので、タイミングを考えて動こう」

最後は「攻撃側の入れ替わりOK」というルールに変え、DFが守りづらい状況を作るとともに、クリアしづらい場所にクロスボールを入れることにも言及していった。

鈴木氏はトレーニング後、次のように話した。

「ただクロスを上げてシュート練習をするのではなく、いつ、どこにクロスを上げると点を決めやすいかを理解することが大切です。子どもの判断を奪うのではなく、点を取りやすい場所はどこなのか。優先順位はどこなのかという判断基準を与えることで、クロスの出し手と受け手の判断スピードが上がります」

サッカーにおいて、サイドから攻撃の起点を作ることができれば、得点の可能性も高くなる。自チームのサイド攻撃を強化したいコーチにとっては参考になるトレーニングだといえるだろう。

後編では「サイドの守備の仕方」をテーマに、トレーニングを実演する。

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【講師】鈴木宏輝/
宮城県でFC FRESCA、ベガルタ仙台スクールを指導。2004年から14年、JACPA東京Jrユースを指導し、2019年よりJACPA東京FCU-11のコーチを担当。2020年からは、U-12のコーチを担当している。Fリーグ フウガドールすみだの前身、「BOTSWANA」でもプレーし、フットサルにも精通している。JFA公認A級コーチジェネラル、フットサルC級コーチライセンスを持つ。

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