テクニック
2021年10月22日
ロンドを使ったチームでボールを失わない技術を高める練習法/狭い局面を打開するオフェンストレーニング
福岡県福岡市城南区を拠点に活動する、カメリアFC。県内でも強豪として知られ、過去に井手口陽介(ガンバ大阪)や藤本一輝(大分トリニータ)などが在籍したクラブでもある。
ボール保持を重視し、技術を高めるトレーニングを行う同クラブでU-12の監督を務める飯田孝輔氏に、「狭い局面の打開に必要な『ドリブル突破』と『ボールの置所』」をテーマにトレーニングを実施してもらった。後編では、「味方同士の連動性を高めるポゼッショントレーニング」を紹介したい。(文・鈴木智之)
(※COACH UNITED 2021年7月19日掲載記事より転載)
ボールの保持に大切なのが「相手の選手同士の間をうまく使うこと」
動画後編、最初のトレーニングは5対2。いわゆる「ロンド(鳥かご)」の要領で、攻撃側5人に対し、守備側は2人。攻撃側は奪われないようにボールを回し、保持することが目的だ。
ここでのポイントは「攻撃側の選手の1人は、ピッチの中央部に立つ」こと。攻撃側は守備側の周囲にボールを回して保持するだけでなく、中の選手を使い、ボールを保持することを意識づけしていく。
飯田監督は、今回のトレーニングのテーマでもある「ボールの置所」についてコーチング。攻撃側のパスの出し手の選手に対しては「守備の選手から、遠い方の足にボールを出そう」と話し、パスを受ける選手には「相手から遠い方の足でボールを止めよう」とアドバイスしていく。
パスコースを複数持てるところにボールを置くことを意識しながらも「アイデアがあれば、それにこだわらなくてもいい」とクリエイティブなプレーも推奨していた。
守備の強度にもこだわり「長い時間やらないから、100の力でやろう」と声をかける姿が印象的だった。
プレーが進むにつれて、攻撃の選手に対し、「守備側の外ばかりでボールを回すのではなく、守備の選手の間にパスを通すイメージを持とう。(攻撃側の)真ん中にいる選手の入り方が大事になるよ」と声をかける。そして真ん中の選手を使い、ダイレクトパスが成功するといった良いプレーには「ナイスアイデア!」と褒めていた。
また、パスの受け手に対して、ポジショニングに言及。守備の選手がどの位置、どの角度にいるかを見て、攻撃側の選手が立つ位置を変えることで、「1本のパスで相手をはがすことができる」とアドバイス。この様子はぜひ動画で確認してほしい。
狭い局面では「相手をずらしてパスを出す」など選択肢を自ら作り出す
続いては「3対3+2フリーマン」。ここでも、「パスは相手から遠い方の足に出すこと」「受け手はボールを止める位置にこだわること」を徹底。さらには、ピッチの真ん中に入った選手はパスを受けて出したあと、スペースに動き、空いたスペースに別の選手が入る部分にもコーチングし、周囲を見ながら連動してプレーする意識にアプローチしていく。
飯田監督は「(真ん中の空いたスペースに)誰が入ってくる?」「1つのプレーにこだわろう」「ボールを止める位置」など、シンクロしながら声をかけていた。
しばらくして「ピッチの真ん中でパスを受ける選手はダイレクトでパスを出し、周囲の選手はフリータッチ」というルールに変更。そうすることで、真ん中へ選手が次々に入り、ボールを動かすように仕向けていく。
「ドリブルだけ、パスだけしかできない位置にボールを置くのではなく、相手をずらしてパスを出すなど、選択肢を自ら作り出そう」といったコーチングを通じて、時間の経過とともに選手たちの動きがスムーズになっていく様子は、動画で確認してほしい。
最後は6対6+GK。実戦形式で「今日やったことを意識しよう。ボールを止める位置にこだわり、その中でアイデアを出すこと。プレーの優先順位はゴールを目指すこと。守備は激しくやろう」と話し、3-1-2のフォーメーションで実施。
選手たちは積極的にプレーし、シュートを狙う場面が続出した。ゴールを目指して果敢にプレーする様子は、動画で確認いただければと思う。
攻撃をテーマに行った、今回のトレーニング。技術や判断に加えて、コンビネーションに働きかけるコーチングは、非常に参考になるだろう。最後に、飯田監督のメッセージを紹介したい。
「動画の後編では、より狭い局面でボールの置所、選手の関わりを高めるトレーニングを行いました。今回紹介したトレーニングは、狭い局面で選手にプレーのアイデアを出させる狙いがあり、選手の技術、アイデア、発想の上達が期待できます。ぜひ日々のトレーニングで行ってみてください」
【講師】飯田孝輔/
1996年10月31日生まれ。福岡県北九州市出身。
小倉南FCジュニア U-12~小倉南FC U-15~豊国学園サッカー部でプレー。2015年よりカメリアFCで指導者として活動を始め、2018年に「九州ジュニアU-11福岡県大会」でチームの優勝に貢献し、2020年よりU-12の監督に就任。
また、2019年よりチームでの活動に加え、サッカーで必要な技術である「止める」「蹴る」「運ぶ」をどう「判断」出来るかという点に特化した指導を行う「alimento escola(アリメントスクール)」を開校し、選手時代の経験と指導者としての経験を踏まえた指導を行っている。