テクニック
2022年8月12日
守る時に一番警戒すべきは「裏のスペース」。グループで狙いを統一してボールを奪う守備のトレーニング
2022年1月に開催された「チビリンピック2021 JA全農杯 全国小学生選抜サッカー選手権決勝大会」で優勝を飾った、オオタFC(岡山県)。Jクラブのジュニアユースに進む選手を輩出するなど、育成に定評のあるクラブだ。
「サッカー指導者のためのオンラインセミナー『COACH UNITED ACADEMY』」では、統括へッドコーチを務める今井大悟氏による「プレスをかけるとき、かけないときの守備の使い分け」のトレーニング動画を配信中だ。動画後編のテーマは「グループでボールを奪う守備のトレーニング」。複数人が連動し、ボールを奪うための練習法を紹介したい。(文:鈴木智之)
(※COACH UNITED 2022年5月2日掲載記事より転載)
マークする相手を見ながら、ボールサイドのスペースを埋める
後編最初のトレーニングは「3対3」。40m×28mのグリッド内で3対3を実施(オフサイドラインあり)。攻撃はゴールを目指し、守備はボールを奪ってサーバーに戻すか、ゲートにパスを通せば勝ちとなる。
守備のポイントは、自分のマークだけでなく、スペースも意識して3人で守ること。加えて、相手に背後を取らせないことを考えてプレーすることが重要だ。
今井コーチが重視したのが、「ボールの移動中に素早く寄せること」。コーチのパスでプレーが始まるのだが、ボールの移動中を見逃さず、高強度でボール保持者にアタックすることを強調。さらにはプレーを止めて「自分のマークを見ながら、スペースの守備もすること」に言及していく。
「守備側はまず、ボールの移動中にファーストDFを決めよう。ボール保持者にプレッシャーを掛けると当時に、相手と近い距離でマークすると背後を取られやすくなるので、マークする相手を見ながら、ボールサイドのスペースを埋めるポジションをとること。そして、自分がマークする相手にボールが出そうになったら、ボールの移動中に素早く寄せよう」
続いては、背後のスペースにボールを通された場面でプレーをストップし、「一番やられたくないのは背後のスペース。ボール保持者が蹴る準備をしたら、バックステップを踏んで下がろう」と、具体的なアクションを指導していく。
ほかにも、「3人が連動して、相手をどちらに追い込むか。声があるとわかりやすい」と話し、「相手と近い距離でマークにつくと、スペースが空くので、そこにパスを通されてしまう。そうならないために、守備の選手同士の間を閉めよう。守備側が間を締めると、相手選手は外に流れるので、グラウンダーのパスになる。そうなると、移動中に寄せることができる」とアドバイス。
大切なのは、「それぞれが1対1をするのではなく、自分がマークする相手を見ながら、味方が突破されそうなときに、カバーできる距離にいること」(今井コーチ)。このあたりの考え方、コーチングの内容は動画を見て、全容を確認してほしい。
数的不利な状況からどう数的同数に持っていくのかを考える
2つ目のトレーニングは「3対2(ショートカウンター)」。グリッドサイズは変わらず、守備がドリブルをし、コーン前にボールを置いてスタート。攻撃側はそのボールを拾い、ゴールを目指す。守備は数的不利の状況で守ることにトライしていく。
今井コーチは「守備側は数的不利なので、ファーストDFに誰が行くかが大事。声をかけあって、ファーストDFを決めよう」と話し、「ボール保持者にプレッシャーをかけながら、外側の相手のパスコースを切ろう。そうすることで、ボール保持者と1対1の状況になる。このように、3対2の不利な状況から、どうすれば2対2になるかを考えよう」と、駆け引きしながら守備をすることを説いていた。
その結果、守備側の動きが良くなり、ボールを奪う場面が出始める。そこですかさず、うまくいかない攻撃側にアプローチし、「まず狙いたいのは、前の(ゴールに近いところにいる)選手だよね」とアドバイス。
「早めに前線の選手にパスをして2対1を作ったり、守備側の背後のスペースを狙うなどして、速くゴールに向かおう。守備が良くなってきているので、相手の守備が間に合わない攻撃をしよう。それに対して、守備はどうやって守るのか。そのやりあいだよ」
加えて、セカンドDFに対しては、「声を出して、味方を動かすこと」を強調。背後の選手が声を出して、どちらに相手を追い込むのかをはっきりさせることで、2対2に持ち込むことができる。
攻撃、守備ともに的確なコーチングをすることで、選手たちの良いプレーが随所に出てくる。動きが適切なので、どのようにプレーすれば良いかの参考になるだろう。
トレーニング後、今井コーチは視聴者に向けて、次のようなメッセージを送り、動画を締めくくった。
「後編では、グループの守備をトレーニングしました。守備の基本となる約束事を確認しながら、選手が主体となり、どうやってボールを奪うかなど、狙いを持たせることが目的です。状況設定やルールで条件づけたトレーニングの中で、工夫しながらゴールを守ることや、駆け引きを促すことで『守備のトレーニングも楽しい』と思ってもらうことが、上達の近道だと思います。ぜひ参考にしてみてください」
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【講師】今井大悟/
福山大学を卒業後、 佐川急便大阪SC、カターレ富山、ブラウブリッツ秋田でプレー。2015年からOBであるオオタFCのU-11、12年代のトップチームのコーチを務め、2022年度からは、統括へッドコーチに就任。
「チビリンピック2021 JA全農杯 全国小学生選抜サッカー選手権決勝大会」では、クラブ初となる優勝に貢献した。