テクニック
2022年10月14日
日本屈指のGKコーチが伝授する相手の攻撃チャンスを防ぐセービングとポジショニング
Jクラブや高体連、ジュニアからトップまで数多くのGKを指導してきた、GKコーチの澤村公康氏。近年はシュミット・ダニエル選手や大迫敬介選手を指導し、その能力を開花させてきた。日本屈指のGKコーチである澤村氏による「U-12年代のGKに必要な基本技術と実戦的なシュートストップ」のトレーニング。後編は「ローリングダウンとシュートストップ」をテーマに実践してもらった。(文・鈴木智之)
(※COACH UNITED 2021年10月18日掲載記事より転載)
視線を離すとボールの行方を見失うので、つかんだボールは見続ける
ローリングダウンとは、ボールをキャッチして倒れこむプレーのことで、GK動作の基礎とも言える。後編最初のトレーニングは、ローリングダウンのウォーミングアップ。両手でボールを胸の前に抱え込み、左右に倒れ込む動きにチャレンジしていく。
澤村コーチからは「試合の時と同じように、横ではなく、斜め前に倒れよう」とアドバイスが送られていた。ほかにも「起き上がるときは両足の反動を使い、素早く起き上がる」とポイントを提示。ジュニア年代の選手に必要な、コーディネーションにもアプローチしていた。
続いては「キャッチ→倒れる(ローリングダウン)→チェストパスで相手に返す」という動作を連続で実施。コーチがGKに投げたボールに対し、キャッチして返球する動作を繰り返す。
澤村コーチは「つかんだボールを見続けよう。視線を離すと、ボールの行方がわからなくなるよ。ボールの行方がわかっていれば、起き上がってすぐに、ボールの方向に構えることができる」と話し、「倒れるときは、地面に近い、太ももの横を素早く地面につけると倒れやすい」など、体の動かし方にも言及していた。
ローリングダウンは、両足が地面についた状態で、体を倒しながらボールを捕りに行く技術だ。そこで澤村コーチは「キャッチするときは、なぜボールを前でつかんだ方がいいと思う?」と質問し、子どもたちに考えさせていく。
そこで子どもたちからは「前で触ると、こぼれても対応できる」「後ろでボールを弾いたら、ゴールに入ってしまう」などの答えが返ってくる。このように、動作と理論を同時に教え、質問形式でポイントを理解させながら進めていくのが、澤村コーチの指導の特徴だ。
ほかにも、ローリングダウンは「素早く動く」ことがポイントなので、動き出す方向の足を早く地面につけること。そして、ボール側の足で体を支えて倒れ込むなど、正しい動作の流れを教え込んでいく。
ここからはボールを使わず、倒れた状態から素早く起き上がる動きを繰り返していった。
澤村コーチは子どもたちの様子を見て、「起き上がるとき、手はグーがいい? それとも手のひらを使うのがいい?」と質問し、「グーだと、ねんざしてしまうかもしれない。手のひらで地面を押して起き上がろう」とアドバイスしていた。
GKがどこに立つと、相手はシュートが打ちやすいかを理解する
続いてはシュートストップ。正面付近から2本連続で飛んでくるシュートに対し、ゴールの中心に入って対応する動きにトライしていく。
ここでは「GKがどこに立つと、相手はシュートが打ちやすいか」をレクチャー。「上にも左右にも対応できる位置に立つ」というポイントを、アシスタントコーチを例に提示していく。
澤村コーチは「シュートを打つ選手が、サイドから中に動いたときはPKマークを見て、自分がどこに立っているかを確認しよう。そして、相手が中から外に動いたときは、ニアポストを見て、立ち位置を確認しよう」とわかりやすく伝えていく。
以降はシュートのバリエーションを増やし、立ち位置を調整しながらシュートに対応する動きを繰り返していった。
トレーニングを通じて、澤村コーチの聞き取りやすい声の出し方、滑舌の良さ、はつらつとしてエネルギーあふれるジェスチャー、子どもたちを褒める声のトーンなどは、非常に参考になる。ぜひ、明日からの練習で意識していただければと思う。
最後に澤村コーチは次のように話し、トレーニングを締めくくった。
「今回のトレーニングでは、GKのメインワークである、声や会話によるコミュニケーション。プレーをスタートさせるときに必要な開始姿勢、立ち位置、体の向き。シュートストップでは、GK役、FW役になり、シュートを打つ方、打たれる方の両方から学んでもらいました。この年代で必要とされる開始姿勢、基本技術、コミュニケーションについて、今回のトレーニングを参考にしていただければうれしいです」
動画を通じて、GKトレーニングをどのようにして行うのか。どの視点でアドバイスをするかといった部分を、わかりやすく理解することができる。ぜひ一度ご覧になり、トレーニングに役立ててほしい。
【講師】澤村公康/
1971年、東京都大田区出身。三菱養和サッカークラブ、仙台大学を経て、指導の道に入る。熊本県立大津高校、浦和レッズアカデミー、JFAナショナルトレセンコーチ、川崎フロンターレアカデミー、浜松開誠館中学校・高等学校、ロアッソ熊本を経て、2019年シーズンはサンフレッチェ広島のGKコーチとして大迫敬介の才能を開花させた。2020年より拠点を東京に移し、GKスクールを立ち上げる他、大学チームの指導に当たっている。