テクニック
2022年11月 4日
日本代表選手も輩出!関西の強豪街クラブが実践するボールを失わない足元の技術と思考を高めるトレーニング
関西屈指の育成クラブであり、創設46年目を迎える西宮サッカースクール。日本代表で活躍する堂安律(フライブルク)が在籍していたクラブとしても知られている。テクニックとセンスを磨き、魅力的なサッカー選手の育成を目指しており、低学年のうちは、ドリブルとリフティングの練習に重点を置いている。
その成果が高学年になると表れ、常に関西の上位を争っている。そこで今回はU-10のコーチを務める杉田勝彦氏に、「ゲームの中でドリブルを使ってボールを支配する練習法」を教えてもらった。「どんな基礎練習をすれば、選手が伸びるのだろう?」と悩む指導者にとって、大きなヒントになる動画を紹介したい。(文・鈴木智之)
(※COACH UNITED 2022年7月11日掲載記事より転載)
リフティングは、ボールの空気圧を低くし、柔らかめにしたものを使う
前編のテーマは「ボールを失わないためのリフティングとドリブルの基本トレーニング」。杉田勝彦コーチは「このトレーニングで大切なのは、ボールを失わない技術と思考を身につけさせること。そこを意識してコーチングしていきます」と話し、グラウンドに入って行った。
撮影日はあいにくの雨。しかし子どもたちは高い集中力を持って、リフティングやドリブルに取り組んでいく。サッカーに向かう姿勢、コーチの雰囲気づくりも、良い選手を輩出する秘訣のひとつだろう。
「リフティングはボールを自分のものにするためのトレーニングです。低学年のときは、あえてボールの空気圧を低くし、柔らかめにしています。その方が、柔らかいタッチを覚えやすいからです」
最初のトレーニングは「基礎のリフティング(8種)」。インステップ、もも、アウト、インサイド、胸、頭、チョンチョン、アウトアウトの順番でリフティングをしていく。
インステップリフティングのポイントは、ボールを同じ高さに上げ続けること。杉田コーチは「力を抜いて、リラックスしてやろう」「なるべくコーンの近くで、動き回らないようにやろう」と声をかけていく。
雨風が吹く、難しいコンディションだが、選手たちはリズムよくボールをコントロールしていく。
「雨が、きみたちが上手いか下手かを教えてくれるよ。やりにくい状況でもやれるのが基礎。うまくなりたかったら、人よりボールに触ろう」
基礎のリフティングをする際、利き足でリフティングをする理由は、「ステップとボールの置き場所を自然と覚えるため」だと言う。
また、「チョンチョンリフティングは片足立ちのボディバランス、軸足を鍛えることを目的で行います。軸足を鍛えることで、キックやドリブルのボディバランスの安定につながります」と狙いを説明していった。
スピードを落とさないリフティングでボールタッチの質を高める
次は「応用リフティング(3種)」。まずはダッシュリフティングから。リフティングをしながら、スピードを上げて進んでいくのだが、このときにボールを高く蹴り上げるのではなく、低く、細かく触ることで、スピードアップにつなげていく。
「雨だからこそ、良い練習ができるよ。ボールを落としたら、ミスをリカバリーしながら速くリフティングをしよう」
2つ目のジグザグリフティングは、リフティングしながら3タッチ目を目安に、斜め前に方向を変えて進んでいく。
杉田コーチは「スピードを落とさないように。ゆっくりは誰でもできるよ。ボールを落としても大丈夫なように触っていこう」とアドバイスし、「ボールを持てる選手は、前後左右のバランス、ステップ、軸、体幹が優秀です。このリフティング練習で、動きの中でのボールタッチの質、ボディバランスを磨いています」と、トレーニングの目的を説明する。
3つ目は、ボールを高く上げながらリフティング。3タッチ目でボールを高く上げ、キックの蹴った足が、方向変換の一歩目になるように意識していく。
ドリブルは、利き足の前にボールがある状態で行うと顔が上がる
続いては、ドリブルの基礎練習。20mの距離を小指でボールを触りながらドリブルし、マーカに到達したらアウトサイドターンをする。
「ボールを触ろうとすると、スピードが落ちる。自分が走る先にボールがあるイメージで、利き足の前にボールがある状態でドリブルしよう。ボールを触ろうとしないこと。利き足の前にボールがあると、顔が上がるよ」
次に、足の裏を使ったドリブルにトライ。ポイントは「おへそを行きたい方向に向けること」。おへそを真横に向けると遅くなるので、体を進行方向に向けて、足の裏を使ってボールに触り、ドリブルをしていく。
以降はアウトサイド2回、インサイド2回など、ボールタッチのバリエーションを変化させていった。
最後は30mの距離でフリードリブル。見えない相手をイメージしながらドリブルを行うのがポイントだ。フリードリブルは体力的に負荷がかかるが、「ドリブルをすることで、体力もつく」と声をかけ、選手たちをもり立てていった。
前編のトレーニングはここまで。杉田コーチはデモンストレーションを交えながら、細かなステップ、ボールタッチを説明しているのでわかりやすい動画になっている。選手たちのレベルも高いので、どのような動きでドリブルをすればいいかが理解しやすいだろう。
多数のJユースや強豪校に選手を輩出する西宮SSのトレーニングから「個を磨く」ためのエッセンスを感じ取ってほしい。すぐに取り組める練習ばかりなので、チャレンジしやすいはずだ。
【講師】杉田勝彦/
1973年12月24日生まれ。西宮SS出身。小学校時代は西宮SSでプレー。市立西宮高校を卒業後、社会人リーグでプレーしながら実父が創立した西宮SSで指導者となった。地元の西宮浜セレステでも6年間指導を経験し、30歳代後半で再び西宮SSコーチに就任。岩谷篤人氏の元で、世界に通用する魅力的な選手の育成について、指導の奥深さを学びながら西宮 SSの指導の現場で活かす。全国のサッカー指導者とも繋がり、魅力的なサッカーを日本全国に広げるというような活動もしている。