テクニック
2023年1月26日
2つのJクラブと大阪の強豪チームに負けなし。全国大会で福島県王者が感じた勝ち抜くための課題と手応え
2022年末に行われた『JFA 全日本U-12サッカー選手権大会』において、2つのJクラブ、大阪の強豪と同じグループに入りながら、ラウンド16まであと一歩に迫ったバンディッツいわき。グループリーグでは、ボールを保持して攻撃を組み立てるとともに、個の能力を活かした守備を披露。攻守にバランスのとれたチームだった。
チームを率いるのが、かつてバンディッツいわきのトップチームで監督を務めた、荒川謙一監督だ。幅広い年代で指導経験が豊富な荒川氏に、U-12年代の指導で大切にしていることを聞いた。(取材・文:鈴木智之/写真:渡邉健雄)
(グループA、1次ラウンド第2節。アバンティ茨木(青)vs バンディッツいわき(白))
強豪が揃うグループで1勝2分。しかし惜しくもラウンド16には進めず
『JFA 全日本U-12サッカー選手権大会』グループリーグ第2戦。バンディッツいわきは大阪の強豪・アバンティ茨木と対戦。個の力に優れた相手に対して引かず、先制されながらも同点に持ち込み、勝ち点1を手にした。
荒川謙一監督はグループリーグ初戦、2戦目を振り返り、「初戦は相手のヴァンフォーレ甲府さんをリスペクトしすぎて、受け身になってしまいました。(注・結果は1対1の引き分け)。アバンティさんとの試合は僅差の勝負になりましたが、勝ち切れたゲームかなと思います」と悔しさをのぞかせた。
(バンディッツいわきの10番、松本春馬)
チームに目を移すと、指導経験豊富な荒川監督も高く評価する、10番の松本春馬が攻守に奮闘。荒川監督の「中盤で使いたい選手ですが、全国大会の強度を考えると、後ろに下げざるをえない」という判断で最終ラインに君臨。相手の攻撃を個の力で封じ込め、鋭いパスでチャンスを演出した。
大会を通して、松本を中心に最終ラインからボールを繋ぎ、前進していく姿が印象的だった。荒川監督も「そこは意識的にやりました」と話す。
「チームのコンセプトとしては、ボールを保持しながら、主導権を握りたいと思っています。その中で相手を観て、ポジショニングで優位性を持ちながら、攻撃ができればと考えています」
普段は技術練習の他にも、基礎的な体力や運動能力の向上にも力を入れている
COACH UNITED ACADEMYの動画では、荒川監督に「ドリブルとパスを使い分けるボールの置き所」のトレーニングを実践してもらったが、アバンティ戦ではサイドからのドリブル突破で相手を崩し、前線の選手がプルアウェイでマークを外して抜け出すなど「狙いどおりの形」(荒川監督)が見られた。
荒川監督はジュニア年代の指導で大切にしていることを、次のように話す。
「やっぱり、平気でボールを持てる選手になってほしいです。足元の技術がしっかりしていないと、上の年代につながっていかないんですよね。私はトップチームの監督を務めていましたが、技術のない選手は年代が上がるにつれて、サッカーを辞めていってしまうんです」
(アバンティ茨木戦後、インタビューを受ける荒川監督)
大人のカテゴリーの指導を経て「個人の技術や戦術、グループ戦術は、下の年代からやらないといけない」と感じた荒川監督。その考えもあり、ジュニアの指導に力を注いでいる。
ジュニアのトレーニングでは「サッカーしかやっていないことが問題のひとつ」と感じており、基礎的な体力や運動能力の向上にも力を入れている。
「私らが子どもの頃は、野球をやるのが当たり前で、バスケットボールもよくやっていました。そういう経験を通じて、空間認知を身につけるから、サッカーをしたときにヘディングの落下地点にスッと入ることができるんです」
高学年になるとキックの飛距離が出てくるため、ヘディングをする機会も増える。そこで「足元の技術ばかりトレーニングしていても、良いサッカー選手にはならない」と実感しているという。
「ヘディングができない、ボールを怖がる子もいます。そうならないためにも、サッカー以外のスポーツや運動を経験させることが大切だと考えています。うちのクラブでは、時間に余裕があるときは、ソフトボールやテニスボールを使ってキャッチボールをしたりと、いろんな運動を取り入れています」
子どもたちの成長を考え、多様なアプローチで指導にあたる荒川監督。全国大会での手応えについて尋ねると、次のような答えが返ってきた。
「去年はもうちょっとのところ(注・グループ2位)だったので、今年こそはと思って乗り込んできましたが、またしても課題を突きつけられました。全国でのプレーを基準に宿題を出されたと思って、継続して頑張りたいです」
全国大会では、2年連続で強豪Jクラブと同居するグループに入りながら、粘りを見せたバンディッツいわき。これからもジュニア年代で大切なことを突き詰め、実直に邁進していく。