テクニック
2023年1月27日
激戦区・東京都を制して全国大会に出場。JACPA東京FCが大切にする個の能力の育成と保護者との関係性
2022年末に行われた「JFA 全日本U-12サッカー選手権大会」に、東京代表として出場したJACPA東京FC。グループリーグ突破はならなかったが、攻撃的なスタイルで3試合で7ゴールを奪った。
6対0で大勝したモンテディオ山形庄内の試合後、今年度のU-12を担当する出町真コーチに話を聞いた。(取材・文:鈴木智之/写真:渡邉健雄)
(グループL、1次ラウンド第1節。モンテディオ山形庄内(青)vs JACPA東京FC(黄色))
個の力に優れた子たちがコンビネーションを生み出す形を理想に
JACPA東京は平日はスクールとして、週末はチームとして活動している。スクールに通いながら、週末は別のクラブでプレーするなど、様々な関わりをする選手がいることもあり、出町コーチは「小学4年生から、極論を伝えています」と話す。
「ドリブルのときは、相手にボールを触らせない。パス、シュートは相手に当てない。その上でボールを外に出さなければ、相手ゴール前まで行くことができます。これなら、選手がチームの活動から離れたとしても、個人で意識することができます」
サッカーは集団スポーツだが、選手個々のチームへの関わり方が多様なため、出町コーチは「グループ戦術という言葉は使わず、あくまで個人にアプローチをして、その個人が合わさってコンビネーションになるという考え方です」と述べる。
「個の能力が足りないから、グループ戦術に頼ることはやりたくないと思っています。足りない個を補うためのグループではなく、個の力に優れた子たちがコンビネーションを生み出す形が理想です」
出町コーチは「正直、当たり前のことしか教えていません」と謙遜するが、サッカーの当たり前とは原理原則のことであり、大人でも子どもでも大切なことである。
「守備の当たり前は、ロングボールは地面に落とさないこと、流さないこと。その1プレーが、ゲームの流れを変えてしまうこともあります。守備は周囲との関係の中で行い、ボールを奪ったら、繋ぐ、持つ、仕掛ける。
この当たり前を成立させるためには、技術も判断も必要です。ボールを奪ってから、味方に繋ぐ、持つ、仕掛けるまでの時間は短い方がいいので、ゴールに直結する"ダイレクトプレー"にはこだわっています」
「保護者もひとつの大きな家族として進んでいくクラブです」(出町コーチ)
JACPAからはJクラブを始め、強豪ジュニアユースに進む選手も多い。上のカテゴリーから評価される選手について、出町コーチは2つのポイントをあげる。それが「魅力のある選手」と「学ぶ力のある選手」だ。
「Jクラブの人たちは、魅力ある選手を探していますし、学ぶ力がある選手も評価されやすい傾向にあります。現時点の能力だけでなく、こちらが言ったことをどれだけ吸収して、学んで伸びていくことができるか。そこが大切だと思います」
(モンテディオ山形ジュニア庄内戦後、インタビューを受ける出町コーチ)
Jクラブなどで、選手を評価する立場の人は、小学6年生の時点ではそこまで能力が高くなくても、伸びしろを踏まえて、中学3年生の時点でどうなりそうかも見ているという。
「それもあって、小学生の時点で教わる、学ぶ、身につける。この3つをしっかり持てる選手にしたいなと思っています」
学ぶ姿勢、考える習慣は、サッカーの中だけで身につくわけではない。家での過ごし方、親の関わりも重要だ。そこにアプローチするために、「コーチのお願いを選手と保護者に聞いてもらう『家族会議』の場を、年に1回設けてもらっています」と言う。
「JACPAは選手、スタッフ、保護者がひとつの大きな家族となって進んでいくクラブだと思っています。ときには厳しい言葉をかけることもありますが、一緒に進んできてくれたのが、結果にもつながっているのかなと思います」
JACPAの他のコーチに話を聞いても「保護者が協力してくれている」という言葉は、頻繁に聞くことができる。出町コーチは言う。
「お母さんたちは、JACPAをひとつのコミュニティとして楽しんでくれていると思います。グラウンドに来て、お母さん同士で話をしている傍ら、僕らはグラウンドで子どもたちと向き合っているという形です。お父さんはコーチとの距離がもう少し近いというか、サッカーの話をすることもあります」
出町コーチは「お母さんが、グラウンドに来るのを楽しんでくれたら、子どもも楽しいと思うんです」と笑顔を見せる。
重要なのは、オンザピッチとオフザピッチの取り組みとバランスだ。JACPAの子どもたちは全国大会で臆することなく、伸び伸びとプレーしていたが、彼らの強さの秘密を垣間見たような気がした。