テクニック
2023年4月10日
全国大会3位の街クラブが実践!1対1の突破とパスを併用して目の前のDFを攻略するトレーニング
『JFA 第46回全日本U-12サッカー選手権大会』でベスト4に輝いた、滋賀県の街クラブA.Z.R。相手と駆け引きしながら、ボールを保持して攻めるスタイルを掲げるチームだ。
今回は、A.Z.R(アッズーロ)を全国レベルに引き上げた、古荘隆徳監督に「1対1とパスを併用して、目の前のDFを攻略するトレーニング」を実践してもらった。
相手の逆を突くことは、攻撃時においてとても重要だが、何を重視して指導するのか。その極意を知りたい指導者は、ぜひ動画を参考にしてほしい。(文・鈴木智之)
(※COACH UNITED 2023年1月23日掲載記事より転載)
対峙するDFにはドリブルだけではなく、パスも併用しながら攻略する
A.Z.R U-12の監督を務める古荘氏は「ボールを持った時の判断を重視して、指導にあたっている」と話す。加えて、「相手の逆を突く駆け引き」を指導する中でこだわっているのが、「1対1とパスを併用して、目の前の相手を攻略すること」だという。
「1対1はただ仕掛けるのではなく、目の前の相手と駆け引きをしながら、相手の逆を突いて突破し、次のプレーに繋げることがポイントです。実際の試合では、1対1の局面だけとは限りません。そのためドリブルで抜くだけではなく、パスも併用しながら、相手を攻略することがポイントになります」
最初のトレーニングは「1対1」。
攻撃側と守備側が向き合った状態でスタートし、守備側はボールから1mほど離れたところに立ってスタンバイする。守備側は、攻撃側がボールに触れるまで、奪いに行ってはいけないというルールだ。
ひとつのゴールに対して、複数のペアが同時に1対1を行うので、ゴール前では人が入り乱れる。そのため、自分が対戦する相手だけでなく、周囲の状況も気にしながらプレーすることが求められる。
古荘監督は「相手の重心をずらして、揺さぶりながら突破していこう」「1対1だけど、周りを見るのが大事。試合では周りにも人がいるからね」と話し、トレーニングがスタートした。
ここでは、子どもたちのプレーを見ながら「相手の重心を揺さぶるためには、どういう手段がある?」「相手を観察して、どうやって騙す?」などの声をかけるとともに、ボールを置く位置を工夫することや、立ち方やフェイントなどを駆使して、突破するように導いていく。
数的優位のトレーニングで、相手の逆を突く体の向きなどを確認する
続いては「1対1+1サーバー」。最初のトレーニングは、目の前の相手をドリブルで突破するというシンプルな設定だったが、ここではサーバーを置くことで、2対1の状況が生まれる。
ルールとしては、7m四方のグリッドで1対1を行い、攻撃側はライン通過を目指し、守備側はボールを奪ったら勝ちとなる。攻撃側はサーバーを使いながら突破を目指す。
サーバーは攻撃側から見て、右前方の位置で動かずにプレーする。サーバーのボールタッチは2タッチ以内というルールだ。
2対1の状況なので、攻撃側はサーバーへ、体の向きを作ってパスを出すと見せかけてドリブルをするなど、単純に1対1をするのではなく、駆け引きをして相手の逆を突くことがポイントだ。
「(プレー開始の)最初のパスを受けるときに、ファーストタッチで左右にコントロールしたり、ボールの置きどころが大事になる。実際の試合では、いろんなところに相手がいる。試合を想定しながら、相手を剥がしてゴールに向かっていく意識を持とう」
ほかにも「ボールを置く位置を変えると、状況が変わるぞ」など、意図を持ってボールをコントロールすることで、優位な状況を作り出すことや、相手の逆をとりやすくなることなどを伝えていった。
ドリブル突破NGの状況で相手と駆け引きする力を身に付ける
前編最後のトレーニングは「2対1」。グリッド設定は同じで、攻撃はパスを7本連続で繋ぐか、ライン通過で勝ちとなる。
また「攻撃側は縦へのドリブル突破は禁止。必ずワンツーで相手をかわさなくてはいけない(※ワンツーだけでの突破が難しければ、ドリブル突破も可の状況から始めてもよい)」というルールがあるので、目の前の相手(守備側)に対して、どのようにボールに食いつかせて、背後にできたスペースを使うかという駆け引きや狙いにアプローチできるトレーニングだ。
古荘監督は「守備側が食いついたところで、相手の背後をとっていこう」とアドバイス。さらには「体の向きがパス(の選択肢)だけになっている。それだと縦に行けない。どこかでアクションを起こすと、守備側が気にする。ボールに食いついたところでアクションを起こす。駆け引きしながらやろう」と、動作と駆け引きを一体化することの重要性を説いていた。
ほかにも「守備側は相手を観察して、ボールを奪いに行く」「攻撃側はドリブル禁止なので、パス交換している間に互いに近づいたり、離れたりして、守備側を食いつかせて、背後をとる」といった動作もレクチャーしているので、動画で確認してほしい。
前編の動画は以上で終了。後編では実戦形式を取り入れ、相手の逆を突く駆け引きを実行するためのトレーニングを実施していく。
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【講師】古荘隆徳/
東京農業大学を卒業後、甲賀クラブ(滋賀)、 アリーバ甲賀(滋賀選抜)、SR2008(滋賀選抜)でプレー。「選手が考え、判断することにより自立心を育て、将来プロで活躍する選手の育成に務めること」をモットーに2014年に設立されたA.Z.R(滋賀県)で設立当初からコーチを務める。2020年度よりトップチームの監督に就任し、チームを初の「JFA全日本U-12サッカー選手権大会」出場へと導くと、2022年には、同大会でチームを滋賀県勢最高となる3位に導いた。