テクニック

2023年8月21日

引いた相手を引き出すスペースの作り方とプレーの連動性。ゴールに迫るサイド、中央突破の実践トレーニング

2022年度の「第46回全日本U-12サッカー選手権大会」に、強豪Jクラブひしめく神奈川大会を制して出場し、ベスト8に進出したSCHフットボールクラブ。

COACH UNITED ACADEMYでは、長く育成年代で指導を務める樋口智哉監督による「グループで引いた相手を崩すサイド、中央突破のトレーニング 」をテーマにした動画を配信中だ。

後編のテーマは「実践の中でサイドと中央を攻略する練習法」。全国屈指の実力を誇るSCHは、どのようなトレーニングで選手の個と判断、コンビネーションを磨いているのだろうか?(文・鈴木智之)

(※COACH UNITED 2023年5月1日掲載記事より転載)

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常に縦を覗きながら、縦パスを狙う意識を持つ

後編のテーマは「実践の中でサイドと中央を攻略する練習法」。トレーニングは「4対4+2フリーマン+GK」を実施。縦30m×横29mのグリッドで行い、守備側は3-1の布陣でプレーする。

攻撃側はゴールを目指し、守備側はボールを奪ってコーチへパスをするか、ドリブルでラインを突破したら1点となる。

サイドにいるフリーマンは2タッチ制限。ペナルティエリア内はオフサイドありというルールだ。

樋口監督はトレーニング序盤、ゴールを狙ってシュートを打った選手に「ナイス、良い意識」と声をかける。「常に縦を覗きながら、縦のタイミングを作ろう」と、ゴールから逆算してプレーすることの重要性を説いていく。

「外側のフリーマンが幅を取ってくれているので、中央の選手はくさびを受けて、相手をどう引き出すか。直線的にゴールに向かおう」

ここでは、攻撃の選手に対して、どこの位置に降りるのか、どの角度を作るのかなど、ポジショニングや体の向きを細かく伝えていく。

「うまく連動しながらゴールに迫ろう。お互いに要求しながらやっていこう」「ボールの移動中に顔を合わせるよ」といった声かけを通じて、周囲と連動する中でポジションをとり、ボールを動かしてフィニッシュに持ち込む形を繰り返していく。

さらには「引いた相手をどう引き出すか」にも言及し、ボール保持者が優位になるように、周囲がスペースを作る動きをすることを始め、連動してプレーすることを強調していった。

相手の守備を外すのに有効なのが「斜めのランニング」

続いては「5対5+GK+サイドフリーマン」。縦32m×横50mのグリッドで実施し、ルールは1つ前のメニューと同様で行う。

樋口監督は「守備はコンパクト、攻撃側はパスコースを作るために、覗き込む動きをすること」と声をかけ、選手たちの様子を見て「外側のスペースはフリーマンしか使えない」というルールに変更。

その後、「フリーマンはペナルティエリアにスルーパスか、ファーストタッチで斜めに進入するのはOK」と、次々にルールを変えていく。選手たちのプレーを見て、起きて欲しい現象や強度、プレーの難易度を調整するため、臨機応変にルールを変えていく様子は、経験豊富な指導者ならではだ。

ここでは、ボールの動かし方で相手の守備を外す方法、スペースの活かし方を実演。「斜めのランニング」をキーポイントに、ゴール方向に連動して動くことを強調していた。

最後は「5対5+GK+1フリーマンのシュートゲーム」を実施。縦34m×横50mのグリッドで行い、オフサイドラインはあり。狙いとしては、フリーマンを使って数的優位を活かしながら、素早くシュートに持ち込む意識を高めていく。

樋口監督は「まずはゴール方向を目指そう」と話し、縦パスに対して、ボールを受けた選手がどうプレーすると、優位な状況でフィニッシュに持ち込めるかを実演。

アングルを変えてボールを動かすことで、コンビネーションが出やすくなるといった、プレー理解を深めるための要素にもアプローチしていった。

トレーニング終了後、樋口監督は「意図的に相手を動かすためにアイデアを共有し、サポートの質を高めながら、必要な技術の習得を目指してトレーニングを行っています」と、指導方針を説明した。

今回の動画を見ることで、神奈川トップレベルのチームが、普段どのようなトレーニングをしているのかがわかるとともに、個とグループを高めるためのトレーニングが収録されているので、ぜひ参考にしてほしい。

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【講師】樋口智哉/
2009年からSCHフットボールクラブで指導者を始め、現在はSCHフットボールクラブのジュニア統括兼U-12の監督を務める。横浜市泉区サッカー連盟の技術部長や、神奈川県トレセンU-12、横浜市トレセンU-11・12、泉区トレセンU-11・12統括などの指導歴を持つ。

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