テクニック
2024年1月17日
8年振りの全国大会出場でベスト16。大阪の強豪街クラブが拘る個性を最大限に引き出す選手との関わり方
2023年末に行われた、「第47回全日本U-12サッカー選手権大会」。育成年代の指導法を幅広く動画で紹介する「COACH UNITED ACADEMY」に出演経験のあるクラブ・指導者も多数出場した。
2023年度、各大会で存在感を放っていたのが、アイリスFC住吉(大阪)だ。夏の終わりに行われた『U-12ジュニアサッカーワールドチャレンジ』では、持ち味の攻撃力を発揮。
年末に行われた、全日本U-12サッカー選手権大会では、激戦区・大阪を制して参戦し、グループリーグ3試合で13得点と脅威の得点力を見せた。(取材・文:鈴木智之/写真:渡邉健雄)
(COACH UNITEDからの転載記事になります)
(グループF 第3節。アイリスFC住吉(白)vs 津田FC(青))
「状況によってドリブルで進入する部分は、練習の成果が出ました」(久保監督)
チームを牽引したのが、芝野椿也選手、芝野楓也選手の"芝野ツインズ"だ。グループリーグの津田FC(三重)戦では、背番号9の椿也選手が8ゴールをあげる大活躍。
(津田FC戦で8得点を決めたの9番、芝野椿也選手)
持ち味はドリブル突破からのシュートで、久保秀太郎監督は「ゴールに向かって、テクニックで相手をかわすこともできるし、パワーでも進んでいける」と太鼓判を押す。
背番号10をつける楓也選手も非常に能力が高く、久保監督は「全体を見て、考えながらプレーできる選手。ドリブルにしても、前進するときと時間を作るときの使い分けができる」と、全幅の信頼を寄せている。
(アイリスFC住吉の10番、芝野楓也選手)
COACH UNITED ACADEMYでは、久保監督に「ボールを運ぶ、仕掛けるスキルを習得するドリブルトレーニング」をテーマに実施してもらったが、津田FCとの試合については「個人で相手をはがせる場面が多く、ゴールに向かう中で、数的優位を作ることができていた」と評価した。
(大会中にインタビューを受ける久保監督)
「相手が寄ってこなければ、ドリブルで進入していくところは、トレーニングの成果として出せたと思います。後ろの選手であっても、前進できる場面があったら、どんどん入っていくイメージを持っています」
選手が望んでいることに対して『サポートする、関わる』
津田FC戦は、決勝トーナメント進出のために、多くの得点が必要だった。その意味でも「ドリブルで突破することが役立ったというか、すごく効果的だったなと思います」と語る。
この試合で8ゴールを決め、決勝トーナメント進出の立役者となった芝野椿也選手だが、1、2戦目ではシュート15本を放ちながら、1ゴールに終わっていた。
「彼は『大会得点王になりたい』と言っていて、1、2戦目に取れるチャンスがあったのになかなか取れなくて、フラストレーションが溜まっていました。この試合では1点取ったときに、『椿也の目標なんだった?この大会、これでいいんか』と声をかけました。彼の心に火をつけて、もっと点を取ってもらいたいなと思ったので」
久保監督の狙いは的中。椿也選手は、立て続けにゴールネットを揺らした。指揮官も「1点取り始めて、どんどん乗ってきて、彼個人としてもチームとしても良い方に行った」と笑みを浮かべた。
アイリスFC住吉は個の成長にフォーカスしているが、「僕らは『自分がこの選手を育てた』とかはあんまり思っていないんですよ」と話す。
「僕は、選手が望んでいることに対して『サポートする、関わる』という言葉を使うようにしています。『俺が育てたんだ』とかって言うのは、ちょっとサブいというか(笑)。彼らが望んで努力した結果、育っていくのだと思っています」
さらに、こう続ける。
「9番も10番も、双子ですけど特徴は少し違っていて。9番であれば点を取ることが好きなので、そこを伸ばしてあげたいし、パスが好きな選手であれば、そこの特徴を伸ばすサポートをする。選手の個性にもよるので、そこは大切にしています」
アイリスFC住吉は、中島大嘉選手(藤枝MYFC)や菊井悠介選手(松本山雅FC)などのJリーガーを輩出している。彼らに続く選手は現れるのか。今後の飛躍に、期待が高まる。