考える力

2011年2月15日

【第2回】監督に聞く-旋風を巻き起こした久御山高校「パスにこだわるサッカー哲学」

第89回全国高校サッカー選手権大会で準優勝を果たした久御山高校。彼らが見せた『ボールポゼッション』を重視したサッカーは、各方面から高い評価を得ました。

久御山のポゼッションサッカーを体現するために大切なのが、ボールを保持し、相手に渡さないことです。マイボールを簡単に奪われてしまっていては、ポゼッションサッカーはできません。松本悟監督は『久御山スタイル』を具現化するための秘訣について、こう言っています。

「ボール回しの時に、すぐにボールをはたくことを考える選手が多いのですが、その前に、パスをもらう人が自分でパスコースを作ることが大事なんです。そこから逆算すると、パスコースを作った上でボールを受けることを考えて、パスコースがない場合は、味方がパスコースを作るまでボールをキープする。サッカーは同じ人数でやるスポーツなので、『動いたもの勝ち』のところがあるんです。それは、スペインリーグ等を見て参考にしています。ポゼッションサッカーをするためには、そういう力がいるんです」

ボールをつなぐために必要なのは、出し手の意思と受け手の意思がシンクロすることです。どこにパスを出したい、どこでパスを受けたい。両者の思惑が一致すると、パスが通ります。

「パスの場合でも、キックの質は全然問題ではなくて、大事なのは『どこに出すのか』なんですね。そのためにポイントになるのが、相手の動きを見ること。それは選手が嫌がるぐらい、徹底してやりますね。(笑)。だけど、今年の3年生はそれが好きなんですよ。一日中、ボール回しをやっているような奴らで。だからこそ、ここまで来ることができたんだと思う」

久御山スタイルを体現するために、松本監督は選手に「相手の動きを見る」ことを求めると言います。

「相手の動きを見ることは、よほどキープ力がないとできません。キープ力があれば2人、3人にボールを取りに来られても、持ちこたえて味方にパスをすることができる。その駆け引きのできる選手を育てて、もっとうまくしていきたい」

相手を見て、パスを出す。それを繰り返しながら相手ゴールに向かうのが久御山のサッカーです。これはフィジカルやスピードがなければできないサッカーではありません。身体能力がそれほど高くなくても、練習を繰り返してイメージを共有することで、完成形に近づいていきます。個と組織が融合した久御山のサッカーは、多くのチームにとって手本になるスタイルだと言えるのではないでしょうか。

Text//Tomoyuki Suzuki
Photo//Takashi Hirama

←第1回へ戻る| |第3回へ進む→

<<『監督に聞く』シリーズ最初の記事へ

1

関連する連載記事

関連記事一覧へ

関連記事

関連記事一覧へ