考える力
2011年7月 8日
バルセロナ流、サッカーがうまくなる考え方―『知のサッカー』特別対談Part1
鈴木「私は"教育"という言葉の意味を考えたときに"しつけ"という言葉がしっくりきたんです。彼らの中に"サッカーの常識"があって、そこから外れたことに対して指導をする。それを"教育"といっていたんじゃないかと」
川島「そうですね。だから、"教育"という言葉とは、少しニュアンスが異なるのではないかと思います。我々が知っている教育のように、「教える」というような事前指示の声掛けは無かった気がします。ジョアンはトレーニングの間に、"考える"という言葉を何度もいっていましたよね。"状況を見なさい"、"考えなさい"と。
それはどういうことかというと、『あそこに行けば魚が捕まえられるよ』と、答えを教えるのではなく、『魚が捕まえられそうな場所を探したほうがいいよ』という、『魚をとるためにどうすればいいか?』を教えていたように感じます。
それをサッカーに置き換ると、うまくなるための方法ではなく、うまくなるための"考え方"の部分を教えているのかなと。その意味では、教育的なところもあるんですよね」
■指導者は常に状況を把握して、すばやく声をかけないといけないので
絶えず頭を回転させる必要がある
鈴木「DVDにも収録されていますが、ジョアンはトレーニング中、一つひとつのプレーに対して、「落ち着け」「いいぞ」などの言葉から、「その場面ではどうする?」などの問いかけまで、絶えず選手に声をかけていました。そのようなアプローチについては、どのように感じましたか?」
川島「それこそが教育の手法の一つなのではないかと思います。練習の組み立ても、ゴールがないポゼッションから、ゴールを一つにしたり、二つにしたりと、目的をはっきりさせていましたよね。そこで選手たちに『考えよう』としきりにいっていました。選手はジョアンの問いかけをどんどん耳に入れて、プレーをしていました。
状況を見て、コーチの指示を聞きながらプレーすることは、考える力を伸ばす可能性があるのではないかと思います。ジョアンは『今のプレーはよかった』『こうしてごらん』と、その都度いっていましたよね。いいかえると、指導者は常に状況を把握して、すばやく声をかけないといけないので、絶えず頭を回転させる必要があります。選手たちは指導者がいうことを受け止めて、実行に移していくわけですからね」