考える力
2013年10月22日
誰かに認めてもらう事は、選手の成長のために必要不可欠 兵庫FC
これまで2回に渡って、兵庫FCの取り組みについて、紹介してきましたが、最後となる今回は練習のメニューを紹介します。
■兵庫FCが大事にする3つのトレーニング
兵庫FCの練習メニューは大きく分けて、
1. SAQトレーニング2. ターン3. ミニゲーム
の3つです。SAQは「スピード、アジリティ(敏捷性)、クイックネス」の略。かかとをつけないスキップで様々な動きを行うことでランニングフォームを自然と変えて、サッカーで重要となる動きの速さを身につけます。永浜代表は「このトレーニングをしたことで、学校のかけっこで一番になれた子供も多い」と話します。ターンはボールに触るドリブルなどを行うことで運動をするために重要な交感神経を刺激します。そして、最後に行うミニゲームでは、兵庫FCで重要視される個人戦術を学びます。
「うちの個人戦術とは、攻撃で言えば“スペースを作る”こと。ただ走るのではなく、パスを貰うために動く。動いて、フリーになったらパスが来る。動いて、相手が来たらスペースが出来る。ボールを持った選手は誰がスペースにいるのかを見る。見ている選手はスペースが出来たら、どう走りこむかを考えます。学年が上がってきたら、スペースを作る動きにドリブルでの仕掛けを交える。ドリブルで仕掛ければ、DFラインの全員が動くからスペースが出来る。スペースを作るためにドリブルをすると相手が動きを読みにくくなるのです」と永浜代表は説明します。
「感覚だけでいっぱい練習をしても、誰かがちょっとプレスをかけて、動きを止められただけで全てがガタガタになるので、繰り返して身につけることが重要です。うちの場合、ほとんど作戦はなく、個人戦術しかありません。チーム戦術やグループ戦術は試合当日に、『今日はDFラインを高く保って』とか、『プレス早めにかけろよ』と伝える位で、後は状況を見ながら選手たちが練習でイメージを共有した個人戦術を披露するだけです」
こうした明確な練習法があるからこそ、多くの選手が育ち、総入れ替えを可能にする兵庫FCの強さに繋がっているのではないでしょうか?
■成長のために重要なのは選手たちの自信
練習や試合と共に、兵庫FCが成長のために大事にしているのが選手たちの“自信”です。永浜代表は「ちょっとでも、たくさんの選手が自信を持ってくれると嬉しい。たくさんの選手が試合に出ることは自信に繋がるので、勝ち負けを抜きにして、いい事だと思う」と話します。
「いくら大人が褒めても、『お世辞、言うてるわ』と子供たちは分かると思います。下手な子、頑張ってない子を褒めても、本人には嘘にしか聴こえない。試合に勝つだけじゃなく、入らなくても良いシュートを打つ、入らなくてもいいプレーするとかきちっと皆が評価出来る結果を残して、認めてあげることが大事。試合に出して、気付いてもらって、自信をつけてもらう事が結果に繋がっていく。そして、『あいつが出来たんなら、俺も出来る』という他の選手の向上心にも繋がっていくし、効果はどんどん広がっていく。誰かに認められるというのは成長のために非常に重要です」
「自信というのは勝たないとダメ。勝つのが一番いいですよね」としつつも、「“勝て、勝て”と追い詰められると、子供も大人も自分の実力を発揮出来ない。勝てたのはたまたま結果が出て良かったねという位」と話すように、勝利ばかり追い求めないことも大事な要素です。
「うちの場合、たくさんの子供が試合に出場するという以前からやってきた事を、最近は周囲からチームの特徴として言われる機会も増えてきて、やり続けなければならない状況になっている。目先の勝ち負けで評価されないし、コーチも幸せ、試合に出られるし子供も幸せ。皆が幸せですよね。目先の評価ではなく、長い目で若いコーチも選手を見てあげられると楽しく出来る。それさえしていれば、負けてもいいという指導者では困りますけど、みんなが出場して、それで勝てる策を考えれば、指導者の力量も上がると思うのです」
兵庫FCが行う“より多くの選手が出場する”という取り組みは選手、指導者、保護者の全てが幸せになれる方法なのかもしれません。
兵庫FC//
1985年創立。全日本少年サッカー大会の兵庫県大会でも2009年から3連覇するなど、これまで7度の出場を誇り、関西を代表するクラブの一つとして知られる。これまでMF梶川諒太(現・湘南)など多くのJリーガーも輩出している。詳しくはコチラ
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