考える力
2014年8月 6日
ブラジルサッカーの原点。親から子へ伝わるサッカーへの愛情
「ばいばい! クリスティアーノ・ロナウド!」
ワールドカップのグループリーグ第3戦。ブラジリアのエスタジオ・ナシオナルで6月27日、グループGの「ポルトガル対ガーナ」が開催されました。私はその試合を観に行ったのですが、試合終了後、陽気にそう叫ぶブラジル人を何度も目撃しました。
空港に向かうバスで目の前に座るブラジル人男性に話を聞くところによると「クリスティアーノ・ロナウド? ダメダメ。彼はあまりにもわがまま」とのことでした。似たようなセリフは、ペルー人やコロンビア人、ブラジルの子どもたちからも聞こえてきました。
もちろん、ライバルであるポルトガルの所属選手ということもあります。特にブラジル人は、自国が優勝することしか考えていないので、どの国の有望選手に対しても冒頭のような態度をとることが多いです。
しかし、それを抜きにしてもブラジル人のクリスティアーノ・ロナウドに対する態度が興味深かったので、それをお伝えしたいと思います。
取材・文/遠藤由次郎 Photo by paulisson miura
■良いプレーとは、何か
この試合で「ヴーーーーー!」と怒号のような大ブーイングが起きていたのは、紛れもなくクリスティアーノ・ロナウドが“諦めたとき”でした。
ドリブル突破を試み、失敗する場面では大きなブーイングはありませんでした。しかし、ルーズボールが目の前にあるにもかかわらず、天を仰ぐだけでボールを追いかけようとしない彼の態度に対しては、スタンドを埋め尽くしたブラジル人たちから大批判が発せられたのです。
また、「ナイジェリア対ボスニア・ヘルツェゴビナ」や「ガーナ対アメリカ」そして日本の3試合などの他のワールドカップの試合を見ていても感じたことです。すなわちブラジル人たちは、良いプレー、一所懸命なプレー、正々堂々と戦う姿勢に対してとても公平公正な目を持っている、と。
はじめはどちらもチームにも肩入れしていなかった彼らも、良いプレーが続くチームを応援するようになるということをスタジアムで何度も体感しました。