考える力

2014年9月25日

あなたはレフェリーを積極的に楽しめていますか?

■ミスジャッジは忘れることが正しいのか

先日、ラグビーのレフェリーセミナーでメンタルトレーニングの話があり、講師として来ていたニュージーランドの方は「忘れるというのが一番いい」と言っていました。忘れてポジティブになりましょうと。ミスを忘れて、不安を取り除き、次の判定をしっかりできるようにしましょうというものです。
 
ただ、忘れるだけではなくて、フィードバックも必要です。ミスが起きた。もしかすると、それは角度が悪かったからかもしれない。では、選手だったらそういう時にどうします?おそらく、試合中であれば、コーチがハーフタイムに「このようなミスが続いたので、後半はこうしましょう」と言うでしょう。試合中に、選手自らが修正することもあります。我々も同じです。忘れるという言い方をするとネガティブですが、自分がなぜミスをしたのかをポジティブに捉えて、次はこういうポジショニングをしたらいいのではないかと試合中に変えていきましょう。「ミスがあって、周囲に文句を言われた」ではなく、「ミスを教えてくれた」と捉えることも出来る。そのように考えるのは難しいですけど、引きずっても良い判定にはなりません。
 
―松崎さんの「ポジティブ・レフェリング」というタイトルを最初に見た時に、「レフェリーをスポーツとして捉えよう」という風にも感じました。昔のイメージからか、レフェリーには固い印象があるかもしれないけど、実際はスポーツで、スポーツならばミスがあるのは当然というような。
 
その考えもおもしろいと思います。僕はレフェリーもサッカーの一部だと思っています。レフェリーは、競技者から、「Refer」、「(試合を)委ねられている」。選手たちのプレーを競技規則に当てはめて判定する。そのジャッジですが、裁判所のように何回も見直すのではなくて、瞬間で決めないといけない。そうなると当然、ミスはあります。
 
―レフェリーは、凄く難しいですよね。この本には、選手ともどんどんコミュニケーションをとろうと書かれています。以前の日本では、レフェリーはあまり選手と話すなと言われていましたが、今はコミュニケーションをとる時代になっていますね。
 
そうですね。ぼくが審判委員長の時はイングランドのレフェリーやレフェリーインストラクターを招聘しました。イングランドのレフェリーはコミュニケーション能力が高い。ハワード・ウェブ(FIFAワールドカップ2010年南アフリカ大会の決勝を務めたレフェリー)は喋りすぎな所もありますけど(笑)その良し悪しは別として、選手も試合の一部ですから、コミュニケーションをとって、スムーズに進めるというのはとても大切なことだと思います。
 
後編に続く>>
 
松崎康弘
公益財団法人日本サッカー協会(JFA)常務理事。FリーグCOO(最高執行責任者)。JFA前審判委員長(2006~12年)。JFAサッカーS級審判インストラクター。1954年千葉県生まれ。高校時代にサッカーを始め、82年に4級審判員登録。90年に仕事で英国に赴任し、現地でも審判活動を行なう。92年にイングランドの1級審判員の資格を取得。帰国後の93年にJFAの1級審判員に登録される。95年から02年までJリーグの主審として活動し、95年から99年までは国際サッカー連盟(FIFA)の国際副審もつとめた。フットサルでは、「サロンフットボール」時代の84年から審判員としても活動。全日本フットサル選手権大会決勝や第1回アジアサッカー連盟(AFC)フットサル選手権大会決勝などで笛を吹く。FIFAのフットサル審判インストラクターとしてFIFAフットサルワールドカップなどで審判指導も行なっている。

 

【参考文献】
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