考える力

2014年10月16日

トム・バイヤー流!サッカー少年との正しい関わり方

前回記事『サッカー指導の伝道師が提言!2歳からできる室内練習法とは』では、家の中で取り組むトレーニングの重要性を教えてくれたトム・バイヤー。今回は、サッカー少年との正しい関わり方について語ってもらいました。(聞き手/上野道彦)
 
 
 

■結果だけを褒める日本。もっとプロセスを褒めてほしい

――親がコーチと相反することを言うと、子どもは混乱してしまいます。たとえば、親は「ゴール前では相手が多いから早くシュートを打て」と言うのに対し、コーチは「ゴール前は冷静に落ち着いてゴールを狙え」と言った場合、子どもは「早く打つのがいいの?落ち着いて打つのがいいの?」と迷ってしまうのではないでしょうか。親という立場で子どものサッカーにどう関わるのがよいのでしょうか?
 
育成年代にいいコーチに出会えるかどうかは重要な問題です。しかし、親の立場からもサポートできることはあります。たとえば子どもがコーチに注意を受けていたとします。そうしたら親が褒めてあげましょう。ひとつ注意したら10個褒めてあげる、そのくらいのバランスでいいと思います。日本で気になるのは、子どもたちの努力を褒める場面が少ないこと。試合で点を決めたら褒めることは多いですが、毎日しっかり練習している努力を褒める場面がありません。日本の親には技術や結果だけでなく、努力を褒めてほしいです。
 
――それはサッカー育成だけでなく日本の教育全般にいえることだと思います。特にヨーロッパやアメリカは、結果ではなくプロセスを重視しますよね。
 
どちらが正しいということはないのですが、ヨーロッパやアメリカはスポーツと教育がリンクしています。人格形成、ライフスキル、協調性、忍耐力を学ぶ場。それが欧米のスポーツの立ち位置です。日本のスポーツは、結果主義が強すぎる印象を受けます。高校サッカーの強豪校は365日サッカーをしています。日本のスポーツは子どもたちの規律や行動を正すということに重きをおいていると思います。日本で自分の奥さん(日本人)と子どもを見ていて分かったことですが、規律を家庭ではあまり教えないのです。それは、学校の先生やスポーツチームのコーチが教えるものと、思い込んでいるからです。
 
――確かにそうですね。練習時間の問題はどうですか。日本人はオン・オフの切り替えがうまくないと言われています。たとえばFCバルセロナの練習時間は1日90分間です。
 
そのポイントは非常に大事です。日本のスポーツは規律に重きを置いているため、上の人に言われれば、4、5時間でも練習します。知り合いの小学校では、朝から練習にいって昼過ぎまで帰ってこない、夕方からの練習だと夜半まで帰ってこないことがあると聞きました。それだと1日が潰れてしまいます。そういう練習は「そこで何を得たいのか、どういった結果が得られるのか」が非常に分かりづらい。効率よく練習をオーガナイズするコーチは、カテゴリーに関わらず90分で濃縮した練習をしています。
 
――練習時間に関する考え方ひとつでも随分と違いますね。
 
どのチームにもうまい子どもはいます。多くの場合、そういう子どもはピッチの練習だけではなく、家庭でもよく親とサッカーの話をしたり、公園で親とサッカーをする機会を持っています。フットボール文化が根付く、ブラジル、スペイン(フランス)、ウルグアイなどは生まれた時から、お父さん、お兄ちゃん、従兄弟がサッカーをしています。コーチだけでなく周囲にいるさまざまな人がサッカーを教えてくれます。日本はそういう人が少ない。そういった環境をつくっていかなければ、日本サッカーの向上は難しいのではないでしょうか。

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