考える力

2014年12月 4日

柴崎岳の恩師が語る! 考える力は自己分析で高まる

2014年も暮れ、高校サッカー選手権まで一か月を切りました。今年も名門・青森山田高校を率いるは黒田剛監督。日本代表の若き司令塔と期待される柴崎岳をはじめ、幾人ものJリーガーを育ててきた知将に、サカイクのテーマでもある『考える力』の育て方を語ってもらいました。(取材・文・写真 安藤隆人)
 
選手権青森県予選決勝、八戸学院野辺地西高を6‐0で下した青森山田高校の黒田剛監督
 
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■サッカーで言う『考える力』の中身

サッカーは頭を使うスポーツ。
 
よくこう言われるが、頭脳無くしてよいプレーは望めない、これは、近年のサッカーを見ていると強く感じる。戦術が高度化し、よりスペースと時間が限られるピッチ上で、自らの考えを持ち、状況に応じたプレーを瞬時にくり出す。これは『考える力』がないとできない。『考える力』はいくつもの要素が合わさったものであって、決して単体として考えられるものではない。考えるための“情報を収集する力”。持っている情報の中から適したものを抽出する“選択する力”、選択したものを“実行する力”。そして、それらを導き出す“スピード”。これらすべてが合わさって、初めてサッカーで言う『考える力』となる。
 
いま、日本サッカー界で「『考える力』の高い選手は?」と聞かれたら、筆者は「柴崎岳」と即答するだろう。日本代表の若き司令塔として注目を集める彼は、中学、高校時代からまるでピッチ全体を上から見ているように、ピッチ上のスペースや相手、味方の状況を瞬時に見極め、正確無比のパスをバンバン通していた。ドリブルもうまく、さらにセカンドボールにもだれよりも早く反応し、正確なボールコントロールでマイボールにしていた。恐ろしいほど冷静で、相手に取って脅威となるプレーをする。いまはプロになり、その感覚はさらに研ぎすまされている。
 
「岳は昔から、自分自身をよく知っていた。それは良いところも、悪いところも。大人ですら自分のウイークポイントから目を背けることがあるのに、彼は一切そのようなことはしませんでした。逆に、自身をよりパーフェクトに近づけようと努力を重ねていました」。
 
彼を青森山田中学、高校と6年間指導し、現在のプレーの土台を築いた青森山田高校サッカー部・黒田剛監督は、彼の『考える力』についてこう語った。
 

■考える力を身につけるための必須条件とは

考える力を身に付けるための必須条件、それは自分自身をよく知ること。いま、自分はなにができて、なにができないのか。できないにしても、どこまでできないのか。その上で自分はなにを身につけ伸ばすべきかを考える。自分自身を理解しない限り、自分に合った解決策は見えてこない。
 
「みんな人間ですから、自己分析をしているようで自分に都合がいいように解釈していることがあると思う。だからこそ、他人が見ている評価と自己分析が同じであったら良いことだと思います。大概、自己評価の方が他人の評価を上回る中で、人の指摘に耳を傾けながら、妥当と思うところは素直に受け入れて努力する。それをやっていたのが岳で、そう言う選手はスポーツ選手としてだけでなく、人間としてもすごく伸びると思います」(黒田監督)。
 
正確な自己評価と、的確な意見かどうかを聞き分ける判断力、それを受け入れる素直さ。当時から柴崎岳にはそれがあった。筆者も彼を中2のときから取材をしているが、違う環境に身を置いたときの適応力からも、彼の人間性と考える力の高さは図抜けていた。
 
彼は中2の段階で、すでに青森山田高校サッカー部の一員として、公式戦に出ていた。初めて高校の大会に出るときに取材したが、彼は練習から周囲のレベルを把握しながらえ、自分にできることを考えていた。決して無理なプレーをするのではなく、いまの自分にやれることを精一杯やる。そして、やれないことは日々の練習でカバーする。そこに劣等感はなく、しっかりと自分の現状を受け止めてプレーする彼の姿は印象的だった。
 
中3になると、彼は高校レベルでも当たり前のようにプレーするようになった。高校に入るとすぐに中軸となり、高3では周囲とのレベルの差が開き、ひとり別次元のプレーを見せるようになった。そして彼は自分の考える力をさらに進化させていた。普通は周囲よりうまくなったり、レベルが頭ひとつ抜けてしまうと、横柄になったり、プレーを流したり、わがままなプレーが増えたりするが、彼は違った。
 
「自分がどんなにうまくなっていっても、つねに自分にないものを取り入れる作業をしていた。たとえば岳は、泥臭いプレーやイエローカードをもらうプレーはしないイメージがあると思うのですが、高3になるとチームが勝つために、周りに檄を飛ばすために必要だからそれをするようになりましたし、長い距離を走れるようにもなりました。よりハングリーさは出てきた」。
 
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