考える力
2015年1月15日
日本代表好調の要因は攻守の切り替えにあり【アジアカップ分析】
パレスチナに4‐0と快勝し、好スタートを切った日本代表。スペイン・バルセロナを中心に世界中で活躍する指導者集団「サッカーサービス」のポール・デウロンデルコーチは日本代表のプレーをどう見たのか。UEFA・A級ライセンス保持者の分析をお届けする。(取材・文 鈴木智之)
■岡崎慎司は、なぜゴールを量産できるのか
まずは攻撃について、ポールコーチが「ムイ ビエン(素晴らしい)」と評価したのが、ワントップに入った岡崎慎司だ。
「日本はこの試合、サイドのスペースと中央のスペースを突く攻撃が機能していました。相手(パレスチナ)のクオリティが低かったこともありますが、ワントップに入った岡崎選手が前線で動くことで、周囲の選手も連動したプレーができていました。彼はFWに必要な“スペースをつくり、使う”動きを高いレベルで実行できる選手です。相手ディフェンスラインの裏のスペースへ抜け出すことで味方がプレーするスペースをつくり、本田や香川、乾、遠藤といった攻撃的な選手にプレーの選択肢を与えていました」
岡崎の特長は足を止めず、ボールを呼びこむ動きができること。そして、常にゴールを狙っていることにある。縦に速く抜け出す動きや、中央に下がり味方のためにパスコースをつくる動き、緩急をつけてサイドのスペースに抜けていく動きなど、つねに意図を持って動いている。
「岡崎選手は、つねにセカンドボールが来ることを想定し、対応できるように準備をしています。2点目のヘディングがまさにその形です。絶えずボールの動きを予測して、足を止めずに準備し続けています。その意味では、レアル・マドリーでプレーしていたラウールのような選手です。彼はFWに必要な動きを理解しているので、相手のDFからするととても嫌な選手でしょう」
日本代表は4-3-3のシステムを使い、パレスチナは4-4-2を採用していた。日本は本田と乾がワイドにポジションをとり、さらにその外側を両サイドバックの長友、酒井がオーバーラップすることで、パレスチナの両サイドハーフは彼らについていかざるを得なくなる。そうすると、ピッチ中央のエリアにはふたりのセンターハーフしかいないため、日本は中盤で数的優位をつくることに成功していた。さらに岡崎が相手のふたりのセンターバックを引きつける動きをすることで、中央、外と効率よくボールを動かすことができ、前半は多くのチャンスをつくり出すことに成功していた。