考える力

2015年1月15日

日本代表好調の要因は攻守の切り替えにあり【アジアカップ分析】

 

■アギーレが監督になり、戦術的な守備が向上

大会の初戦という状況を差し引いても、日本の攻撃は機能していたと言えるだろう。では、守備はどうだろうか。パレスチナの攻撃のクオリティが低かったことは否めないが、それでも「日本の守備力は向上している」とポールコーチは分析する。
 
「まず良かったのは攻守の切り替えの速さ。ボールを失ったときに2人、3人と相手を囲いこむ守備ができていました。これはおそらく、アギーレ監督が相当意識付けをしたのでしょう。今後は、パレスチナよりも速く、正確にパス回しを行うチームにどこまでできるか。そこに注目したいです」
 
ポールコーチは、ボールホルダーを囲い込む守備のポイントを挙げる。
 
「どのパスを出させないか、優先順位をつけた中でプレスを掛けることです。なかでも気をつけたいのが、グラウンダーのパスに対するディフェンスです。厳しく、強い意志を持って奪いに行く必要があります。パレスチナ戦ではピッチのサイドでプレスを掛ける際に、選手の動きにばらつきがありました。組織づくりは改善できると思います」
 
さらに、ポールコーチは「今後、強い相手と試合をしたときに、注意すべきポイントがある」と指摘する。それがサイドのスペースのケアだ。
 
「長友、酒井の両サイドバックがオーバーラップした状態でボールを失うと、サイドバックがいなくなったスペースを突かれます。パレスチナ戦では酒井選手の攻め上がってできたスペースを、長谷部選手が埋めるプレーがありました。これはとても良い動きでした。ディフェンスラインの選手が飛び出したとき、スペースを埋めるために中盤の選手が下りてケアをする。これは、ブラジルW杯のころの日本代表にはあまりなかったプレーでした。長谷部選手個人の判断なのか、チーム戦術なのかはわかりませんが、背後のスペースをケアすることは、失点を防ぐためにとても重要なことです。以前、バルセロナが苦しんでいたころは、ダニエウ・アウベスがオーバーラップしてできたスペースを、ブスケツが埋めきれていないことがありました」
 
ポールコーチはさらに続ける。
 
「森重選手、吉田選手の守備意識にも、改善が見られました。彼らは自分の背後、ゴール正面のスペースをつねに気にして守備をしていました。このスペースを相手に突かれると、格段に失点の確率が高くなります。一度、森重選手がディフェンスラインから飛び出した場面がありましたが、このときは相手の攻撃をファウルで止めました。これは戦術的に良い判断です。CBがラインをブレイクして飛び出したときは、相手のボールを奪いきるか、タッチラインの外に蹴り出すか、ファウルで止めるかの3つしかありません。CBがラインから出て、相手の攻撃の流れを切れないことがあってはならないのです」
 
日本代表の監督がアギーレになって、「守備の意識が格段に向上した印象を受けるが……」とたずねると、ポールコーチは大きくうなずいた。
 
「アギーレはリーガ・エスパニョーラの監督時代、リーグの中位、あるいは下位のクラブを指揮していました。リーガで生き残るためには、守備のオーガナイズをしっかりする必要があります。日本代表においても、世界で勝つためにまずは守備を構築しているのでしょう。アギーレは就任会見の時に『アグレッシブで闘争心のあるチームにしたい』と言っていました。その言葉から考えると、ボールを奪うプレー、攻守の切り替えの速さは、選手たちに強く要求しているでしょう。ブラジルW杯のときの日本代表は、攻守の切り替えのインテンシティが低く、プレーのメリハリがあまり感じられませんでした。アジアカップでは、その部分で改善の兆しが見えます」
 
大勝に終わったパレスチナ戦。攻撃に目が行きがちだが、守備の成熟なくしてチャンピオンになることはできない。続く、イラク、ヨルダンと、パレスチナよりも手強い相手と戦うことになる。次戦以降、日本代表の守備に注目して見るのも面白いだろう。
 

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