考える力

2015年1月19日

バイエルンも実践!CBの選手に伝えたい"ボールを運ぶプレー"

イラクに1対0で勝利し、準々決勝進出に近づいた日本代表。スペイン・バルセロナを中心に世界中で活躍する指導者集団『サッカーサービス』のポール・デウロンデルコーチは日本代表のプレーをどう見たのか。UEFA・A級ライセンス保持者の分析をお届けする。
 

テクニックがありパスの質も高い森重真人選手に求められるものとは(写真:松岡健三郎)
 
まずは、レジェンドスタジアムの動画で試合を振り返ってみよう>>
 

■ビルドアップを効果的に攻撃につなげる方法

イラク戦の攻撃について、まずは『攻撃時のビルドアップ』から話をしたいと思います。アギーレ監督のコンセプトとして、「ビルドアップ時は2人のセンターバック(CB)とアンカーでボールを前進させる」というものがあります。イラク戦では森重真人選手と吉田麻也選手がCB、アンカーは長谷部選手がつとめていました。もちろん、コンセプトを守ること自体は良いのですが、相手の状況に応じて、判断を変えるプレーがあっても良いと感じました。
 
例をあげます。イラクは日本がボールを保持している時、4-4-1-1のシステムで陣形を整えていました。最前線はワントップとなり、ひとりしかいません。この状態で日本は森重、吉田、長谷部と3人の選手がいました。3対1の数的優位の状況です。ひとりに対してふたりいれば、数的優位を作ることができます。日本の選手は相手の状況によって、何人の選手でビルドアップをするかを判断すべきだったと思います。当然のことながら、最終ラインに3人いると、中盤で数的優位をつくることが難しくなります。なぜなら、イラクはトップ下ひとりと4人のMFで中盤を固めているからです。最終ラインで2対1の数的優位をつくることができれば、長谷部選手のポジショニングがもう少し高い位置になり、中盤の人数を確保することができます。
 
そしてもうひとつ、ビルドアップを効果的に攻撃につなげるための方法があります。それが「CBがドリブルで前にボールを運ぶこと」です。森重、吉田選手がボールを持ったとき、イラクのFWがプレスをかけてこないのであれば、ドリブルで前進して相手の中盤を引きつける。相手が寄ってきたら、近くにいる長谷部選手、左であれば長友選手、右であれば酒井選手にパスを出す。このように相手のマーク、プレスをひとつずつはがしていくようなボールの動かし方をすると、効果的にビルドアップを攻撃につなげることができます。
 
これはポゼッションサッカーをするチームにとって、重要なコンセプトです。森重選手はテクニックもあり、パスの質も高いので、積極的に前にボールを運ぶプレーができる選手です。森重選手が相手を引き付ければ、長友選手がプレーするスペースが生まれます。この際、逆サイドのセンターバックである吉田選手、酒井選手はあまり上がらず、最終ラインを構築するプレーが必要ではありますが、トレーニングで十分に浸透させることのできる動きです。我々サッカーサービスが日本で行っているサッカースクールでは、小学生にこの動きを教えています。相手が来ないとき、どこまでドリブルで前進するか。ボールをいつまで持ち、どのタイミングで離すかといった部分は、U-13年代までに身につけておきたいコンセプトです。
 
ちなみに、CBがボールを持って数的優位を作るコンセプトは、グアルディオラがバイエルンの選手に教えこんでいるプレーでもあります。最終ラインでUの字を描くようにパスを回していても、それはポゼッションのためのボール保持であって、相手を脅かすようなプレーではありません。縦方向へのパスを通すことに加えて、CBがボールを運ぶことで、相手チームの選手は奪おうと寄ってきます。そこで、良いタイミングでボールを離すことができれば、相手ゴールに近い位置で数的優位をつくることができます。バイエルンではアンカーの位置にインテリジェンスに優れたラームを置き、センターバックが空けたスペースをケアする役目をするとともに、中盤でボールが動くコースを作るサポートも行っています。日本のアンカーは長谷部選手ですが、彼の能力であれば十分にできると思います。
 

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