考える力
2015年2月13日
短所を見つけたときは、長所も見つけてバランスを整えよう
まずは前回までの復習から。しつもんメンタルトレーナーの藤代さんは『サカイクワークショップ』で、子どもに質問するときに気をつけたい4つのポイントを教えてくれました。
【子どもが自ら考えるようになるしつもん4つのポイント】1.書き出してみる2.一人ひとり違う3.先入観を捨てる4.なにが問題なのかを知る
この4つのポイントを意識したうえで、実際に子どもと接する際に、どのようなしつもんを投げかけていけば良いのでしょうか。藤代さんに教えてもらいましょう。(取材・文 神誠 写真 田丸由美子)
■人間は欠けているところに目がいきがち
「解決したい課題、悩み、不安、また実現したいことを思い浮かべていただき、それらに取り組んでいる中で、何かうまくいっていることはありますか? どんな些細なことでも構いません。他の人と比べて考えることでもありませんので、ぜひうまくいっていることを探してお書きください」
うまくいっていることですか。そうですね、休みの日に息子と公園で遊ぶときに、私から勝負ごとを挑んで最初はわざと負けて、悔しいそぶりを見せながらも「次は負けないぞー」「パパは負けても頑張るぞー」と、あきらめない姿勢を演じていることでしょうか。様子をうかがいながらたまに息子を負かせて反応を見ますが、多少は受け入れられるようになっているかもしれません――。そんな"悩める父"の涙ぐましい努力に、グループのみなさんからは温かい拍手が(笑)。やがて、藤代さんがホワイトボードを指しながら話し始めます。
「ここに2つの円を書きました。子どもたちとワークするときにも必ず見てもらって質問するのですが、みなさんはどちらの円が気になりますか?」
「多くの子どもたちは『右の円』と答えます。『この欠けているところが気になる』と答えるわけです。このように僕たちは何も意識せずにいると、ついつい欠けているところに目が行ってしまいます。『うちの子は○○ができない』『なんで○○できないの?』という具合ですね。ところがそれが行きすぎると、本来はうまくいっているところまで見えなくなってしまいます。なので意識してバランスよく、自分や子どものうまくいってるところも探してあげていただきたいなと思います。
僕自身、サッカーコーチとして苦い思い出があります。最初に担当した小学校1,2年生は試合経験のない子どもたちが多く、試合をしても大差で負けていました。そのとき僕は子どもたちを並べて反省会をしていたわけです。『なんであのときシュートを打たなかったんだ』『なんであのときパス出さないの』『なんでもっと声出さないんだ』と。そうすると、サッカーを始めてまもない子どもたちはだんだんうつむきがちになり、涙を流す子も出てくる。次の日、スクールに来てくれなかった子もいました。
でも、10対0で負けた試合だって、うまくいったこともあるはずなんです。たとえば、前回の試合よりはたくさん声を出していたかもしれないし、たくさんシュートを打っていたかもしれない。目には見えないけれど、自分で考えて行動しようと思っていたかもしれない。でも僕は欠けて見えるところを見つけては、そこばかり指摘してしまいました。その結果、子どもたちのやる気や自信を奪ってしまったわけです。
もちろん10対0で負けた試合には課題もたくさんあります。そこを見つけて解決していくことも大切です。ですがそれと同時に、「うまくいったことはなにがあったかな?」と聞いてみると、子どもたちのやる気や自分を信じる力が継続し、次の試合にモチベ―ションを高く臨むことができます。僕たちは欠点を見つける方が得意なので、意識していいところを探してもらえたら嬉しいなと思います」