考える力
2015年3月 3日
サッカーの技術よりも子どもに伝えるべきたったひとつのこと
「スポーツを通し、しっかりとした人間性を育みたいです」。
こう話してくれたのは、NPO法人MIPスポーツ・プロジェクトの相沢雅晴さんです。相沢さんは現役時代、日本代表の主将として活躍したラガーマンで、高校のときにラグビーを始める以前は、ご自身も読売クラブ(現・東京ヴェルディ)の下部組織などでサッカーをプレーしてきました。
そんな相沢さんが理事・事務局長を務めるMIPスポーツ・プロジェクトは、M=モラル、I=インテリジェンス、P=フィジカルのバランスの取れた人間形成を行う、地域に根ざしたスポーツクラブを目指して2001年に設立されました。斎藤雅樹(野球・元東京読売巨人軍)さんや、中田久美(元バレーボール日本代表)さんなど、各競技のトップアスリートがその理念に共鳴し、それぞれの経験を生かすべくクラブ運営に携わっています。(取材・文 一色伸裕 写真 田丸由美子)
■ラグビーから学びたい2つの精神
相沢さんがプレーしてきたラグビーは体と体がぶつかり合う激しいスポーツですが、ラグビーの母国・英国では『紳士のスポーツ』とされ、心身ともに健全な人間を育てるための教育プログラムとして、小学生、中学生年代の子どもたちにプレーする機会を与える学校も少なくないようです。
「One for All , All for Oneの精神」:1人はみんなのため、みんなは1人のため。
「フェアプレーの精神」:レフリーを尊重し、正々堂々とプレー。勝っておごらず、負けて清く。
「ノーサイドの精神」:ラグビーでは試合終了をノーサイドといいます。試合を終えればどちらの側(サイド)も関係なく、互いに戦った仲間として相手と健闘を称え合います。
相沢さんはこれらラグビーの精神を、MIP・FCの子どもたちに熱意を持って教えています。
「子どもたちには何のためのルールかを考えさせ、その上でルールにはないモラルについて熟慮させ、それらを身に付けさせるようにしています。例えば、ラグビーでは地面に倒れている選手を土とみなし、相手、味方関係なく踏んでプレーすることが許されています。ですが、顔などを踏むようなプレーはまず起こりません。そこは選手たちが『やってはいけないこと』とモラルとして理解し、そのような行為を避けるように考えてプレーしているからです。技術があって上手ければそれでいいということはなく、うちのチームには強く言っています。モラルの考え方はラグビーというスポーツのいいところであり、サッカーをプレーする子どもたちにも伝えるようにしています」
このようなスポーツマンシップと、それとリンクした「モラル」の指導は、保護者の共感も得ているようです。相沢さんは続けてこのようなエピソードを話しました。