考える力

2015年4月21日

子どもは急に考え出さない!一緒に楽しみ成功体験を褒める意味

Jリーグが表彰する最優秀育成クラブの称号を持つ東京ヴェルディ。今季のトップチームの選手たちの顔ぶれを見ると、アカデミー出身の選手たちがたくさんいます。そして、チームを指揮する冨樫剛一監督は元ユース監督。育成路線を全面に押し出す東京ヴェルディですが、クラブに浸透する育成のメソッドはスクール活動にも行き届いています。
 
東京ヴェルディのスクールには、幼稚園生から小学6年生までさまざまな子どもたちが集まっていますが、今回は、東京ヴェルディの松本哲男スクールコーチに「幼少期から考える力を身につける方法」というテーマでお話を伺いました。(取材・文 杜乃伍真 写真 サカイク編集部)
 
 

■「なんで?」ではなく「どんまい」と言える子どもを

「これが考える力に繋がるかどうかはわかりませんが、ぼくから子どもたちへのアプローチの例としてお話をしますと、たとえば、今いるスクール生のなかに小2の男の子でヴェルディのトップチームを詳しく知っている子がいるんです。練習中にぼくが何かを問いかけたときに、その子が誰よりも先にパッと答えを言ってくれます。『じゃあこんなのはどう?』という別角度からの質問をしてみても、必ずその子が率先して答えてくれる。サッカーが大好きだから自分の意見がわき出てくるのだと思いますが、そういう子がいる場合は、その子に主導権を与えてスクールを引っ張っていってもらうんです。その子が答えてくれるおかげで、周りの子どもたちもその答えに対してわあわあと意見を出し合って盛り上がってくれる。何か新たなメニューをやりたいときも、その子にまず見本をやってもらって、それについて周りの子どもにどうだったのか感想を問いかけてみるんです。そういう繰り返しのなかで、子どもたちが考える、というのはあるのかなと思います」
 
――リーダー格の子どもに主導権を与えて一連の流れを作ってもらうのが重要だと。
 
「わたしの場合はそうですね。そうすると結構スクールがまとまるんです。ただ、子どもたちのなかにそういう突出した子どもがいない場合は無理にリーダーを作るようなことはしません。その場合はやはり指導者がリーダーとなって進めていきます。それと、リーダーになる子どもはみんなから認められていないと難しいかもしれません」
 
――みんなが認めている子どもを見極めるのは難しくありませんか?
 
「それははっきりしているんです。そういう子どもは自分から積極的に動くし、試合中ならばマイナスの言葉を発しないんです。『なんだよ!』ではなくて『どんまい!』と声をかけられる子ども。うまくチームをまとめられる人間は文句を言いません。先日ある大会の試合前にも『ヴェルディチーム、気合い入れていこうぜ! 誰か円陣で声を出してくれる人いる?』と僕が問いかけると、その小2の子が『じゃあ俺がやる!』と率先してやってくれたんです。そうなると次からは周りの子どもたちも『今度は俺がやる!』という雰囲気になって積極的に参加してくれるようになりました」
 
――最初に手を挙げるのは恥ずかしいと思う子どもが多い時代ですから、すごいですね。その子のご両親はどんな方々なのでしょうか。
 
「お父さんはヴェルディ好きらしいんです。でも、子どもの試合中は特になにかを言う感じではないですね。ひっそりと見ていらっしゃる。合間には一言、二言は伝えているのでしょうけれど。会話を聞いていると『これできる?』という感じで友だち感覚でサッカーを楽しんでいるんですよ。サッカーが好きだから子どもの試合に来ている。もう一人、幼稚園生なのに、すでにリフティングが千回できる子どもがいるんですが、その子はいつもお父さんと家で一緒に動画を見ながら楽しみながら練習をしている子どもなんです。もともとは、お父さんが子どもをスタジアムに連れていってトップチームの試合を見せたり、イベントに連れていったりしているうちに、子どもが『ヴェルディに入りたい』と言い出したそうなんです。サッカーに浸る環境があって自然とのめり込んでいったようです」
 
 
 
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