考える力

2015年8月10日

「子どもの世界に大人が入ってはいけない」元プロ野球選手・高木豊の父親論

前回記事『「決定権は子どもに持たせる」元プロ野球選手・高木豊の父親論』にて、3人の息子をJリーガーに育てた自身の父親論を教えてくれた元プロ野球選手・高木豊さん。後編となる今回は、「子どもはほっとけ」と豪語する高木さんに、その言葉に詰まった真意をうかがいました。(取材・文・写真 小須田泰二)
 
 

■長男、次男、三男、それぞれの育て方

――後編では、3兄弟の育て方についてお伺いします。3人とも「サッカー」を選び、「プロ」という道を歩んでいますが、長男、次男、三男のアプローチ方法というのはどのように変えていたのでしょうか。
 
長男の育て方、次男の育て方、三男の育て方というマニュアルは存在しません。まずは、比べないこと。人それぞれ能力は違うし、それぞれの性格も違うわけですから。長男の俊幸は頭ごなしに怒っても行動するけど、次男の善朗は頭ごなしに怒ると反発する。理屈が先にこないと動きません。そのふたりを見ている三男の大輔は、勝手に自分で決めていく性格でしたから言葉はいりませんでした。
 
――三者三様ということですか。
 
そうなんです。プレースタイルも違いますから。長男はドリブルが好きだったからドリブラーを目指していた。年齢は1つ違いでも、次男は長男には敵わらないから、兄貴とは違うパサーになろうとした。そして三男は兄弟にすでにドリブラーもパサーもいるから、そうではないパワー系の選手になろうとした。それぞれが違う方向へと進んでいった感じですね。
 
――趣味・嗜好も違うものですか。たとえば好きな選手の好みは?
 
それも見事に違いますね。長男はクリスティアーノ・ロナウド(レアル・マドリー)が好きでしたから、足技を盗もうと一生懸命に真似しようとしていた。次男はジダン(元レアル・マドリー)に憧れていて、どこにスペースがあるのか探すようなプレーをしていました。三男坊はなぜだか分かりませんが、フィリッポ・インザーギ(元ミラン)がお気に入りでしたね。自分自身もゴール前に飛び込むプレーが好きでした。このようにプレースタイルや好きな選手の好みを取っても、それぞれが好きになる選手も違いますから、それぞれに合ったスタンスで接してあげないと、親子としての会話もうまくいきません。
 
 

■長男から、子育てのイロハを教えてもらった

――それぞれ、どんな大人に育ってほしいと願っていましたか?
 
子どもに願ってきたことは同じです。人に迷惑をかけない大人になってほしい、強い大人(男)に育ってほしい。そう思って子育てをしてきました。ただ、最初から我々夫婦がうまく子育てできたわけではありません。長男が誕生したときには、それこそ子育ての”イロハ”のイさえ分かりませんでした。徐々に要領をつかんできて、自分たちも子育てに慣れていきました。ですから、長男には手をかけすぎ、次男は中途半端、三男はまったく手がかからない。そんな図式になっていましたね。
 
――高木家の三兄弟のように、早い段階で自立心を育むには、親としてはどういう心構えでいるべきでしょうか。
 
親が子離れすることでしょう。あとは、小さいときからたくさん会話をしながら、自分のことを自分で決めさせていく。コミュニケーションの取り方も大事だと思います。たとえば、子どもが家に帰ってきたとき、「学校どうだった?」という漠然とした聞き方をしたらダメ。それだと「楽しかった!」とか「別に普通!」とか、ひと言で返されて終わるので、会話が続かない。ですから「今日はお昼に誰となにして遊んだのか?」といったように聞いていましたね。そうしたら子どもたちはたくさん答えないといけなくなる。会話が増えるように質問の工夫をしていました。聞き方もコミュニケーションを取るうえですごく大事だと思います。
 
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