考える力
2015年10月29日
子どもがカバンに荷物を詰めないのは、あなたが荷物を詰めているから!本場ドイツのコーチの願い
今年の夏、「ジュニスターサッカースクール」(代表:安英学/横浜FC/元北朝鮮代表)にて、興味深い取り組みが行われました。それは日本、ドイツ、コリアンの子どもたちが数日間一緒にトレーニングをしてチームを結成し、対外試合を行うというもの。言葉や文化、生活習慣の違う子どもたちが一緒に過ごすことで、貴重な経験の場となったようです。
この企画のメインコーチとして来日したのが、ジモン・ペシュコーチ。ドイツのケルンにある「1.Jugend.Fußball-Schule(1.JFS)」のU-12のコーチとして、ブンデスリーガのアカデミーやオランダ、ベルギーの強豪クラブに勝利。また、ブンデスリーガのクラブに引き抜かれるタレントを多数輩出するなど、育成年代の指導に定評のあるコーチです。現在はフォルトゥナ・デュッセルドルフでU-16のコーチをしています。
ジモンコーチの指導の大きなテーマは「子どもを自立させる」というもの。彼に「自立させるために気をつけていることは?」と尋ねると「親が子どもに与える影響を、注意深く観察すること」という言葉が返ってきました。(取材・文 鈴木智之)
■タバコを吸いながら、ビールを飲みながら試合を見る親は教育上好ましくない
「ジュニア年代の選手を指導する場合、親が子どもに与える影響はかなり大きいものがあります。とくにU-12年代の選手を指導するときは、子どもだけでなく親ともコミュニケーションをとり、ある程度コントロールする必要があると思っています」
ジモンコーチが、選手の親とコミュニケーションをとるために行っていること。それは「試合後のレポート」です。毎試合後、試合前の選手たちはどのような態度で、試合内容はどうだったかなど、かなり細かいレポートを選手のお父さんとお母さんにメールで送っているそうです。
「試合を見に来ている親もいるので、そこでの振る舞いもチェックしています。たとえばタバコを吸いながら、あるいはビールを飲みながら試合を見ている親もいます。それは子どもの教育上、好ましい態度とはいえないので、まずはメールで全員に『このようなことがありました』と報告をし、それでも改善が見られないようであれば、試合後に1対1で話をします」
ビールを飲みながら子どもの試合を見ている親がいるというのは、さすがドイツという感じもしますが、ピッチサイドから大声で自分の子どもに指示を出す親もいるそうです。これは、日本の試合会場で心当たりのある人も多いのではないでしょうか。
■子どもがカバンに荷物を詰めないのは、親が荷物を詰めているから
ジモンコーチは、試合中に親がピッチサイドで指示を出すのを禁止しています。最初のうちは言っても聞かない人もいたそうですが、ドイツの場合、学年が切り替わる段階で選手の入れ替えがあります。親の態度が目に余る場合は、選手の昇格を見送ることもあるそうです。
「私は、選手のお父さんお母さんに対してかなり細かく要求をします。それを面倒だなと、ストレスに感じる人もいるかもしれません。でも、子どもを自立した人間にするために、親が正さなければいけない行動については、しつこく言います」
ジモンコーチが担当していた小学4年生の選手が遠征に行った際、「自分でかばんに荷物を詰められない」と言ってきたことがあったそうです。
「いつも親が荷物を用意してあげているから、子どもができないのです。子どもを自立させるためには、自分のことを自分でやらせることは、非常に大切な第一歩です。荷物の用意だけでなく、食事のあとの片付けもそう。家では親が手を出し過ぎないように、過保護にならないようにと、家での接し方をお願いしています」
ドイツも日本も、成長過程の子どもたちの様子は似たところがあるようですが、ジモンコーチは移民の多いドイツならではの悩みを打ち明けます。
「私がケルンのクラブチームで指導をしていたとき、ある国にルーツを持つ選手が数名いたのですが、彼らの文化は非常に過保護でした。何をするにしても、過剰に親が口を出してくるのです。親が、子どものためにしてあげるのは当たり前という文化で育ってきた人たちの対応は苦労しました」
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