考える力
2016年7月 1日
答えは与えるものじゃない!ACミラン4つの育成哲学とトレーニングとは
本田圭佑選手が所属することで、日本の子どもたちにもおなじみのACミラン。このイタリアの名門クラブは、毎年『ACミランジュニアキャンプ』を開催しています。数あるサッカーキャンプのなかでも人気の高いこのキャンプでは、いったいどのようなトレー二ングが行われているのでしょうか?
今回は、千葉県佐倉市で活動する『ACミランスクール』にお邪魔し、U8のトレーニングを見学させてもらいました。はたして、イタリアの名門・ACミランはどのような考えのもとで、子どもたちを指導しているのでしょうか? テクニカルダイレクターをつとめるルカ・モネーゼさんに話を聞きました。(取材・文 鈴木智之)
■まずはとにかく楽しんでもらうこと
ACミランスクールのグラウンドは、四方が緑に囲まれ自然が溢れています。質の良い人工芝グラウンドは、大人用のサッカーコート一面を十分に確保することができ、親が観覧するスペースもあります。
広いグラウンドでは、幼稚園に通うちびっ子から、顔つきが大人びてきた中学生まで、さまざまな年代の子どもたちが楽しそうにボールを蹴っています。テクニカルダイレクターのルカ・モネーゼさんは、子どもたちを見つめながら優しい口調で言います。
「子どもたちには、とにかくサッカーを楽しんでもらうことを心がけています。子どもたちが持つ、サッカーが好きだ、もっとうまくなりたいという気持ちを大切にすることは、ACミランのフィロソフィー(哲学)でもあります。われわれは、子どもたちが自分で考えて、プレーができるようになってほしいと思っています。ピッチの中だけでなく、グラウンドを離れたところであっても、いま何をすべきかを考えて、自分で判断し実行に移すことができる子どもを育てていきたいと思っています」
[ACミランスクールのトレーニング風景]
■将来の大事な試合で自分の力を発揮すること
ミランスクールの練習を見ていると、コーチと子どもたちが一緒になり、とにかく楽しそうにプレーしている姿が印象的でした。楽しんでプレーする中にも、うまくなるためのヒントをコーチが伝え、選手たちが自分で考え、大切なことに気づくようにアプローチしていきます。
「われわれが目指しているのは、目の前の試合に勝つことではなく、将来の大事な試合で自分の力を発揮することです。そのためには、まずはサッカーを楽しむこと。そして自分の頭で考えてプレーすること。コーチや両親に言われたことに何も考えずに従うのではなく、自分のイマジネーション(発想)を使って取り組んでいくことを意識しています。ドリブルやパスの練習にしても、言われた通りにプレーするだけでなく、どうすればうまくできるか、どうすればピッチ内の問題を解決できるかを考えなければいけない状況をつくることで、相手に勝つためにどうすれば良いのかを考えながらプレーするようになります」
■ACミラン4つの育成哲学
ACミランの育成哲学は、4つのキーワードで表すことができます。それが、運動能力、認知能力、人間性、社会性の向上です。サッカーに関係する運動能力、認知能力だけでなく、サッカー以外の面で必要な人間性や社会性を高めることに重点を置いているのが特徴です。その理由をルカ・モネーゼさんはこう言います。
「自分で考え、自分で決断する、自分の考えを相手に伝える。これらはサッカーに限らず、日常生活でもとても大切なことです。我々はそれを『パーソナリティ』と呼んでいますが、ピッチの中で良いプレーをするためには、ただ技術があるだけでは十分ではありません。チームメイトに、自分はこうしたいんだという意志を伝えることはとても重要です。ミランスクールでは、サッカーを始めたばかりの6歳の子どももいますが、サッカーの技術を身に付けるだけでなく、パーソナリティの向上も含めて、ひとりの人間として成長していくための指導をしています」
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