考える力

2017年3月16日

元Jリーガー監督が語る「どこでも通用するのは"ボールを奪える選手"と"ボールを失わない選手"」

サッカーは、攻撃と守備、攻守の切り替えから成り立つスポーツです。そのため攻撃だけではなく、守備についてもジュニア年代から適切なプレーを身につけておくことが重要です。
 
かつてJリーガーとして清水エスパルスなどでプレーした経験を持つ、田中謙次監督が率いる町クラブ、K.Z.ヴェルメリオ(東京都足立区)では、守備についてどう考えているのか話を聞いてきました。(文:鈴木智之)
 
 

■ポジショニングと身体の向きが重要

K.Z.ヴェルメリオは、近年、東京都の中央大会に進出するなど、力をつけてきているクラブです。トレーニングでは田中監督の的確なコーチングのもと、選手たちが自ら考えて判断し、より良くプレーしようとしている姿が印象的でした。
 
田中監督は守備について「マークとカバーリングを強く意識するようにしています」と話します。取材日のトレーニングでは、横長のグリットにミニゴールを各チームに2つ、計4つを配置する形のミニゲームが行われていました。
 
グリッド内の2方向にゴールがあるので、守備のときは2つのゴールを守り、攻撃のときは2つのゴールのどちらかを目指します。常にゴールの位置を頭に入れながら、素早く攻守に対応できるポジショニング、身体の向きを作ることが重要です。田中監督が説明します。
 
 
「守備のときは、自分がマークするべき相手選手との距離を意識しながら、行けるタイミングでボールを奪いに行きます。それに加えて、ゴールを守ることも重要です。このトレーニングで使うのはミニゴールなので、GKはいません。そのため、守備のときはボール保持者に寄せて行かないと、ゴールを決められてしまいます。守備の基本である『ボールに対して寄せる』ことを目的としやすい設定になっています」
 
ミニゲームの中で、田中監督はゴール付近で守備をしている選手に対して「身体の向きを意識しよう」とアドバイスを送っていました。その理由をこう明かします。
 
「身体の向きによって、観ることの出来る場所が変わってきます。ですので、どこにポジションをとり、どの身体の向きを作るとボールとマークする相手を見やすくなるかというのは、常に意識するように声をかけています」
 
 

■選手が自分で成功体験をつめるようサポートする

さらに田中監督は、選手が自ら判断することの重要性を次のように説明します。
 
「サッカーは状況が常に変わる中で、個々の判断で進めて行くスポーツです。状況に応じて、選手一人ひとりが判断のもとに動き、それによって次の人が動く。これを試合中、繰り返していきます。そのために、練習をすることで、選手の『判断の引き出し』を増やしていくことが大切だと思っています。そして、試合の状況でどう判断するかは選手が決めていきます」
 
指導者がプレーを決めつけるのではなく、どのプレーを選択するかは選手に任せる。そして、成功しないときはアドバイスをする。田中監督はその繰り返しで上手くなっていくと言います。
 
「こちらがプレーを決めつけて、子ども達に『こうしなさい』というのは、私としてはありえないと思っています。私の方が経験値が高いぶん、状況は読みとれているので『こういうプレーもあるよ』とは言えますが、最終的に決断するのは選手達です。なぜなら、選手達たちが自分で成功体験を身につけていくことを目的に、トレーニングをしているからです。自分でチャレンジして、成功するプレーを身につけていく。大切なのはその繰り返しですよね」
 

 

■ボールを奪える、ボールを失わない選手はどこでも通用する

田中監督は自身のプロ経験から「守備でボールを奪えて、攻撃のときにボールを失わない選手は、どんな監督の元であっても試合に出られる」と重要な提言をします。
 
「守備のときに選手に求めるのは、相手からボールを奪うこと。そのためには、ボール保持者との間に適切な距離感が必要です。どうやって寄せて、どのタイミングでボールを奪えばいいか。小学校3、4年生にはカバーリングなどは求めませんが、5、6年生になれば自分がマークする相手だけでなく、抜かれた時にカバーしないとゴールに向かわれてしまうという視点から、グループ戦術を教えていきます」
 
ヴェルメリオの選手たちは、戦術指導に定評のあるスペイン・サッカーサービス社のクリニックをチームで受けるなど、ボール扱い以外の部分の重要性を理解し、様々なトレーニングでレベルアップを目指しています。
 
次回の記事では、ヴェルメリオでプレーする選手達の声をお届けします。
 
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